仮説と検証 その5
【仮説検証の注意点】
仮説検証の3つのプロセス「状況の観察」「仮説の設定」「仮説の検証」は、物事に対する仮説の構築とその検証を行うためだけでなく、思考過程を共有するための基本的な行動手順にもなります。
考え方の流れ、つまりは論理の手順を明確にすることにより、相手方を説得しつつ、深い部分での意見交換が可能となるのです。
ただ、たとえ3つのプロセスをくり返し行ったとしても、そこに必要な要素が含まれていない場合、あるいはどういった点に着目して仮説の構築やその検証を行えばいいのかを理解できていない場合には、仮説検証の精度はなかなか上がりません。
検証の回数だけを増やすばかりで、その内容がより本質に近づいていないこともあるでしょう。
いわゆる、定例的に行われがちな「無駄な会議」ですね。
そこで、仮説検証を行う際に意識したい3つの要素をご紹介します。
実は、事例にあるベテラン社員と若手社員それぞれの意見には、これら3つの要素のうち、お互いに抜け落ちている部分があります。
事例を振り返りながら、また、ご自分の普段の思考過程を改めて思い返してみながら、確認してみてください。
いずれも、仮説検証の3つのプロセスすべてで活用できます。
<注意点1.データを活用しているか?>
ひとつめは「データを活用しているか?」という視点です。
データを活用するとは、「具体的な数字を使う」と言い換えてもいいでしょう。
個人的な経験や仕事に対する哲学をベースに仮説検証を行ってしまえば、その結果が本質に近づく可能性は少なくなります。
世の中のさまざまな事象は、個人的な見解ではなく、より客観的に判断しなくてはならないからですね。
事例にもありましたが、ベテラン社員の「過去、設立年数が若く、業績が不安定な企業との取引において、信頼関係をベースに契約を進めていたところ、相手企業の一方的な契約破棄によって会社に大きな損失をもたらした事例があった」という話。
これは、個人的な経験ではなく、実際にあった出来事なのでデータと言っていいでしょう。
もっとも、たったひとつのデータを根拠に仮説を構築してしまっては、すぐに反証が見つかるかもしれません。
また、失敗事例の内容については、相手企業の設立年数や具体的な契約要項、損失額など、数字を使って表すことでより説得力を増すデータとなることでしょう。
現在の状況に落としこんで検証することも可能となります。
一方で、若手社員の「制作しているアプリには、多数のユーザーがファンとして支持している。創業者のトップは投資銀行出身で資金繰りにも長けている」という話にも、具体的なデータや数字を盛り込むべきですね。
アプリのユーザー数と利益率との関係性や、通常ユーザーとファンの違いおよびその違いが企業にもたらす業績動向、あるいは創業者が自らの力で得た資金の総量と過去の実績などが挙げられるでしょう。
具体的なデータや数字は、言葉の壁を乗り越えて論理的な意見を構築するだけの力があります。
今後のさらなるグローバル社会の進展を考えれば、仮説検証を行う際に考慮するべき筆頭項目と言えるでしょう。
とくに、他人の意見をそのまま鵜呑みにするのではなく、提供されている「1次情報」にあたるクセを身につけることが大切です。
よくよく調べてみると、過去の失敗は自社に責任があったのかもしれません。
相手企業の設立年数や業績は、あとから考えた「自社に都合のいい」失敗理由であり、問題の根幹は契約内容に対する柔軟な対応ができない老舗企業側にあるという可能性は否めませんね。
それは、元のデータや数字にあたることによって明らかになるでしょう。
「状況の観察」「仮説の設定」「仮説の検証」のすべてにおいて、データや数字を意識したいですね。
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