現状把握の基本2(切り口と切り方) その1
【分析対象を多面的に見る】
ビジネスの現場では、眼前の課題解決に向けたアプローチをする際に、考えうる要素(原因)をモレなくダブりなくピックアップするMECEの思考が大切であることはすでにご説明しました。
そのために活用できるのが、さまざまな種類のフレームワークでしたね。
もっとも、何も考えずにフレームワークを使って現状を把握しているだけでは、ビジネスの本質を見失ってしまう可能性があります。
つまり、「何のための現状把握か?」「最終的にどんな解決策が前提としてあるか?」など、原因と結果から派生するビジネスを前に進めるための根本的な発想ですね。
シンプルに考えれば、会社の利益があがって、企業理念やビジョンに沿った成長ができれば、企業としてはそれがベストです。
付随する要素として、社会的な貢献や影響力の増大なども望ましいものではありますが、事業が継続してこそのことでしょう。
そういった発想が根本になければ、いくらMECEを実践しようとも、フレームワークを活用しようとも、いずれは方向性を見失ってしまう恐れがあります。
その点に注意しながら、今回は現状把握における「分析対象を多面的に見る方法」について考えていきましょう。
【「切り口と切り方」】
ある事象を多面的に見るためには、「切り口と切り方」を意識することが大切です。
たとえば、売上低迷の理由を探っている場合に、切り口というのは「顧客層」や「顧客数」、あるいは「利益率」という“分析の入り口”のことです。
いっぽうで切り方というのは、顧客層の「年齢別」、「世代別」、あるいは「属性別」などの“分類方法”のことですね。
とくに、切り口には大きく次の3つの方法があります。
・フレームワークによるMECE
フレームワークを活用すれば自ずとMECEが実践できますが、その際に「このフレームワークはどういった切り口で考案されているのだろう?」という視点をもつことが大切です。
たとえば「過去・現在・未来」という時系列で分けられるフレームワークもあれば、「自社・他社・市場」のように取り巻く環境で分類しているものもありますね。
フレームワークからさまざまな切り口の種類を学び取るようにしましょう。
・数字を意識する
また、数字を意識することが新しい切り口につながることもあります。
会社の収益を考えた場合でも、売上からコストを差し引いた「利益」なのか、はたまた単価と販売個数をかけあわせた「売上」なのか、あるいは「株主資本利益率(ROE)」などの指標も考えられるでしょう。
・過程を意識する
同様に、物事のプロセスを考えることが、切り口を見つけるきっかけとなります。
クレームが発生した原因を「製造現場」に見いだすのか、はたまた「販売方法」や「接客態度」などに求めるのかによって、多面的に問題解決へとアプローチすることができます。
切り方に関して言えば、ただ細かく分けるのではなく、より意味のある、あるいは意味のありそうな分類方法を模索することが大切です。
たとえば、年齢別の切り方を考えた時に、「10代・20代・30代」や「未成年者・成人1(20〜39歳)・成人2(40歳〜)」などに分類するのは意味がありそうですが、「0〜30歳・31〜60歳・61歳〜」のように分類しても、結果として「だから何(So What)?」となってしまうでしょう。
そうならないためには、「なぜその切り方をしたのか?」や「どういった仮説を前提とした切り方なのか?」を、論理的に説明できるようにすることです。
ビジネスの基本が相手を説得することにあるのですから、分析過程でも論理をおろそかにしないようにしたいですね。
もっとも、分類の過程においては、とにかく細切れにしてみることも大切です。
煮詰まる前にまず細分化し、その分け方に理由があるかどうかをあとから検討してみるのも良いでしょう。
思考の方向を固定しないことが大切です。
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