因果関係を考える3ステップ その3
【因果関係を探るための“3つの考え方”】
相手を論理的に説得するためには、より論理的な説明を行う必要があります。
そのためには、NさんとOさんが行ったように、因果関係を把握するための指針をフルに活用することが大切です。
冒頭でも登場した3つの考え方について、ここでさらに掘り下げて理解を深めていきましょう。
<考え方1.「思いつき」から広げる>
例題で、夜の営業をオーナーから打診されたNさんは、直感的に次のような「夜の営業を行うべきではない」理由を考えていました。
・ランチタイムの温かいイメージが崩れてしまわないか
・お酒の提供によって客層が変化してしまわないか
・取り扱いメニューを増やすことによって、対応に不備がでないか
・ユーザーの好みにバラつきが生じれば、満足度に影響するのではないか
・いずれにしても、自分だけで昼と夜をこなすのは難しい
これらは、日々の業務を通じてNさんが日常的に感じていたことの発展形です。
つまりは「思いつき」の延長にすぎないのですが、Oさんがこれらを積極的に活用したように、実際には、思いつきからよりクリティカルな要素を発見できることは多いのです。
最初の段階では、考えられる原因(この場合は夜の営業を行った場合)を具体的にイメージし、そこから思いつくかぎりの要因を洗い出してみる、あるいは派生させて考えることで、因果関係を俯瞰することが可能になります。
大切なのは、ひとつの要素から関連する他の条件を考えつつ、さらに時間的・空間的な広がりをもたせながら幅広く発想してみることです。
種々の要素を検討してみることで、解決策も見えてくることでしょう。
<考え方2.「原因の原因」は何か?>
もっとも、思いつきから派生した原因をただ羅列するだけでは、因果関係をより深く理解することはできません。
そこから導き出された解決策についても、表面上の特効薬にしかならないこともままあります。
なぜなら、肌感覚によって気付いたことは、たんなる思い込みや偏見である場合も少なくないからですね。
ですので、思いつきをきっかけに発見した原因は、そのまま活用するのではなく、さらに原因の原因を探るための足がかりとしなければなりません。
例題の事例ですと、
「ランチタイムの温かいイメージが崩れる」
→ なぜランチタイムの温かいイメージが崩れてしまうのか?
→ 昼間のクリーンなイメージを保持するのが難しい
→ 料理、衛生面、お酒の提供、客層の変化
→ Nさん自身に負担がかかる、きめ細かな配慮ができない
→ 結果的に、昼の営業に悪影響がある
というような発想ですね。
その結果として、Oさんは次の2つの原因を最終的に提示したのでした。
・夜の営業が昼の営業に悪影響を与える可能性がある(クリーンなイメージ、明るさ)
・新たに人を雇えば人件費や設備投資費もかさみ、その分を回収できる見込みが無い
思いつきのままでは、単純に自身の理想や希望を押し付けてしまうことになり兼ねません。
そうではなく、思いつきを発展的に利用するために、くり返し問い続ける姿勢を忘れないようにしましょう。
<考え方3.「因果の構造」を図解する>
「思いつき」からはじめて、さらに「原因の原因」を探れば、根本にある因果関係の全体像が把握できるようになります。
それだけでも説得材料としての因果関係を俯瞰することができますので、論理的な説明は可能となります。
ただし、頭のなかだけで考えるのには限界があるのも事実です。
また、研究した本人はその因果関係を深く理解することはできますが、他人も同様に理解できるとはかぎりません。
そこで、説得力を高めるために「因果の構造」を図解してみましょう。
図解は、各種学校の授業や書籍の中、プレゼンテーションシーンにも多数活用されています。
文章理解という左脳だけでなく、直感的な理解をうながす右脳をも利用できるツールなので、さまざまなタイプの人を説得するのに役立ちます。
実際にこの記事で使われている図解を参考にするのもよいでしょう。
説明の補助という使い方だけでなく、考えを整理するのにも使えますので、思いつきの段階や議論の場でも積極的に活用すると良いでしょう。
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