因果関係の7つの錯覚パターン その7
【錯覚を引き起こす7つの要素】
ここまで、因果関係の錯覚について事例の中でご紹介してきました。
どの意見についても、因果関係を正しく理解できていないために、最終的に問題解決につながる有効な対策にはならないと判断されましたね。
ただ、そこに至る思考過程はそれぞれ異なります。
「錯覚を引き起こす7つの要素」について、改めて詳しく探っていきましょう。
<1.直感で判断してしまう>
どんなときにでも、周囲の状況を冷静に把握し、必要なデータを集め、詳細な分析が行えれば、因果関係の錯覚に陥ってしまうことはありません。
そのためには、一般常識をあくまでひとつの意見としてとらえられる客観的思考が必要となります。
ただし、そうした高度な思考方法をすべての人に求めるのは無謀というものでしょう。
むしろ、ほとんどの人は自らの経験や体験に基づいた偏見をベースにして物事を考えており、他人の意見はあくまでも参考程度にしかとらえていないでしょう。
本質的に正しいかどうかよりも、自分の考えと合っているかどうかを考えたほうが、精神衛生上も、気分的にも良いためですね。
つまり、論理的思考は、決して一般的ではないのです。
そう考えると、因果関係を正しく把握して物事を判断しようと意識しなければ、自ずと偏った思考をしてしまうのが普通ですね。
そのときに、もっとも腑に落ちる判断材料が「直感」となります。
考えることは習慣によって身につくことであり、頭を使わなければならないので、自然と行えるわけではないのですね。
それは、ビジネスの現場でも同じです。
時間の制約、情報収集の限界、空気感としての一般認識など、因果関係を正しく把握するための障害はたくさんあります。
それらを乗り越えて、錯覚を回避するのは容易ではないのです。
そのために、結局は直感という乏しい根拠に頼った結論を導き出してしまうのです。
<2.第3因子に気づかない>
2つの事象の間にある相関関係を、あたかも因果関係と勘違いしてしまえば、正しく因果関係を把握することはできません。
たとえ当初から因果関係を正しく把握しようと努めていても、見落としてしまった第3因子の影響によって、因果関係の錯覚が生じてしまいます。
だからこそ、冷静で緻密な判断力が必要なのです。
第3因子の影響によって、因果関係を錯覚してしまう事例は、枚挙にいとまがありません。
たとえば、ビジネススキルを向上させるための方法論について。
「早起きの人は成功する」「英語力は活躍するビジネスマンの必須スキルだ」「通勤時などの移動時間を活用することが大事」などは、あくまでもビジネススキルを向上させるための第3因子でしかないでしょう。
なぜなら、ビジネススキルを向上させるための目的にフォーカスしていないためです。
つまり、「ビジネススキルを向上させるのは、◯◯という目的があるからだ」というものが明確でなければ、最終的な結果の因果関係を正しく把握することはできないのです。
漠然とした努力は、漠然とした結果しか生み出さないのですね。
早起きして何をしたいのか、英語を身につけて何ができるのか。
はたまた、通勤時などの移動時間で何をするのか。
そういった行動に対する明確な意味付けが行われなければ、第3因子にばかりとらわれてしまい、因果関係ではなく相関関係の理解にとどまってしまうでしょう。
大切なのは、「本当にそうだろうか?」と疑問を持つことです。
安易な解決策を求めずに、原因と結果それぞれの要素をしっかりと見極める。
その裏にある目的や意味合いにフォーカスして、本来の因果関係を理解するように努める。
そうすることによって初めて、第3因子に気づくことができます。
その先には、因果関係を正しく把握するために必要な「洞察力」への道筋があるのです。
関連ページ
- ピラミッドストラクチャー その2
- 論理の構造化の重要ポイント その1
- 論理の構造化の重要ポイント その2
- 因果関係の把握 その1
- 因果関係の把握 その2
- 因果関係の把握 その3
- 因果関係の把握 その4
- 因果関係の把握 その5
- 好循環と悪循環(「にわとり−たまご」の因果関係) その1
- 好循環と悪循環(「にわとり−たまご」の因果関係) その2
- 好循環と悪循環(「にわとり−たまご」の因果関係) その3
- ゼロベース思考 その1
- ゼロベース思考 その2
- 仮説・検証の3つの効果 その1
- 仮説・検証の3つの効果 その2
- 仮説・検証の3つの効果 その3
- 仮説・検証の3つの効果 その4
- 仮説・検証の3つの効果 その5
- 良い仮説の3要素 その1
- 良い仮説の3要素 その2
- 良い仮説の3要素 その3
- 良い仮説の3要素 その4
- 良い仮説をつくるための3つの資質 その1
- 良い仮説をつくるための3つの資質 その2
- 良い仮説をつくるための3つの資質 その3
- 良い仮説をつくるための3つの資質 その4
- 良い仮説をつくるための3つの資質 その5
- 因果関係を考える3ステップ その1
- 因果関係を考える3ステップ その2
- 因果関係を考える3ステップ その3
- 因果関係を考える3ステップ その4
- 仮説・検証の具体的な4ステップ その1
- 仮説・検証の具体的な4ステップ その2
- 仮説・検証の具体的な4ステップ その3
- 仮説・検証の具体的な4ステップ その4
- 分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その1
- 分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その2
- 分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その3
- 分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その4
- 分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その5
- 検証の際の5つの注意点 その1
- 検証の際の5つの注意点 その2
- 検証の際の5つの注意点 その3
- 検証の際の5つの注意点 その4
- クリティカル・シンキングとは その1
- クリティカル・シンキングとは その2
- クリティカル・シンキングとは その1
- クリティカル・シンキングとは その2
- 現状把握の基本2(切り口と切り方) その1
- 現状把握の基本2(切り口と切り方) その2
- 現状把握の基本2(切り口と切り方) その3
- 複合的な論理展開 その1
- 複合的な論理展開 その2
- 演繹法 その1
- 演繹法 その2
- フレームワーク思考 その1
- フレームワーク思考 その2
- フレームワーク思考 その3(3C分析、SWOT分析)
- フレームワーク思考 その4(5フォース分析、ポーターの3つの基本戦略)
- フレームワーク思考 その5(7つのS、短期・中期・長期)
- フレームワーク思考 その6(4P、バランススコアカード)
- フレームワーク思考 その7(バリューチェーン:付加価値の連鎖)
- フレームワーク思考 その8(PPM、過去・現在・未来、仮説思考)
- フレームワーク思考 その9(その他のフレームワーク)
- 仮説と検証 その1
- 仮説と検証 その2
- 仮説と検証 その3
- 仮説と検証 その4
- 仮説と検証 その5
- 仮説と検証 その6
- 因果関係の7つの錯覚パターン その1
- 因果関係の7つの錯覚パターン その10
- 因果関係の7つの錯覚パターン その2
- 因果関係の7つの錯覚パターン その3
- 因果関係の7つの錯覚パターン その4
- 因果関係の7つの錯覚パターン その5
- 因果関係の7つの錯覚パターン その6
- 因果関係の7つの錯覚パターン その7
- 因果関係の7つの錯覚パターン その8
- 因果関係の7つの錯覚パターン その9
- 帰納法 その1
- 帰納法 その2
- イシューと枠組み その1
- イシューと枠組み その2
- イシューと枠組み その1
- イシューと枠組み その2
- 論理展開のパターン その1
- 論理展開のパターン その2
- 論理展開のパターン その3
- 大きな論理の構造 その1
- 大きな論理の構造 その2
- 論理展開のパターン その1
- 論理展開のパターン その2
- 論理展開のパターン その3
- 論理展開の6つの注意点 その1
- 論理展開の6つの注意点 その2
- 論理展開の6つの注意点 その3
- 論理展開の6つの注意点 その4
- ロジックツリー その1
- ロジックツリー その2
- ロジックツリー その3
- 現状把握の基本1(MECE) その1
- 現状把握の基本1(MECE) その2
- 大きな論理の構造 その1
- 大きな論理の構造 その2
- ピラミッドストラクチャー その1