演繹法 その2
【帰納法との違い】
実は、先述のAさんが無意識に行っていた思考法は演繹法と対をなす「帰納法」でした。
帰納法とは「いくつかの事象から共通点を見つけ、結論(一般論)を導く」という思考法です。
演繹法の理解を促すために、ここで両者の違いを確認しておきましょう。
<Aさんの思考>
「先月はBくんに僅差で負けた(事象1)」「先々月もBくんに僅差で負けた(事象2)」「Bくんは紹介による契約が多い(事象3)」→「Bくんには協力者がいる(結論)」
この場合ですと3つの事象から推測して結論を導いています。
しかし、実際にAさんが導いた結論は、半分正しく半分間違っていました。
実際にはもう少し多くの事象から推論しないと正しい結論にはたどり着かないことが多いです。
思考の流れを見てみると、演繹法とは思考の流れが逆になっていますね。
これが帰納法です。
【必要条件と十分条件】
演繹法的思考を理解する際には、いわゆる「必要条件」と「十分条件」に着目すると理解が深まります。
たとえば、次のような簡単な三段論法でみていきましょう。
・野菜とは食用の草本植物を指す(一般論):必要条件
・スイカは食用の草本植物である(事象):十分条件
→スイカは野菜である(結論)
このように、包含関係に着目して必要条件と十分条件に区分できるものは演繹法的思考法に分類されます。
迷った時には図に書いてみると良いでしょう。
【演繹法の注意点】
このように、私たちの思考の論理性を担保してくれる演繹法ですが、使い慣れているだけに思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。
間違った結論に至らないように次の点に注意しておきましょう。
<注意点1.一般論に対する誤解>
一般論はルール、あるいは常識と言い換えても良いのですが、その一般論がそもそも間違ったものであれば、導き出される結論も間違ったものになってしまいます。
たとえば、「営業力のある会社は儲かる」という一般論に対し、無闇に営業にばかり資金を投下すればどうなるでしょうか?
売ることばかりに特化して、商品力やアフターサービスが弱くなってしまい、結果として会社の売上はあがりません。
また、いくら営業力を強化しても、利益率の悪いサービスばかり展開していては会社は儲からないでしょう。
一般論をとりまく背景や事情を考慮して、誤解をなくすことが大切です。
<注意点2.事象の間違い>
一般論と同様に、収集した事象、つまり観察事項が間違っていれば結論が正しくなることはありません。
一般論と事象の双方が正しくなければ、結論は正しくならないのです。
たとえば、「液晶画面を凝視しすぎたら目が悪くなる」という一般論に対し、「うちの息子は毎日1時間しかテレビを見ていない」という事象を取り出したとします。
結論は「息子の目は悪くならないだろう」ですね。
しかし、テレビを見ていなくても、四六時中パソコン画面を眺めていればどうでしょうか?
当然、目が悪くなる可能性は高まります。
取り出すべき事象は、テレビ画面だけでなく、パソコンの画面も含めた総時間が正しいという事例でした。
【まとめ】
・演繹法とは「ある事象と一般論を結びつけて、そこから結論を導き出す思考法」
・演繹法はもっとも身近な論理的思考である
・帰納法は演繹法とは逆の思考法をするもの
・一般論や事象が誤っていると、導き出された結論も誤ったものになってしまう
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