論理展開の6つの注意点 その4
<Eさん>
競合のW社、X社、Z社が外国人社長を採用して業績を伸ばしているので、弊社の社長にも外国人を登用してはいかがでしょうか。
→Eさんの回答は、周辺企業の事例を安易に一般化してしまっています。
業績を伸ばしている周辺企業を数社ピックアップし、共通事項として外国人社長に着目したようです。
帰納法的思考ですね。
ただ、果たしてそれが本当に論拠として正しいでしょうか。
外国人社長を起用することは、イノベーティブな取り組みではあることは確かです。
しかし、挑戦的な施策ではあっても王道ではありません。
たまたま3社の業績が向上しているからといって、常識として一般化することはできないのです。
<Fさん>
私の友人3人は、みんな社内で英語が公用語になっています。弊社も取り入れるべきではないでしょうか。
→Fさんの回答は、収集したデータに明らかなかたよりが見られます。
大企業や新興企業など、英語を社内公用語として取り入れている事例はありますが、その実際的な効果はまだはっきりしていません。
現段階では、試験的に導入しているという側面もあるでしょう。
たしかにFさんの友人3人が勤めている会社では、英語が社内公用語になっているかもしれませんが、コストと時間、社員の負担を考慮すると、業績に反映するかどうかは不透明です。
サンプリングとして不十分ですね。
【「演繹法・帰納法」共通の注意点】
Aくんらそれぞれが犯した6つのミスは、注意点として「演繹法・帰納法共通」、「演繹法特有」、「帰納法特有」に分類することができます。
それぞれ順番に確認していきましょう。
<注意点1.不正確な情報>
収集した情報やその理解が不正確だと、結果的に導き出される結論も間違ったものとなります。
これは演繹法・帰納法双方に言えることであり、論理的思考をする際のキモと言っても良いでしょう。
情報や理解の正しさをつねに疑うべきです。
→Aくんは「イノベーションのジレンマ」への理解が不正確でした。
【「演繹法」特有の注意点】
<注意点2.ルールの省略>
演繹法を使って説明する際には、相手が自分と同じステージにいるわけではない、ということを念頭におきましょう。
とくに、常識的なことは省略されがちですが、正確なコンセンサスの形成、つまり合意や意見の一致に必要な最低限の情報は必ず提示するべきです。
→Bくんはルール(前提条件)を省略してしまったために、説明が不十分でした。
<注意点3.飛躍した論理>
一見正しそうに思える論理も、個別の事例に対して「なぜ?」と問うことで、誤りだと気付くことができます。
世間一般の常識に対しても思考を省略せず、「事象」「一般論」「結論」を確認し、論理展開が正しいかどうかチェックしましょう。
段階的な思考で論理を飛躍させないことが肝心です。
→Cくんは思考が浅かったために、論理が飛躍してしまいました。
<注意点4.事例のミスマッチ>
ビジネスとスポーツ界において、活躍する人の共通項を取り上げる事例は多々ありますが、論拠としては弱くなりがちです。
机上の空論にならないように注意しながら、個別具体的にその事例が当てはまるかどうか検討しましょう。
→Dさんは違うジャンルの事例を混同してしまいました。
【「帰納法」特有の注意点】
<注意点5.安易な一般化>
集めた情報から抜き出した共通項は、本当に他者においても効果があるものなのでしょうか。
また、事例と結果の因果関係は確かなものでしょうか。
安易な一般化はステレオタイプな思考に陥る危険性があります。
→Eさんは周辺企業の事例を安易に一般化してしまいました。
<注意点6.かたよりのあるサンプル>
サンプルにかたよりがあると、見つけた共通項はもちろん、導き出された結論(一般論)にもかたよりが生じます。
バイアスのかかっていない、つまり偏りのないサンプリングを心がけ、公平さを意識することが大切ですね。
→Fさんが収集したデータには、明らかなかたよりがありました。
【まとめ】
・論理展開には6つの落とし穴がある
・共通の注意点
?不正確な情報
・演繹法特有の注意点
?ルールの省略
?飛躍した論理
?事例のミスマッチ
・帰納法特有の注意点
?安易な一般化
?かたよりのあるサンプル
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