ロジックツリー その3
【ロジックツリーの注意点】
ここまでで簡単にロジックツリーの使い方について確認してきました。
ロジックツリーはそのまま視覚的に活用しても良いですし、文章におこして活用することもできます。
もちろん、時間に余裕がある場合には、図と文章を使って説得するとより理解が深まることでしょう。
たとえば、部下の説得においては、ロジックツリーについての簡単なレクチャーを先に行い、その後で説得にあたれば効果的かもしれません。
また取引相手に対しては、スライドで作ったロジックツリーを送付しておき、あらかじめ目を通してもらってから説得にあたれば納得してもらえる可能性が高まります。
ただし、ロジックツリーを使い慣れてくると、ロジックツリーを使うことが目的になってしまい、本来の「問題の把握」と「解決策の提示」が疎かになってしまう場合もあります。
ロジックツリーはあくまでもツールでしかありません。
思考の過程を共有するためのものであることを今一度再確認し、使用する際にはそれを肝に銘じておきましょう。
それでは、「原因追求」の場合と「問題解決」の場合において、ロジックツリー作成時の注意点をおさらいしていきます。
<原因追求の場合>
部下や取引先を説得できない理由としてもっとも典型的なのが「双方の意思疎通ができていない」ことです。
つまり、自分は問題の原因やその原因にいたるまでの過程を把握しているのにもかかわらず、相手はなぜそれが原因になるのかが分からず、押し付けがましい印象を受けてしまうのです。
誰でも、持論を押し付けられては反発するものです。
だからこそ、ロジックツリーを活用する際には
・すべての原因を網羅する
・原因はできるだけ具体的に
・掘り下げれるものは掘り下げる
・思考の過程をきちんと図であらわす
これらのことに注意しなければなりません。
考えられる失敗例としては、ロジックツリーを使って原因を追求したあと、実際に活用する原因だけを相手に提示してしまうことです。
それでは、結果的に思考の過程を共有することができず、意見の押し付けになってしまいます。
原因追求のロジックツリーをもう一度確認してみてください。
問題点が漏れなくダブりなくピックアップされているだけでなく、階層ごとに掘り下げられているはずです。
上記の点を踏まえて、適切に活用するようにしましょう。
<問題解決の場合>
また、問題解決の場合にも同様に注意すべきポイントがあります。
それは、原因から短絡的な結論を導き出してしまうことです。
例えば、自社の売上が上がらない原因を「商品の差別化が不十分」「価格が適切でない」とした場合に、「商品の差別化をしなさい」「適切な価格をつけなさい」とそのまま部下に指示すればどうなるでしょうか?
これでは、ただ抽象的・一般的な解決策を提示しただけに過ぎず、方法論が明確でありません。
これは取引相手にも言えることで、より具体的な提案こそが相手の行動を促すためには必要なのです。
注意点をまとめましょう。
・解決策は具体的に
・すぐに行動できるところまで掘り下げる
・思考の過程をきちんと図であらわす
・原因が変われば解決策も変わる
イメージとしては、原因追求は厳格な問題点の収集が必要になる一方、問題解決に際してはより柔軟な姿勢が求められることです。
すべての解決策を実行するのは時間的にも資金的にも無理があります。
最終的には選択と集中が欠かせないことを踏まえて、可能な限りの最善を尽くすというスタンスが現実的と言えるでしょう。
【ロジックツリーとピラミッドストラクチャーの違い】
ロジックツリーは前出の「ピラミッドストラクチャー」と構造が似ていますが、活用方法に違いがあります。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
<ロジックツリー>
・根本的原因を深く追及する(縦の拡がり)
・モレなくダブりなく要素を洗い出す(横の拡がり)
<ピラミッドストラクチャー>
・結論を頂点にして根拠を掘り下げる
・論理的な文章を書くための足がかりとして活用する
まとめると、ロジックツリーは「原因の追及・問題の解決」時に活用できるのに対し、ピラミッドストラクチャーは「意思の提示・思考の共有」時に使うものとなります。
もっとも、大切なのは両者を厳密に使い分けることではなく、両者の違いを認識しておくことです。
【まとめ】
・ロジックツリーは相手の「納得感」を演出するためのツール
・ロジックツリーは「原因追求」と「問題解決」に分けて活用する
・原因には「なぜ?」を、解決には「具体的にどうやって?」をくり返す
・実現可能性についての考察を欠かさないこと
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