複合的な論理展開 その1
【論理展開のかたち】
説得力のある説明ができる人とそうでない人との差は、話の内容が論理的かどうかで決まります。
それが井戸端会議や立ち話程度のものなら気にならないかもしれませんが、ことビジネスシーンでは死活問題になりかねません。
もしあなたの上司が、要領を得ないままダラダラと話続ける人だったらどうでしょうか?
あなたが仕事をする時間は無慈悲にも削られていくばかりでしょう。
活躍するチャンスがなくなってしまう可能性もあります。
もしあなたの部下が、非論理的な思考しかできない人だったらどうでしょうか?
仕事を任せても、その成果を共有することは難しいでしょう。
自分の上司としての手腕にも自信がなくなってしまうかもしれません。
評価もきっと下がるでしょう。
その他にも、同僚や取引先の人々など、ビジネスシーンで付き合いのあるすべての人が論理的でなかったとしたら……。
きっと、仕事がはかどるどころか、世の中がうまく機能しないでしょう。
それほどに論理的思考は大切なのです。
ただし、もしあなたが論理的な思考を身につけていれば、上司を諭し、部下に指導し、あるいはすべてのビジネスシーンを要領よくリードできるかもしれません。
年功序列がその影響力を薄めている昨今だからこそ、論理的思考は、これから活躍するビジネスパーソンにとって必須のスキルであると言えるでしょう。
そんな論理的思考の基本が「演繹法」と「帰納法」です。
両者についてここで簡単におさらいしておきましょう。
・演繹法:ある事象と一般論を照らしあわせて結論を導く方法
・帰納法:複数の事象の共通点に着目し、一般論となる結論を導き出す方法
それぞれの思考のベクトルが逆になっている点に着目して下さい。
・演繹法:「一般論」→「事象A」→「結論」
・帰納法:「事象A」「事象B」「事象C」→「結論(一般論)」
演繹法の場合は、既存の一般論をもとにして、観察した事象の意味を結論として導き出しています。
反対に帰納法の場合は、観察した複数の事象から共通点をみつけることで、結論となる一般論を導き出します。
【例題】
この両者の性質を複合的に利用することで、より正確な論理的思考をすることが可能になります。
例題を通して詳しく見ていきましょう。
<例>
建設会社Y社のA課長は、仕事ができることで評判のビジネスウーマンです。
今年で入社4年目。
その評判は社内だけにとどまらず、関連企業や取引先など社外にも広がっています。
新卒で入社した当時は営業部に配属されましたが、その論理的な思考力に注目が集まり、出世コース筆頭の戦略事業部に転属。
たったの2年で課長に昇進しました。
社内では異例の出世です。
そんなA課長も出席する、とある企画会議でのこと。
議題はいかにも議論が煮詰まりそうな「競合Z社との業務提携について」でした。
出席者はA課長とその他数名の管理職をのぞいては、社長と役員だけです。
おおよその予想通り、会議は大した意見の応酬もなく、早々に重苦しい空気に包まれてしまいました。
どうやら、ここのところの業績低迷も一因となっているようです。
かと思えば、どこかの部長が自分の部署の功績を語りだす始末。
挙句の果てには、業務提携の打診などという事態に陥った責任はどの部署にあるのかなど、不毛な討論がはじまってしまいました。
見かねたA課長はおもむろに立ち上がると、開口一番次のように発言しました。
「部署間のコミュニケーション不和についての議論も大切ですが、今は社内のコンセンサスを得ることが先決です。私の意見としましては、Z社との業務提携に賛成します。その理由は?Z社が友好的な提携を行っていること?先に業務提携した建設機器販売会社X社が業績を伸ばしていること?Z社の代表取締役社長が建設業界にあかるいこと。以上の理由から、業務提携によって当社の業績回復が見込めます。」
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