マーケティングミックス(4P分析) その2
<例>
各種商業施設や娯楽施設向けに、据え置きタイプのゲーム機を企画・開発・販売しているA社は、若者の深刻なゲーム離れを受けて、新たな市場の開拓を模索しています。
それというのも近年では、パソコンやスマートフォンの普及によって、外出先でゲームを楽しむ人口が減っているのです。
とくに、これまで市場を牽引してきた若者が顕著です。
これまでのようにゲーム機の設置が進まなければ、A社は生き残ることはできません。
競合他社の中には、家庭用のゲームを開発している企業やアミューズメント施設と業務提携しているところもありますが、その成果はあまり芳しいものとは言えなそうです。
A社に関しても、業務提携の話がいくつか舞い込んできましたが、現状を考えれば前向きに検討することは難しい状況です。
そこでA社では、新しくマーケティング部署を発足させました。
部署のリーダーには、かつてさまざまなゲーム機をヒットさせてきた、企画部のエースであるHさんが任命されました。
Hさんは、さっそくマーケティング部署のメンバーを集め、長時間のミーティングを行うことにしました。
議題は、「A社が新しく参入できる市場はどこか」です。
そもそもA社の製品は、各方面から好評でした。
往年のビデオゲームからメダルを使用した子供向けのゲームは、さまざまな施設に設置されており、多くの人に認知されています。
その結果、会社名についても広く世間に周知されており、イメージも悪くありません。
つまり、会社というブランドについては、申し分のないほど評価されているのです。
その点に着目すれば、会社名を全面に打ち出した新市場への参入も難しくありません。
ミーティングの結果、出されたアイデアには次のようなものがありました。
・スーパー銭湯
・観光施設
・駅の構内
・空港
・各家庭
・ショッピングモール
いずれにしても、すでに導入している他社がいるか、あるいは既存の設置場所の延長です。
これでは、新市場を開拓するという当初の目的は果たせないでしょう。
Hさんが考えているのは、業界に新しい風を吹かせるようなイノベーションです。
そこでHさんは、もう一度、自社の強みについて考えてみることにしました。
ポイントは「広く認知されていること」「優れたゲーム性」「ノウハウの集積」です。
その結果、浮かんだアイデアが、「ダーツバーの展開」でした。
そもそも、A社にはゲーム機を開発するシーズがあります。
また、会社そのものが知られているということもあり、社名を前面に打ち出して自ら店舗を運営することにより、自社のゲーム機を売り込むことなく設置することができます。
その結果、価格設定や流通網について苦慮することなく、店舗そのものが会社のプロモーション活動の一環になり、製品を新たな市場に投入することができるようになりました。
<解説>
マーケティングミックスを考えるにあたっては、必ずしも、それぞれの要素を個別に検討する必要はありません。
Hさんが行ったように、自社の強みを考慮することによって、製品、価格、流通、プロモーションがすべて自動的に決定するような市場への参入も可能となります。
これは、製品だけ考えても、価格だけを考えても出てこない発想でしょう。
【4Pとマーケティングミックスの実践】
それでは最後に、4Pそれぞれの戦略について、内容を確認しておきましょう。
<製品戦略(Product)>
「製品戦略」とは、標的市場に対して、どのような製品を投入するべきかを検討することです。
顧客のニーズやウォンツを考慮しつつ、コンセプトを設定し、最終的に機能やスタイルへと落としこんでいきます。
<価格戦略(Price)>
「価格戦略」においては、製品をどのくらいの価格で販売するかを検討します。
価格には、顧客への価値表示と利益の創出という二つの側面がありますので、いずれにおいても満足できる水準で設定する必要があります。
<流通戦略(Place)>
「流通戦略」では、製品をどのように最終消費者に届けるのかを検討します。
効率性だけでなく、確実に消費者へ到達させる流通経路を模索することが大切です。
<プロモーション戦略(Promotion)>
「プロモーション戦略」とは、いわゆる販売戦略です。
広告からPR、あるいは広報など、幅広い方法でプロモーションを展開することにより、広く社会に認知させることが可能となります。
事例のように、店舗そのものを会社のPRに活用するのも有効でしょう。
【まとめ】
・マーケティングミックスとは、商品を売るために必要な要素を適切に組み合わせること
・マーケティングミックスでは、「製品戦略(Product)」「価格戦略(Price)」「流通戦略(Place)」「プロモーション戦略(Promotion)」の「4P」を検討する
・4Pはそれぞれ個別に決めるのではなく、相互の関連を考えることが大事
・自社が持つシーズや強みに着目することで、4Pが決まることもある
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