検証の際の5つの注意点 その1
【仮説構築から検証へのアプローチ】
仮説・検証思考の基本は、仮説と検証をくり返し行うことにあります。
とくにビジネスシーンで実践する場合には、時間を含めた使用可能な資源の有効活用がポイントとなりますが、そのためには、仮説と検証のサイクルをスムーズに進めることが大切です。
そうすることで、無駄な資源の流出を防ぐことができ、貴重な時間を浪費することもなくなります。
もっとも、仮説思考そのものに高いレベルを求めるのであれば、初期仮説についても、安易に決めることはできません。
仮説と検証のサイクルをくり返すなかで、最終的な結論がより本質に迫ると考えれば、それは当然でしょう。
反面、資源の有効活用の観点からは、つねにスピード感をもって仮説検証のサイクルを回さなければならないため、大いに悩むところです。
結局は、「いかに早く仮説検証のサイクルを回しはじめるか」と「いかにより上質な初期仮説を構築するか」の2点を、天秤にかけることになります。
重要な選択が多いビジネスパーソンにとって、取り組む課題のレベルやその重要性を勘案しながら、より早く上質な仮説思考ができる人間こそ、意思決定の際に活躍できることでしょう。
会社の将来を左右するという意味においても、貴重な人材です。
これまでの記事で、仮説思考をいかに高めるかについてはすでに言及しました。
方法論の段階から簡単に復習すると、次のとおりになります。
【仮説・思考の4ステップ】
<ステップ1> 問題をあぶり出す
<ステップ2> 問題への対処法として仮説を構築する
<ステップ3> 仮説を検証するためのデータ収集
<ステップ4> 仮説の精度を上げる工夫
【良い仮説の3要素】
<良い仮説の要素1> 斬新な発想・オリジナリティ
<良い仮説の要素2> 問題の根幹からずれていない
<良い仮説の要素3> より具体的で実践可能である
【より良い仮説を構築するための3つの資質】
<資質1> ビジネスに関する豊富な知見
<資質2> 違いを見い出す優れたセンス
<資質3> 上質な仮説への飽くなき探究心
良い仮説とは何かを知り、より良い仮説を構築するために必要な資質を身につけ、仮説思考の基本ステップを行う。
日々の業務の中で、その過程をくり返すことができれば(あるいは全社的に共有することができれば)、個人としても組織単位としても成長することができます。
とくに、問題へのアプローチ、情報収集の手法、最終的な意思決定の質、相手への説得力などの伸びが期待できるでしょう。
それは大きな武器となりますね。
【検証の際の5つの注意点】
では、仮説・検証についての最後の学びとして、仮説構築後の検証について考えてみましょう。
検証は、仮説をより課題の本質に近づけるための重要な作業となります。
ただくり返すことだけに注力するのではなく、仮説構築同様、可能な限り精度をあげていくことが大切でしょう。
検証の回数が少なくて済めば、それだけ効率もあがります。
仮説構築と同じくよりハイレベルを目指しましょう。
検証の際の注意点は以下の5つです。
<検証の際の5つの注意点>
1.検証の材料を集めすぎてしまう
2.スピード感を無視した完璧主義
3.収集したデータのかたより
4.検証者の思い込みやバイアス
5.初期仮説に対する固執・盲信
それぞれの項目について簡単に説明すると、「検証の材料を集めすぎてしまう」「スピード感を無視した完璧主義」の2点については、判断する側の人間に“失敗したくない”という保守的な発想があると考えられます。
たしかに、重要な意思決定であればあるほど判断ミスは避けたいところですが、完璧主義に陥って判断に時間をかけすぎてしまうのは、ビジネスにおいてマイナスです。
締め切りを設定するなどの対策をしつつ、最終的には思い切る勇気も必要でしょう。
「収集したデータのかたより」「検証者の思い込みやバイアス」は、検証時に集めたデータの取り扱いに関する事項です。
いくら多くのデータを収集しても、そこにかたよりが生じてしまっていては、適切な検証ができません。
同様に、検証者に思い込みがあったり、思考のバイアスがかかっている状態では、客観的な視点が欠けていることもあり、意思決定の方向性がゆがんでしまいます。
場合によっては、結論ありきの検証という、ただの“惰性的な作業”になってしまう可能性もあるでしょう。
最後の「初期仮説に対する固執・盲信」は、仮説に時間や労力をかけすぎた場合や、初期仮説への思い入れが強いことで生じます。
そもそも仮説・検証は、それぞれのサイクルを回しつつ、最終的により良い結論へと昇華させるための作業です。
初期仮説は最初の案でしかなく、どれだけ優れたものでも検証によって見直さなければ価値はありません。
仮説思考とは、検証のサイクルと一体であることを忘れないようにしましょう。
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