現状把握の基本1(MECE) その1
【現状把握の必要性】
目の前の状況に対して、直感的に行動しているだけでは、望ましい成果を得続けることはできません。
こと複雑な要素がからみあうビジネスの現場においては、現状の正確な把握が欠かせないのです。
「売上が上がらない」「コストが高止まりしている」「営業成績が伸び悩んでいる」「新興企業にパイを奪われている」。
そのような諸問題は次から次へと発生します。
もし現状を正しく把握しなければ、対策は行き当たりばったりになってしまいますね。
当然、得られる結果もマチマチです。
ビジョンや志をベースにした意思決定には、目に見えないブレが生じることもあります。
指示を受ける部下、あるいは検討している取引先は、そうした対応をどう思うでしょうか。
組織として明確な指標を打ち出さなければならない以上、行動や意思決定の過程には一定の基準が必要です。
場合によっては、それがマニュアルのような役割を果たすこともあるかもしれませんが、大切なのは対応までの思考過程です。
なかでも、現状を正確に把握をするための方法として活用できるのが、これからご紹介する「MECE」です。
【MECEとは】
MECEはMutually Exclusive and Collectively Exhaustiveを省略したもので、日本語に直すと「モレなくダブりなく」という意味になります。
ちなみに「ミーシー」もしくは「ミッシー」と発音されるようです。
各種コンサルティングファームでも実際に活用されている分析方法ですね。
現状に対して見落とし(モレ)がないか、あるいはピックアップした要素の中に重なり(ダブリ)がないかをチェックすることで、正確に現状を把握することができます。
現状が俯瞰できてはじめて、対応策を講じることができるようになるのです。
ただし、MECEの概念を知っているだけでは、それを使えることにはなりません。
たとえば、一般的には次のようなミスが生じやすいとされています。
・モレなしダブリあり
→すべての要素をピックアップすることはできているが、分類方法その他に問題があるため重なりが生じている状態です。
・モレありダブリなし
→分類は重なりなくできているが、すべての要素をピックアップできていない状態。
・モレありダブリあり
→すべての要素をピックアップできていないばかりか、分類もできておらず、重なりがある状態。
また、MECEの概念を応用して、フレームワークとして活用できるようにしたものに「ロジックツリー」や「マトリックス分析」があります。
これらを活用すれば、毎回一からMEMCを行う必要がありませんので便利ですね。
【例題】
それでは、例題を通じてMECEの理解を深めていきましょう。
<例>
直接営業を強みとしている人材関連のベンチャー企業T社は、新規顧客の開拓が進んでいないという問題を抱えていました。
このままでは会社の存亡に関わると判断した社長は、営業部のAマネージャーを呼び、対策を講じるように命じました。
社長からの指示を受けたAマネージャーは、さっそく営業メンバーを全員集合させ、緊急会議を行いました。
ほどなくして集まってたメンバーはB係長、C主任、Dさんの3人。
営業部はAマネージャーを入れて全部で5人なので、あと一人足りません。
どうやら、最後の一人であるEくんは早朝からアポイントがあって出先にいるとのこと。
Aマネージャーは、仕方なくEくんには後から合流するように命じ、会議をスタートさせました。
会議の冒頭、社長から伝えられた現状を報告したAマネージャー。
それに対する各自の意見は次のとおりです。
・B係長
当社は直接営業を強みとしている。
最近はちょっと皆がタルんでいるようなので、ここらで一つ、毎日の訪問件数を倍にしてみてはどうか。
・C主任
競合であるS社はインターネットを使って新規顧客を獲得していると聞く。
当社もインターネットに力をいれてみてはどうか。
・Dさん
当社は広告からの反響が少なすぎる。
無意味なバラマキは意味ないが、パンフレットやダイレクトメールはもっと活用できるのではないか。
それぞれ、もっともらしい意見がでましたが、Aマネージャーはどうにもピンとこず、モヤモヤした感情を抱いていました。
そこに、遅れてやってきたEくん。
あいさつもせず、ホワイトボードを見て開口一番こう言いました。
「それぞれが好き勝手に意見しているだけでは、時間のムダですよ。第一、現状に対する理解が各々でバラバラじゃないですか。対策を話し合う前に、まずは状況を分析して認識を共有できるようにしましょうよ」
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