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クリティカル・シンキングとは その2

【クリティカルシンキングの意義】
 先述の具体例から分かるのは次のような「人間の性質」です。

 

・自分の能力を過信しやすい
・他人の意見よりも自分の判断を優先しがち
・相手の要求を100%理解することができない
・状況に対する判断に漏れ、抜けがある

 

これは指示を受ける側だけでなく、指示する側にも言えることです。

 

 A部長はB君の能力を高く評価していましたので、実力を試すという意味もこめて今回の指示を与えたのですが、それが結果としてB君自身に課題を認識させる結果となりました。

 

自身の能力に頼った企画書を作成したB君に対し、A部長は「なぜB君はこのような企画書を作成したのか?」と考えました。A部長にはクリティカルシンキングができていたのです。

 

A部長はB君の頭の中をこう判断しました。目的は企画書を通すこと、前提は自分にはリサーチ能力がありそれを企画書作成に生かすこと、また批判的な思考はせず自身の能力を発揮すれば企画書は通ると考えていること。

 

そうした背景を読み取ることで、瞬時にやり直しを指示できたのです。

クリティカルシンキングの目的、前提、批判的思考

ここからクリティカルシンキングの意義が見いだせます。

 

思考のための明確な指標が得られる
状況に対する見落としを減らせる
相手の思考、行動の理由を理解できる
瞬時に正しい意思決定をすることができる
説得力が増し、相手の理解が深まる

 

B君はA部長からやり直しの理由を説明され、自分の未熟さを痛感するとともに、クリティカルシンキングの素晴らしさに感心しました。そして、次回提出する企画書に生かそうと決意したのです。

 

 A部長が指示した課題はB君にとって、そして会社にとって大きな恩恵をもたらしました。

 

 

【クリティカルシンキングを行うには】
 このように多くの有用性があるクリティカルシンキングですが、実際に行う場合には次の5つのポイントを押さえておきましょう。

 

<1.目的を意識する>
 クリティカルシンキングには目的への意識が欠かせません。

 

事例ではA部長が「会社のため」という目的を据えていたのに対し、B君の目的は「企画書を通すこと」という限定的なものだったために、課題が浮き彫りになったのです。

 

B君の失敗は目的を正しく理解していなかったことだけでなく、目的に対する追及が足りなかったのですね。

 

 

<2.前提を考える>
 前提とは、置かれている状況や取り巻く環境に加えて、自分や相手の思考にかたよりがあるということです。

 

A部長とB君の状況(管理・被管理、経験、背景など)は異なりますし、環境(権限、利用できるツールなど)もまた然りです。

 

ただそれだけではなく、思考のかたよりを考慮していなければ、バイアスのかかった歪んだ答えしか出せなくなってしまいます。

 

 

<3.論理展開は正しく>
 正しい論理展開とはつまり理屈が通っているかどうかということです。

 

有名な例に「ソクラテスは人間である」「人間はいつか必ず死ぬ」「ソクラテスはいつか必ず死ぬ」という三段論法があります。

 

クリティカルシンキングに関わらず、相手を説得するために必要なスキルとなりますので、別の項でしっかりと学んでいきましょう。

 

 

<4.因果関係を把握する>
 因果関係を把握するとは、物事を正しく理解するということです。

 

たしかにB君が企画書で示した「人海戦術」は他社の成功事例ではあります。ただ、他社が成功した方法が必ずしも自社にとって有効な施策とは限らないのです。
T商事の営業先がたまたま新規の取引先を募集していただけかもしれませんし、T商事には優秀な営業マンがそろっていただけかもしれません。

 

このように成功した事例を深く分析せずにマネしてしまうことは、物事を間違って理解することになり兼ねないのです。

 

 

<5.問い続ける>
 「なぜ?」「本当に?」「だから何なの?」のように、様々な角度から物事に疑問を持ち問い続けることがクリティカルシンキングの要です。

 

B君はA部長の指示に対して表面的にしか考えず、深く問い続けませんでした。その結果、失敗してしまったのです。

 

しつこく問い続けることが問題点、本質、斬新な発想、機会など重要な指標の発見につながることを肝に銘じておきましょう。

クリティカルシンキングの5つのポイント

【まとめ】
・クリティカルシンキングとは、最善解を生みだすための思考法である

 

・クリティカルシンキングによってミスが減り、説得力が増す

 

・ビジネスシーンにはクリティカルシンキングが不可欠

 

・クリティカルシンキングを行う際には「目的」「前提」「論理展開」「因果関係」「問い続けること」を意識する

 

 

前のページ 「クリティカル・シンキングとは その1」

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