ブランド戦略②(ブランド・エクイティ) その1
【ブランド・エクイティとは】
多くの人に認知され、高い評価を得ているブランドは、それだけで企業にとって価値があります。
強いブランドがあるだけで、機能や性能、価格、類似商品との差別点などをくり返し顧客に訴えなくても、自然と商品の購入に至る可能性が高いからですね。
つまり、企業の視点からすると、ブランドそのものに資産価値があると言えます。
このような、ブランドに付随する資産価値のことを「ブランド・エクイティ」と言います。
製品そのものに着目したハード面での優位性ではなく、イメージやネーミング、その製品を連想させるキャッチフレーズなど、ソフト面から製品の売上を左右させるという意味において、資産的価値があると考えられているのです。
もっとも、ブランド力というのは曖昧な概念でありますし、比較可能な製品ごとのスペックとは異なり、目に見えないものであることは事実です。
だからこそ、いくらブランドに資産価値があると分かっていても、これまではそれを資産として計上することはできませんでした。
しかし最近では、そうした状況に変化が表れているのです。
たとえば、現在ではブランドの売買が日常的に行われています。
これはまさに、ブランドそのものに資産価値としての評価がなされていることを意味しています。
製品そのものではなく、ブランドごと買収する事例が多数散見されているのは、ブランドが収益を生む要となっていると認められている証拠なのです。
また、ブランドだけでなく、人材やノウハウの蓄積、スキル、あるいは技術力なども企業の評価を高める要因となっている背景があります。
これらの要素もブランドと同様に目に見えるものではありませんが、企業の業績や製品の売れ行きを左右していることには違いありません。
だからこそ、そうした要素も資産価値として計測しようという動きが高まっています。
話をブランドに戻しましょう。
ブランド価値を計上する必要性は理解していても、ブランド・エクイティを正確に計測するのは難しいのが現状です。
そこで、ブランド・エクイティを構成する複数の要素から、ブランド力の総量を推し量ってみることにしましょう。
ブランド・エクイティは、おおむね次の4つから構成されています。
・ブランド認知(Brand Awareness)
・知覚品質(Perceived Quality)
・ブランド連想(Brand Associations)
・ブランド・ロイヤルティ(Brand Loyalty)
個別の要素に関する詳しい説明は後述するとして、ここでは簡単にそれぞれの内容を解説しておきます。
まず「ブランド認知(Brand Awareness)」ですが、これは「そのブランドがどれだけ社会的に認知されているか」ということです。
認知と言っても「誰に」「どのように」「どの程度」知られているかによって評価は異なりますが、そもそも一般に周知されていなければブランドとしての価値がないことは明らかでしょう。
2番目の「知覚品質(Perceived Quality)」ですが、これは「他の製品と比較した場合に知覚できる品質や性能」のことです。
あのブランドは品質が優れている、性能が安定しているなどの評価がなされているのは、そもそもそのブランドの知覚品質が高いということを意味しています。
「ブランド連想(Brand Associations)」とは、購買シーンやあるいはそれ以外の場面において、「いかにそのブランドを連想させるものがあるか」ということです。
キャラクターやキャッチコピーなどはその代表的なものですが、パッケージデザインやロゴなど、ブランドを連想させるツールは多岐にわたります。
最後は「ブランド・ロイヤルティ(Brand Loyalty)」です。
ブランド・ロイヤルティとは、「そのブランドがもつ顧客への訴求力」、あるいは「忠誠心や執着心」と言い換えても良いでしょう。
そのブランドだったら何も考えなくても購入したいという人がいれば、その顧客は企業に安定的な収益をもたらしてくれる「ロイヤルカスタマー」となります。
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