現状把握の基本2(切り口と切り方) その2
【例題】
それでは、現状把握のための切り口と切り方について、より理解を深めるために例題をみていきましょう。
<例>
ある大手自動車メーカーE社は、ここ数年の自動車総販売台数の減少に頭を抱えていました。
背景となっている若者のくるま離れやカーシェアリングの普及、あるいはガソリン価格の高騰に対して、効果的なアプローチができずに悩んでいます。
そこで営業本部長のAは、異例ではありますが、全国の販売店から店長を集めて企画会議を実施することにしました。
各地で購入層や販売数の地域差はあるものの、全国規模で意見交換することによって、長期的な戦略を打ち出すことが狙いです。
会議のテーマはズバリ、「これからの時代の“売れるくるま”とは」です。
直接的ではありますが、それだけに厳しい現状を反映させているとも言えます。
状況は同業他社も同じですが、それを言い訳にすることはできません。
E社は日本での売上低迷を海外部門で補填してはいましたが、今回の会議ではあくまでも市場を日本に絞って話し合うことにしました。
「日本で売れないなら海外事業に力を入れよう!」では、全国から店長を集めた意味がありません。
会議に先立って全国の各店長から収集した意見は、おおむね次の6つに集約されました。
<若者対策>
・若者にくるまの良さを啓蒙するキャンペーンを定期的に打ち出す
・「親から子へ」など、マイカーを引き継ぎつつ購入できる仕組みを構築する
<カーシェアリング対策>
・カーシェアリングにE社の自動車を積極的に提供する
・「資産価値・資産運用」としての自動車所有を提案する
<ガソリン価格の高騰対策>
・選べるエコカー、低燃費車の推進(電気・水素など)
・石油大手との提携により、安定価格でのガソリンの供給
<その他の対策>
・女性向けに、カラーやデザインのバリエーションが豊富な車種を増やす
・機械音痴でも対応できるように「トラブルマニュアル」を改定する
<解説>
それぞれの意見は、「自動車の総販売台数の減少」という問題に対応するための、切り口及び切り方を変えた現状分析の結果です。
それぞれの意見ごとに、どのような切り口・切り方になっているか確認してみましょう。
【切り口1】
<若者対策>
→「若者」を切り口として、販売減の対策を考案しています。
【切り方】
・若者にくるまの良さを啓蒙するキャンペーンを定期的に打ち出す
・「親から子へ」など、マイカーを引き継ぎつつ購入できる仕組みを構築する
→若者という切り口に対し、低年齢層という「年齢」で区切っているのか、それとも親子という「世代」で区切っているのかで、切り方を変えています。
【切り口2】
<カーシェアリング対策>
→自動車購入の「代替案」を切り口として、カーシェアリング対策をとりあげています。
【切り方】
・カーシェアリングにE社の自動車を積極的に提供する
・「資産価値・資産運用」としての自動車所有を提案する
→カーシェアリング対策として、「プロモーション」に活用するのか、はたまた「資産(お金)」の部分からアプローチするのかで切り方が異なります。
【切り口3】
<ガソリン価格の高騰対策>
→「自動車購入を躊躇する理由」を切り口として、「ガソリン価格の高騰」に目をつけました。
【切り方】
・選べるエコカー、低燃費車の推進(電気・水素など)
・石油大手との提携により、安定価格でのガソリンの供給
→ガソリンを「自動車燃料」として他の燃料と並列的に考えるのか、あるいはガソリンの「価格」に着目して価格を抑える方法を打ち出すのかで切り方を変えています。
【切り口4】
<その他の対策>
→上記以外の切り口による対策案です。
【切り方】
・女性向けに、カラーやデザインのバリエーションが豊富な車種を増やす
・機械音痴でも対応できるように「トラブルマニュアル」を改定する
→前者は自動車を購入する可能性がある層を年齢や世代ではなく「性別」という切り方で考えています。また後者は、自動車購入者を「機械に対して強いか弱いか」で区切り、対策を考案しています。
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