論理の構造化の重要ポイント その2
【例題】
それでは、先述の2点のポイントについて例題を通じて理解を深めていきましょう。
<例>
今年の春、ある企業に新入社員が20名ほど入社してきました。
彼らを束ねる役目を担うのは、入社前の内定者時代から率先してサポートしてきた人事部のB課長です。
夏頃にもなると、徐々に新入社員たちに変化が起こりました。
下を向きがちになったり、顔色がすぐれないなど、マイナスの兆候です。
入社当時の元気はどこへやら、彼らはみるみるうちに覇気がなくなっていきました。
事態を重くみたB課長は早急に対策を講じることに。
新入社員のなかでもまだ元気のある営業部のAさんを呼び出し、この状況を打開するべく、案を練ることにしたのです。
B課長が考案した作戦は次のとおりです。
・新入社員の元気が無いのは、それぞれが各部署に散ってしまったため
・そこで、それぞれに元気を取り戻させるために「決起集会」を行う
・時期は各自予定があると考えられるお盆を避け、お盆明けの休前日を目安に
・決起集会の内容は、新入社員との距離が近いAさんに一任する
・参加者は新入社員全員と人事部のB課長、及び若手先輩社員数名
ミーティング後、Aさんの快諾を得たB課長は、決起集会のプランができあがるのを楽しみに待っていました。
ただ、Aさんに一任したものの、対案として独自にその内容を考えることも忘れてはいません。
数日後、2回目のミーティングに意気揚々とやってきたAさん。
その手には決起集会のプランが記された資料がありました。
内容を確認するB課長。
詳細は次のようなものでした。
【第一回◯期新入社員決起集会】
[内容]
都内の小さなディスコを貸しきり、みんなで食事・歌・踊りを堪能する。
[費用]
各自12,000円。(前日までに徴収)
[時間・場所]
8月29日(金)
都内のディスコ「クラブ◯◯」にて
[開催趣旨]
新入社員全員に、入社時の元気を取り戻してもらうこと。
[主催]
A(考案&サポート:B課長)
B課長はAさんのプランを見たとき、しばらく開いた口がふさがりませんでしたが、気を取り直して問題点を洗い出していきました。
<解説>
Aさんが考案した決起集会のプランには、次のような問題があります。
・内容がAさんの趣味嗜好にかたよりすぎている
・食事はともかく、歌や踊りに夢中になると会話ができない
・先輩社員への配慮に欠けている
・決起集会と遊びの境界があいまいになっている
・高価格が参加のハードルになる(全員が参加しなければ意味が無い)
では、なぜこのようなミスが発生してしまったのでしょうか?
ここで考えるべきなのが「言葉の定義」と「作りなおし」です。
【注意点の確認】
AさんとB課長が行った最初のミーティング。
その時に使用したピラミッドストラクチャーを確認してみましょう。
内容自体に問題は無く、論理的な分析がなされているようです。
ただし、大きな論理の構造を構築する際の「考慮すべき重要なポイント」2点には抜けがあります。
具体的には次のとおりです。
<注意点1.言葉の定義をしっかりと>
「決起集会」という言葉の定義がなされていなかったために、AさんとB課長との間で理解に齟齬がありました。
・Aさんにとっての「決起集会」:憂さ晴らし
・B課長にとっての「決起集会」:業務の延長にある会合
ミーティングの段階で言葉の定義を明確にしておけば、問題を防ぐことができたかもしれません。
<注意点2.繰り返しの確認と作りなおし>
また、Aさんが作成したプランは、一応の体裁は整っていますが
・先輩社員に対する配慮
・全員参加のための価格設定
に関しては考慮されていません。
これらは繰り返し作りなおすことで、あるいは確認することで適時訂正できたはずです。
このように、議論の段階では論理的な思考ができていても、その先の過程においてミスが生じる可能性があることを十分に把握しておきましょう。
【まとめ】
・論理的な考えは共有できなければ意味がない
・大きな論理の構造をつくる際に考慮すべきポイントは2点
?明確な言葉を使うこと(言葉の定義)
?繰り返し作りなおすこと(改善)
・論理的な議論の先にあるミスに注意すること
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