論理の構造化の重要ポイント その1
【論理の構造をつくるにあたって】
論理的に物事を考える際に構築すべき「大きな論理の構造」については、これまでにも再三にわたってご説明してきました。
ただし、大枠をつかむことは重要ですが、より精度を上げるためには細かい部分への配慮も欠かしてはなりません。
全体を把握することと細かい部分への意識を高めることは、自動車の両輪のように相互に作用し合う関係にあるのです。
そこで今回は、大きな論理の構造を構築する際の「考慮すべき重要なポイント」について詳しく解説してまいります。
理解を深めるために、論理的な思考法についてここで簡単におさらいをしておきましょう。
論理的であると言えるために必要な要素は次の3つでした。
1.「目的(イシュー)」の把握
2.「問い(枠組み)」の網羅
3.「答え」と「その根拠」の提示
また、論理の構造を視覚的に表現し、さらに文章化するステップにおいて活用できるツールが「ピラミッドストラクチャー」でした。
忘れてしまった方は、該当記事をもう一度確認しておいてください。
さて、上記のポイントを踏まえて論理的に物事を考えていくわけですが、全体として論理的な思考ができていても、個々人でその認識を共有できていない場合があります。
どういうことかと言いますと、例えば「Aという目的のために、Bという問いについて考え、導き出された答えがCで、その根拠はD」という論理的考察があったとします。
その際に、ある人は「Aという目的は今回のプロジェクトを成功させるためにあるんだ」と認識しており、またある人は「Aという目的は長期的な会社の利益に貢献するためにある」と認識しているような状態です。
この認識不足、あるいは微妙な理解の齟齬(そご)は、短期的にはそれほど影響はないかもしれません。
しかし、長期的に存続することが企業の最大の目的であると考えた場合に、ジワジワとボディーブローのように効いてくる可能性があります。
そういった事態を避けるために考えなければならないことが、冒頭で述べた「考慮すべき重要なポイント」です。
具体的には次の2点になります。
?明確な言葉を使うこと
?繰り返し作りなおすこと
明確な言葉を使うとは、言い換えれば「言葉の定義を明らかにしておくこと」と言えます。
たとえば「離職率を減らす」という目的に対して「何に対しての離職率か?」「新卒への対策か?」「中堅社員への対策か?」「採用の是非まで含めるのか?」「早期退職制度との兼ね合いは?」などを、あらかじめ明らかにしておくことです。
もちろん、論理的に考察する前に言葉の定義を明らかにしておくことは重要ですが、議論の中で、あるいは文章化する段階で確認することも忘れてはなりません。
場合によっては定義を再考する必要があるかもしれないのです。
あらかじめ言葉の定義をしておくこととは、必ずしもその後の定義の変更を否定することではありません。
柔軟な思考によって論理性がより高まる可能性もあるということを理解しておきましょう。
また、繰り返し作りなおすというのは、とくにピラミッドストラクチャーを作成する際、あるいはピラミッドストラクチャーから文章へと変換する際に言えることです。
綺麗なピラミッドが作れればそれで満足したくなる気持ちは分かります。
また、文章を書き直す作業は想像以上に大変なものです。
しかし、創造が破壊から生まれることもまた事実なのです。
最終的な目的が「論理的な文章や説明による相互理解」にあるのであれば、図や文章の出来栄えにこだわりすぎるのは考えものです。
自己満足に陥らないために、繰り返しの作りなおしが前提にあるということを肝に銘じておきましょう。
関連ページ
- ピラミッドストラクチャー その2
- 論理の構造化の重要ポイント その1
- 論理の構造化の重要ポイント その2
- 因果関係の把握 その1
- 因果関係の把握 その2
- 因果関係の把握 その3
- 因果関係の把握 その4
- 因果関係の把握 その5
- 好循環と悪循環(「にわとり−たまご」の因果関係) その1
- 好循環と悪循環(「にわとり−たまご」の因果関係) その2
- 好循環と悪循環(「にわとり−たまご」の因果関係) その3
- ゼロベース思考 その1
- ゼロベース思考 その2
- 仮説・検証の3つの効果 その1
- 仮説・検証の3つの効果 その2
- 仮説・検証の3つの効果 その3
- 仮説・検証の3つの効果 その4
- 仮説・検証の3つの効果 その5
- 良い仮説の3要素 その1
- 良い仮説の3要素 その2
- 良い仮説の3要素 その3
- 良い仮説の3要素 その4
- 良い仮説をつくるための3つの資質 その1
- 良い仮説をつくるための3つの資質 その2
- 良い仮説をつくるための3つの資質 その3
- 良い仮説をつくるための3つの資質 その4
- 良い仮説をつくるための3つの資質 その5
- 因果関係を考える3ステップ その1
- 因果関係を考える3ステップ その2
- 因果関係を考える3ステップ その3
- 因果関係を考える3ステップ その4
- 仮説・検証の具体的な4ステップ その1
- 仮説・検証の具体的な4ステップ その2
- 仮説・検証の具体的な4ステップ その3
- 仮説・検証の具体的な4ステップ その4
- 分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その1
- 分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その2
- 分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その3
- 分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その4
- 分析対象の特徴をつかむための4つの視点 その5
- 検証の際の5つの注意点 その1
- 検証の際の5つの注意点 その2
- 検証の際の5つの注意点 その3
- 検証の際の5つの注意点 その4
- クリティカル・シンキングとは その1
- クリティカル・シンキングとは その2
- クリティカル・シンキングとは その1
- クリティカル・シンキングとは その2
- 現状把握の基本2(切り口と切り方) その1
- 現状把握の基本2(切り口と切り方) その2
- 現状把握の基本2(切り口と切り方) その3
- 複合的な論理展開 その1
- 複合的な論理展開 その2
- 演繹法 その1
- 演繹法 その2
- フレームワーク思考 その1
- フレームワーク思考 その2
- フレームワーク思考 その3(3C分析、SWOT分析)
- フレームワーク思考 その4(5フォース分析、ポーターの3つの基本戦略)
- フレームワーク思考 その5(7つのS、短期・中期・長期)
- フレームワーク思考 その6(4P、バランススコアカード)
- フレームワーク思考 その7(バリューチェーン:付加価値の連鎖)
- フレームワーク思考 その8(PPM、過去・現在・未来、仮説思考)
- フレームワーク思考 その9(その他のフレームワーク)
- 仮説と検証 その1
- 仮説と検証 その2
- 仮説と検証 その3
- 仮説と検証 その4
- 仮説と検証 その5
- 仮説と検証 その6
- 因果関係の7つの錯覚パターン その1
- 因果関係の7つの錯覚パターン その10
- 因果関係の7つの錯覚パターン その2
- 因果関係の7つの錯覚パターン その3
- 因果関係の7つの錯覚パターン その4
- 因果関係の7つの錯覚パターン その5
- 因果関係の7つの錯覚パターン その6
- 因果関係の7つの錯覚パターン その7
- 因果関係の7つの錯覚パターン その8
- 因果関係の7つの錯覚パターン その9
- 帰納法 その1
- 帰納法 その2
- イシューと枠組み その1
- イシューと枠組み その2
- イシューと枠組み その1
- イシューと枠組み その2
- 論理展開のパターン その1
- 論理展開のパターン その2
- 論理展開のパターン その3
- 大きな論理の構造 その1
- 大きな論理の構造 その2
- 論理展開のパターン その1
- 論理展開のパターン その2
- 論理展開のパターン その3
- 論理展開の6つの注意点 その1
- 論理展開の6つの注意点 その2
- 論理展開の6つの注意点 その3
- 論理展開の6つの注意点 その4
- ロジックツリー その1
- ロジックツリー その2
- ロジックツリー その3
- 現状把握の基本1(MECE) その1
- 現状把握の基本1(MECE) その2
- 大きな論理の構造 その1
- 大きな論理の構造 その2
- ピラミッドストラクチャー その1