フレームワーク思考 その6(4P、バランススコアカード)
4.実践の指針策定
目標を設定したら、次は実際の業務に反映させていきます。
通常、社内の人員はそれぞれに役割が振り分けられていますが、実践の指針を策定しておくことで、意思決定やその判断までの思考過程を共有することができるようになります。
活用できるフレームワークとしては「マーケティングの4P」があげられます。
マーケティングの4Pを活用する際には、3C分析やファイブフォース分析などで事前に顧客のセグメンテーション(市場細分化)やターゲティング(標的市場)を行っておく必要があります。
<マーケティングの4P>
・製品 Product(商品、サービス、顧客価値)
策定した標的市場・顧客に対し、どのような製品・サービスを打ち出していくのかを設定します。
個別の商品だけでなく、商品群としての品揃えについても考慮することが大切です。
→ブログ形式の読み物、雑誌型の電子書籍アプリ、読むだけでなく集えるサロン型のソーシャルメディア、検索できる書籍、専門家の意見をリアルタイムで聞ける進化型の電子書籍etc
・価格 Price(顧客コスト)
製品の価格を設定します。
顧客に対して提供価値に見合った価格を提示することはもちろん、利益を創出することも考慮し、両者のバランスを保つ必要があります。
適正価格のなかで競争力・採算性をどれだけ維持できるかがポイントです。
→最初のうちは利益を度外視して安価、あるいは無料で提供していく。競合他社の動向も注視しながら、徐々にマネタイズにも意識を向けていき、有料コンテンツを増やしていく。
・チャネル Place(販売する場所、流通、利便性)
提供する製品・サービスを最終消費者へ到達させるための経路や流通網を設定します。
納期や入手のしやすさ、あるいは物流の効率性についても考慮しつつ、流通業者との交渉が必要になる場合もあります。
→インターネットを活用した媒体として、ホームページ、サイト、ブログ、各種ソーシャルメディア、スマートフォンアプリなどで積極的に配信していく。また、イベント等を通じて、ネットとリアルの融合についても考慮する。
・プロモーション Promotion(広告宣伝、販売促進、コミュニケーション)
顧客に対して製品やサービスを知ってもらうための方法を設定するのがプロモーションです。
多様化しているメディアをいかに利用するか、また、消費者にどれだけ自然にPRできるかによって、ブランドイメージにも影響を与えます。
→チャネルとの兼ね合いも検討しながら、ネット広告・スマホ広告を充実させていく。プロモーションに関しては動画や音声も積極的に活用し、認知度をあげるためにはテレビやラジオCMも候補からはずさない。
これらマーケティングの4Pを組み合わせて戦略化していくことを「マーケティング・ミックス」と呼びます。
5.チェックとサイクルの構築
日常業務における実践の指針が策定できたら、成果をチェックするための指標とその指標を生かした改善サイクルを構築します。
チェックとサイクルの構築によって、惰性で行う作業ではなく、よりクリエイティブなワークを実践できるようになります。
このあとに、長期的な視野に基づいた「現状分析」に関するフレームワークも活用しますが、現状分析が定期の確認であるのに対し、チェックとサイクルはより日常的・短期的なものと理解しておくと良いでしょう。
チェックとサイクルの構築で活用できるフレームワークは次の2つです。
・バランススコアカード(BSC)
・バリューチェーン(付加価値の連鎖)
<バランススコアカード(BSC)>
バランススコアカードは、財務諸表にあらわれる数字以外の評価対象となる数値を、見える化するためのツールです。
「財務」「顧客」「社内ビジネスプロセス(業務プロセス)」「学習と成長」の4つの視点から、重要業績指標(KPI:Key Performance Indicator)の向上を図ります。
経営の評価を財務諸表だけで行うのでは不十分です。
日々の業務がいかに目標の達成に貢献しているのかを知り、適正な評価と行動の管理を行うことが、効率の最大化と、そして従業員の士気を高めることにもつながります。
・財務的視点
財務的業績を向上させるために、株主に対してどのように行動するべきかという視点。
具体的な指標(KPI)は売上高、利益、株主資本利益率(ROE)などとなります。
・顧客の視点
戦略を達成するために、顧客に対してどのように行動するべきかという視点。
KPIは顧客満足度、顧客のリピート率、マーケットシェア、クレーム発生率などとなります。
・社内ビジネスプロセスの視点
株主と顧客、双方を満足させるために、どのように社内のビジネスプロセスを構築するべきかという視点。
業種によってKPIは異なりますが、在庫の回転率、開発の効率、精算におけるリードタイムなどが代表的です。
・学習と成長の視点
戦略を達成するために、そこで働く人々がどのように変化と改善のできる能力、あるいは環境を、維持できるかという視点。
従業員の満足度や能力開発における知的資産がどの程度蓄積されているかなどがKPIとなります。
バランススコアカードを使うことによって、各指標ごとの「財務的視点」と「非財務的視点」の関連性が見えてきます。
そこで見い出されたそれぞれの連鎖関係やプロセスが新しい付加価値の提供につながるのです。
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