良い仮説をつくるための3つの資質 その5
【組織の観点から】
最後に、会社や各種団体などの組織として、質の高い仮説思考をどのように醸成するべきなのか、具体的な研修の実施以外の方向性で考えてみたいと思います。
多くの方が組織に属して生活している現状を鑑みると、個人的な仮説思考のレベルアップだけでなく、組織単位での施策が重要になることは明白です。
それが地域社会の発展、ひいては国が抱える問題に対する解決へのアプローチになるかもしれません。
組織単位であっても、より良い仮説を構築するために必要なものは、個人個人が上質な仮説を構築するために身につけておくべき資質と変わりはありません。
変わるのは、人に対する「教育・研修」という観点から、組織に対する「環境整備」という方向性の違いでしょう。
では、どのような環境を構築すれば、組織的により良い仮説思考を行えるのでしょうか。
「良い仮説の3要素」と照らし合わせながら考えてみましょう。
1.ビジネスに関する豊富な知見
ビジネスに関する豊富な知見を、個人ではなく社内で醸成するためには、情報をオープンにすることが大切です。
とくに、成功事例だけでなく、失敗事例に関しても全社的に共有できる体制づくりが重要でしょう。
ただマニュアルを置いておくだけでなく、建設的な勉強会やミーティングを定期開催し、そこで得られた知見をプールしておくこと。
あるいは、顧客の分布やお客さまからの意見についても、全社的に把握しておくことにより、すべての社員がマーケティングを行える体制が整います。
そこで構築される仮説は、従来のものより一歩進んだものとなることでしょう。
2.違いを見い出す優れたセンス
また、「違いを見い出す優れたセンス」に関しては、個人的なスキルによるところも大きいのですが、議論によって生み出すことも可能です。
それぞれが自由に多角的な視点をもって議論をすれば、固定観念や偏見を払拭することも可能でしょう。
自然に反対意見を述べられる風土は、仮説思考にも影響を及ぼします。
社員間で学びが生じれば、特別な研修を実施する必要もありませんね。
3.上質な仮説への飽くなき探究心
最後は、「上質な仮説への飽くなき探究心」をいかに組織単位で醸成するかということ。
これには、ポジティブな競争心を社内でつくり上げることが重要でしょう。
所属する構成員それぞれが、お互いに影響を与え、つねに目標に対する高い熱意と高揚感を維持できるようにすることです。
もっとも、そうした空気感は一朝一夕ではつくれませんが、トップや経営層の姿勢によっては、組織の自然な雰囲気となることでしょう。
一定の業績をあげることで満足してしまえば、組織の永続的な成長はありえません。
あまりに無謀な目標を掲げることは無意味ですが、それでも、強気の姿勢で業務に取り組むことは、目的必達の精神を育みます。
できることなら、精神論に頼らず、数字をベースにした目に見えるゴールへの追求が、上質な仮説への探究心につながる。
そんな仕組みづくりを目指しましょう。
ここまで「仮説思考」について多くのページを割いて述べてきましたが、仮説を持って実務にあたることの大切さを理解いただけたでしょうか。
たかが仮説と思わず、是非実践していただければと思います。
【まとめ】
・仮説の質は高められる
・よりハイレベルな仮説を構築するために必要な資質は次の3つ
1.ビジネスに関する豊富な知見
2.違いを見い出す優れたセンス
3.上質な仮説への飽くなき探究心
・仮説思考が高まると、個人のスキルも上がる
・組織的な観点からも、より良質な仮説思考は重要
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