フレームワーク思考 その5(7つのS、短期・中期・長期)
<7つのS>
経営戦略を立案する際には、その実効性についても考慮する必要があります。
いくら優れた戦略を考案したとしても、実現性に乏しい机上の空論となってしまえば意味がありません。
ビジネスの現場ではつねに実効性が問われます。
そこで、戦略と組織、あるいは社内システム、社員のコンセンサス、スキルなどとの整合性をとるために使えるツールが「7つのS」です。
会社(団体)全体をハードとソフトに分けて考えることで、MECEを実践することができます。
・ハードのS
?組織(Structure)
組織の形態や部門間の地位、権限について把握する
→A課長の新規事業部はまだ組織と呼べる代物ではないが、会社全体のどのような位置についているのかを把握しておくことで、今後どのように変化していくべきかを察知できるようにする。
?戦略(Strategy)
競争優位性を保持するための戦略を、他の要素も考慮しながら俯瞰する
→市場の成長規模がどの程度か予測できず、他社の参入も考慮すべきなので、ひとまず「集中戦略」に主眼を起きつつ活動する。ただし、周辺環境の変化には敏感に対応できるように柔軟に動けることが大事。
?社内システム(Systems)
報酬、評価、情報伝達、意思決定プロセス、報告様式など
→今は小規模なので、直接的なコミュニケーションを重視しつつ、積極的に意見交換を行っていく。情報の伝達や報告には、デジタルツールやクラウドをフル活用して、それぞれがインターネットに精通する。
・ソフトのS
?人材(Staff)
採用から教育までの過程、適材適所の配置、人材の循環など
→A課長を含めて他のメンバーは、可能な限り既存の一般論にとらわれないようにする。製品・サービスの創造にあたっても、イノベーションを第一に考えられるように教育していく。
?スキル(Skill)
事業の継続、戦略の実行に必要なスキルがあるか
→インターネットに関する知識やスキルは研修を通じて身に付けるとし、戦略の実行においては動きながら微調整を行う。不測の事態に対しては戦略の実行よりも、事業の継続を重視すべく対応する。
?経営スタイル(Style)
会社の社風、企業文化、行動規範となるスタイルなど
→会社全体の社風や企業文化は、長年出版業を行ってきただけあって古風ではあるが、A課長の新規事業部においては常識に左右されないように配慮する。行動規範は失敗を恐れず挑戦する心的姿勢を大切にする。
?価値観(Shared Value)
従業員同士で共有している価値観、社会的な指名、長期的な組織目標など
→出版の未来を想像するのが新規事業部の社会的役割。生き残ることが最優先事項ではあるが、そのために前向きな挑戦ができないということはないようにする。出版の定義を根本から覆す発想を歓迎する。
3.目標の策定
長期的な戦略を立案したあとは、その戦略を実行するための具体的な目標を設定していきます。
目標の設定に際しては、一定方向からのみ眺めるのではなく、複数の視点で設定することが大切です。
活用できるフレームワークとしては「短期・中期・長期の時間軸」があげられます。
時間に対する視点を複数個設定することで、さまざまな角度から戦略や事業の進み具合を確認することができます。
通常は、長期から短期に向かって行います。
<時間軸?短期・中期・長期>
・長期
最終的にその企業(事業)がどこに向かうのか。
何を目標としているのか。
社会に対してどのようなインパクトを与えたいのか。
そういった視点から10年〜のスパンで企業のあるべき姿を模索し、「長期目標」を策定します。
→10年後には新規事業部をY社の中核事業となるように成長させる。そのためには出版とインターネットとの融合を一般化させ、利便性、価値、適正価格などの側面から幅広い普及を目指す。
・中期
長期的な目標を達成するために3年〜5年単位で掲げる目標が「中期目標」です。
長期目標を掲げているだけでは曖昧になりがちな達成度合いも、中期で確認することによってよりイメージしやすくなります。
→新しいものに関心のある層(イノベーター・アーリーアダプター)から一般大衆(アーリーマジョリティ・レイトマジョリティ)にまで利用者の層を広げていく。
・短期
さらに、中期目標を今日、明日と生かしていくためのものが「短期目標」です。
基本的には長くても1年単位で設定し、日、週、月次、3ヶ月、半年単位の行動計画に落としこんでいきます。
→獲得ユーザー数、特設サイトのPV数、販売冊数、開拓営業先件数などを具体的に定め、短期的な目標として掲げる。目標は達成度合いだけでなく、随時、その内容の精査も行うようにする。
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