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因果関係の7つの錯覚パターン その6

関東エリア統括マネージャーの意見としては、この制度を今一度見直し、さらに充実させてみてはどうかというものでした。

 

会社の成長を支えた制度に着目するという点においては、鋭い指摘だと評価できるでしょう。

 

ただ、問題なのは、個別的なインセンティブと全社的な営業利益の相関関係にあります。

 

各エリアの統括マネージャーにとっては、表彰制度の内容がより充実すれば、営業努力がそのまま報酬として跳ね返ることになります。

 

だからこそ、普段の仕事にも身が入るというものですし、各店舗への戦略的なアプローチも加速するということです。

 

しかし、それが本当に営業利益の回復につながるのでしょうか。

 

そもそも、すでに表彰制度は機能しています。

 

その恩恵は、各店舗、エリア統括マネージャー、もっと言うなら全社的に得られていると考えるのが普通です。

 

現状抱えている問題は、そうした制度がありながら営業利益が低迷していること。

 

報酬という名のカンフル剤は、その内容をさらに充実させたからといって、効果が高まるとは限らないのです。

 

あくまでも表彰制度は、会社の売り上げを底上げするという目的のための「手段」でしかありません。

 

関東エリア統括マネージャーは、その点を見誤っていたのですね。

 

もしかしたら、売り上げの良い個別店舗を重点的に支援することによって、表彰を得ようと目論んでいたのかもしれません。

 

その真意は定かではありませんが、結果的に会社の利益が回復しないのであれば、報奨制度のさらなる充実は行うべき施策とは言えないでしょう。

 

大切なのは、手段と目的とを区別し、はき違えないように注意すること。

 

手段ばかりに意識が向いてしまえば、当初の目的を見失うことにもなりかねません。

 

 

・新製品の買い取りを強化する目的で、「高価買取り」をキャッチコピーに掲げ、資金を投入すると良いかと思います。
(本社統括マネージャー)
→問題点:副作用の発生

 

中古ゲームソフトの転売によって利益をあげているA社にとって、ゲームソフトの買い取り本数を増やすことは重要です。

 

たとえ一つひとつの利益が少なくても、全国展開の強みを活かして薄利多売をくり返すことにより、安定的な収益を生み出すことが可能だからですね。

 

実際に、これまでの戦略はその流れに沿ったものでした。

 

しかし、ここ数年はゲームソフトの買い取り本数が激減しています。

 

理由はさまざまなものが考えられますが、おおむね「ゲームソフトの内容に関する理由」と「それ以外の要因」に分けられます。

 

具体的には次のとおりです。

 

<ゲームソフトの内容に関する理由>
・くり返し遊べる
・クリアに時間がかかる
・インターネットを介して遊べる
・価格を下げた商品の再販
→売りにくいゲームソフト

 

<それ以外の理由>
・インターネットでのダウンロード販売
・ひとつのソフトで複数人が遊べるシステム
・アプリ形式での配信
・ゲームに代わる娯楽の台頭
→ゲームソフトを売るという発想の消滅

 

本社統括マネージャーが言うように、「高価買取り」をキャッチコピーとしてかかげることで、買い取り本数は増えるかもしれません。

 

少なくとも、現状よりは改善が見られることでしょう。

 

しかし、上記に挙げた通り、購入後のゲームソフトを売るという行為そのものがしにくくなっている状況を無視するわけにはいきません。

 

そういった状況にも関わらず、闇雲に買い取りを強化してしまうことは、長期的に大きなリスクをともないます。

 

そういった想定外のリスクが、ここで言う「副作用の発生」です。

 

たとえば、過去の人気ソフトが大量に売れ残ってしまったり、買取価格を下げにくくなってしまうことなど、長期的な戦略にも影響を及ぼすのです。

 

その点を考慮せずに、従来のやり方をただ踏襲してしまうと、思わぬ副作用に苦しむことになるでしょう。

 

リスクに対する読みが浅いままに意見をすると、このように副作用にまどわされ、因果関係を錯覚してしまいます。

 

 

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