仮説・検証の具体的な4ステップ その3
Xさんの解説を聞きながら、Y部長は自身が部下に示してきた方向性を軌道修正することを決意しました。
戦略部の本来の役割は、成長のための指針を示すこと。
これからは、より攻めの戦略を考案しなければならないと、改めて思い返したのです。
Xさんの意見を議論の中心に据え、戦略会議は夜遅くまで続きました。
<解説>
今回の事例では、先ほどご紹介しました「仮説・検証の4ステップ」がポイントとなります。
「A社がトップ企業になるためには?」という、大きな目的に対する共通認識は他の社員にもあったのですが、その問題に対してどのようにアプローチするべきなのかという視点に欠けていたために、Xさん以外の意見は仮説の構築が不十分でした。
とくに、単なる業績の回復を目指すだけならまだしも、ひとつの県だけとは言え、業界のトップになろうとするのであれば、「諸問題への解決策」では達成できません。
競合他社が行っている最低限のサービス水準は当然に維持しなければなりませんし、経費削減や無駄の排除だけで、お客さまを満足させる地域ナンバーワンにはなれないのです。
大切なのは、まず、問題の輪郭を明らかにし、そこから適切な戦略を立案することです。
仮説を設定する理由は、将来の先行きをはっきりと見渡すことができないためです。
既存の方法論や競合他社の真似だけでは、たとえ業績が回復したとしても、よりイノベーティブなリーダー企業とみなされることはないでしょう。
それでは、当初の目的を達成することはできませんね。
【仮説・検証を行うための4ステップ】
最後に、仮説・検証を行うための4つのステップについて、詳しくみていきましょう。
<ステップ1.問題をあぶり出す>
ステップ1は「問題のあぶり出し」です。
ここでは、解決すべき問題や課題を、より具体的なイメージへと変換させるために、“分かりやすい問い”を設定します。
今回の事例で言うところの「向こう一年間で、A社をI県のトップ企業にするためには」です。
この問いが明確でないと、間違った方向性で仮説を構築してしまい、議論そのものが無駄になってしまう恐れがあります。
今回の事例で考えると、J社員〜M社員までの意見は、設定した問いに対して直接的に効果が得られる施策ではありませでした。
それらは、現場のスタッフが行うべき性質のごくごく業務的な内容にすぎず、停滞している成長率を回復させ、ナンバーワンを目指す戦略とは言えないでしょう。
それぞれが問いを正しく理解していないと、このように、仮説の段階で方向性そのものに対する勘違いが生じてしまいます。
また、今回の事例では、問いそのものに問題があったとも考えられます。
「向こう一年間で、A社をI県のトップ企業にするためには」という問いは、直接的ではありますが、短い期間に限定してしまっていることもあり、得られる意見がすぐに効果が得られる施策(日常業務に密接したもの)に偏ってしまうか可能性が高いのです。
問題のあぶり出しをする際には、問いの設定にも十分に気を使うようにしましょう。
<ステップ2.問題への対処法として仮説を構築する>
問題をあぶり出し、的確な問いを設定したら、次は仮説を構築していきます。
仮説を構築する際には、「事象→一般論→結論(仮説)」というステップで着想を得る「演繹法」や、「複数の事象から共通項を発見→結論」という発想の「帰納法」を活用しましょう。
いずれも、物事を論理的に考えるための基本テクニックですね。
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