仮説・検証の具体的な4ステップ その2
【例題】
仮説・検証の大まかな流れについて、理解できましたでしょうか。
組織単位の戦略として考えると理解しづらい場合には、自分や周囲の人が何か問題に直面した場合に、どのように解決しているのかを思い返してみると分かりやすいですね。
パニックに陥らない人は、仮説・検証の思考を行うことによって、物事を冷静に判断しています。
それでは、具体例をとおして、仮説・検証への理解をさらに深めていきましょう。
<例>
一般消費者向けに食品や日用品を販売しているA社は、I県のスーパーマーケット市場でトップ3に入るほどの優良企業です。
ここ10年の間に出店数も増加し、さらなる成長のために邁進してきました。
ただ、最近では、営業利益の伸び率が横ばいになっており、どうしてもナンバーワン企業になることができずにいます。
創業社長のZは、戦略部長のYに対し、いつになったら我が社が一位になるのかと執拗に迫ります。
その度に、Y部長は「あと数年で……」と、同じ言葉をくり返してきましたが、いよいよ結果を出さなければならない場面にまで追い込まれてしまいました。
社内からは「戦略部なんて必要ないのでは?」とまでささやかれる始末です。
事態を憂慮したY部長は、新たな人材として元経営コンサルタントのXさんをスカウトし、人事部に掛けあって雇い入れることにしました。
これまで、社内の人員で構成されていた戦略部に新しい風が吹くことを期待しての行動です。
また、小売業界に明るいという点についても魅力的に感じていましたし、まさに適任と言えるでしょう。
Y部長はさっそく、戦略部の全社員を結集して会議を行いました。
もちろんXさんも参加しています。
議題は「向こう一年間で、I県のトップになるためには」です。
直接的なテーマではありますが、それほど戦略部の存在もY部長の立場も危ういということを暗に示した格好です。
事態が逼迫していることは、Z社長の態度からも明らかでした。
緊迫した空気が伝わったのか、会議では数多くの建設的な意見が出されました。
ひととおり列挙してみましょう。
J社員「昨年好調だった、運動会や体育祭前の営業を強化するべきだと思います。」
K社員「競合他社が導入している「焼き立てパン」を、自社でも取り入れましょう。」
L社員「夕方の来客数が落ち込んでいるので、積極的にセールを行うべきではないでしょうか。」
M社員「折込チラシの効果が芳しくないので、実験的にネット閲覧に切り替え、経費削減をはかりましょう。」
Xさん「電気自動車を使った宅配サービスを実施したい。」
それぞれ、自社の状況を加味した実践可能な意見ばかりです。
ただ、Xさんの意見に関しては、宅配サービスを行った前例もなく、電気自動車という配達ツールとしては未知の機械を導入することを示唆していることもあり、他の社員からは冷ややかな視線を浴びていました。
Y部長は、Xさんに提示した意見を詳しく解説するよう促しました。
Xさんによる解説は以下のとおりです。
『A社の状況を鑑みるに、ここ数年の成長率が鈍化している理由は「A社オリジナルのサービスが提供できていない」ことにあると考えられます。
たしかに、過去の実績や経験、あるいは競合他社の事例を参照することも大切ですが、それでは二番煎じから脱することはできないでしょう。
既存サービスの改善は、新たなお客さまを呼ぶことになりませんし、そもそも戦略部で考えるべき課題ではありません。
もう一度思い出してもらいたいのですが、今回の議題はあくまでも「向こう一年間で、I県のトップになるためには」です。
そのためには、相当の覚悟が必要ですし、またある程度のリスクを考慮して決断しなければなりません。
失礼ながら、他の方の意見には、そのような攻めの姿勢が欠けているように感じます。
宅配サービスも電気自動車もひとつの案でしかありませんが、「高齢化によるニーズの高まり」「環境配慮というイメージ戦略」「人目を引くPR」という観点から考えてみると、斬新な企画として悪くないかと思い提案いたしました。
私の仮説には甘い点もあるかと想定されますので、検証によってその精度を高めるべきでしょう。』
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