因果関係の把握 その3
【「因果関係の条件」と調べ方】
「原因と結果の関係にある事象」が因果関係の基本ということはお分かりいただけたかと思いますが、実際に因果関係を見つけるには「因果関係の条件」と「因果関係の調べ方」に着目しなければなりません。
<因果関係の条件>
2つの事象が因果関係にあるかどうかは、次の3つの視点からチェックすると良いでしょう。
・原因のあとに結果があるか(時間の流れ)
・原因と結果に連動性があるか(相関関係)
・原因と結果、それぞれに影響を与えている「真の原因」はないか(第3因子の存在)
「時間の流れ」に着目する理由は、因果関係をただの“こじつけ”にしていないかを確かめるためです。
もし結果が先にあって、後からもっともらしい理由を加えているだけだとしたら、それは正しい因果関係ではありません。
たとえば、あるスーパーで「もうすぐ秋になる→ビールが良く売れる」という2つの事象があった場合に、これは正しい因果関係と言えそうでしょうか。
売上が増えた理由は「もうすぐ秋になる」という未来の事象が原因ではなく、「今が夏だから」ですね。
時間の流れを無視して、因果関係をこじつけてしまわないようにしましょう。
2点目の「相関関係」については、それぞれの事象が「原因が変われば結果も変わる」という関係性にあるかどうか、つまり両者に「連動性」があるかどうかということですね。
連動性がなければ因果関係があるとは言えません。
「コンビニエンスストアの近隣にある飲食店→売上が多い」という関係性は、因果関係と言えそうでしょうか。
たしかにコンビニは人を集める効果があるかもしれませんが、そもそもその場所がオフィス街であるなど、集客のポテンシャルが高い立地なのかもしれません。
そう考えると、たとえコンビニエンスストアがなくなっても、引き続きその飲食店は売上が好調であることに変わりはない、ということになります。
連動性がない2つの事象は因果関係ではありませんので注意してください。
そして、とくに注意が必要なのは、3番目の「真の原因」です。
たとえば「図書館が入っているビル(原因)→そのビルの本屋は売上が多い」という因果関係を考えてみましょう。
一見、正しい因果関係のように思えますが、もしかしたら「通勤・通学路の途中にあるビル→そのビルの本屋は売上が多い」が、真の原因かもしれません。
そうなると、「通勤・通学路の途中にあるビル→利用者が多そうだから図書館が設置された」という、当初は原因と思われていた事象も、「真の原因」のもとでは「結果」となってしまうのです。
つまり当初の因果関係は正しくないことになります。
これら3つの原因を冷静に分析して、正しい因果関係を見いだすようにしましょう。
<因果関係の調べ方>
因果関係を調べるには、上記の「因果関係の条件」に着目しながら、2つの事象の関係性について調べていくと良いでしょう。
そこで大切なのが、例題解説の箇所でもふれた「仮説ベースの類推思考」です。
とくにビジネスの現場では、100%正しい因果関係というのはほとんどありません。
ほとんどないというのは、明らかな因果関係(例:指を切る→血が出る)を除いてという意味です。
だからこそ、あらかじめ仮説を立てて原因と結果を類推しなければならないのです。
目まぐるしく変化する社会情勢に対して、因果関係が絶対に正しいと認められるまで意思決定できないのは、ビジネスチャンスの損失につながります。
もしそれが、社運をかけた事業の意思決定であれば、事態は急を要することは言うまでもありません。
可能な限り掘り下げた後には、ある段階で踏ん切りをつけなければなりません。
そのことを肝に銘じておきましょう。
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