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大きな論理の構造 その2

【論理の構造をつくる】
 それでは、先述のAさんのレポートの欠点を参考にして、論理の構造をつくる際に必要な3つの要素について確認していきましょう。

 

<1.「目的」の把握>
 今回、Aさんに与えられた課題は「職場の雰囲気を良くするための施策」でした。

 

Aさんはすぐに調査をはじめてしまったわけですが(結論に対する仮説はあったようです)、論理的に考えるためには「目的」を知らなければなりません。

 

「職場の雰囲気を良くすること」の目的にはどのようなものがあるでしょうか。

 

・社内を活性化させる
・コミュニケーションを円滑にする
・社員のモチベーションをあげる

 

 これらはほんの一例ですが、その根底にあるのは「会社をより良い方向に導く」ことです。

 

具体的には、会社の業績をあげる、社会的な価値を高める、より貢献できる組織になるなどに分解することができます。

 

<2.「問い」の網羅>
 課題に対する目的を把握したら、それらを答えられる「問い」へと変換していきます。

 

適切な問いに変換することで論点をおさえつつ答えを量産できるようにします。

 

社員のモチベーションを上げるだけなら、Aさんの「お菓子制度の導入」は一定の効果を発揮するでしょう。
しかし、それは目的から作成した問いには答えていません。

 

会社をより良い方向に導くという目的を認識しながら、

 

・社内をどうすれば活性化できるか?
・どうすればコミュニケーションが円滑になるか?
・社員は何によってモチベーションがあがるのか?

 

に答えていくことが論理的な発想のもととなるのです。

 

<3.「答え」と「根拠」>
 問いを網羅した後は、目的を把握しつつ答えを探っていきます。
このときに気をつけなければならないのが「根拠」です。

 

Aさんは周辺の人に直接的なインタビューを行ったことを根拠としています。

 

多くの社員が望んでいるのだから結果としてそれは社内の雰囲気を良くするのではないか、という発想です。

 

インタビューすること自体は悪くありません。
大手企業の事例や生物学的な視点からの分析も見事です。

 

しかし、残念ながら根拠としてはあまりにも弱い。

 

たとえば、インタビュー相手は「会社を良くするため」という目的を把握していたのでしょうか?

 

また、大手S社は会社のためにお菓子制度を導入したのか、それとも社員の意見をただ反映させただけなのでしょうか?

 

生物学的な視点はオフィスでも当てはまるのか?
集団の規模や年齢層に関係なく?

 

 根拠は目的に根ざしていなければなりません。

 

営業で外回りが多い社員はお菓子を食べる時間が無いかもしれませんし、お菓子嫌いな男性社員やダイエット中の女性社員がいれば「無駄なことに経費を使わないでほしい」と反発するかもしれません。

 

もしAさんが、課題に対する目的と答えをすり合わせて、結論をより深く掘り下げていけばレポートの内容は変わっていたでしょう。

 

根拠も結論ありきで集めるのではなく、集めながら結論そのものの修正に利用できたはずです。

 

論理構造をつくるための3パーツ(目的、問い、答えと根拠)

 

 このように目的、問い、答え、そして根拠は個別に検討するのではなく、相互に関連づけながら、結論の精度を高めるために活用されなければならないのです。

 

【論理的に考える際の注意点】
 最後に、論理的に考える際の注意点を確認しましょう。

 

<注意点1.調査への盲信>
 根拠となる調査結果の収集は、結論の説得力を高め、論理的に相手を説得するために役立ちますが、盲信してはいけません。

 

同じ社内にいる社員でも個人個人の置かれている状況は微妙に異なっていますし、嗜好や考え方の多様性は認めなくてはなりません。

 

また、結論を裏付けるために偏った調査をしていないか、自分自身への問いもくり返す必要があります。

 

<注意点2.結論ありき>
 会社のためという目的がある以上、そこに個人的な意見や私情を挟んではいけません。

 

むしろ立場上、調査結果を客観的に分析しなければならないはずです。

 

たとえ結論が個人的に気に入らなくても、それが会社のためであれば堂々と提案するべきです。
それが社員としての仕事です。

 

もし、前々から「こうなれば良いな」と思ってたことを結論として採用してしまえば、結果として、レポートは論理的な説得力を欠いてしまいます。

 

【まとめ】
・「論理的」とはきちんと筋道を立てているということ

 

・論理の構造は「目的」「問い」「答えとその根拠」でつくる

 

・個々のパーツは結論の精度を高めるために活用する

 

・自分や調査対象にかかるバイアスをできるだけ取り除くよう努力する

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