価格戦略③(価格設定手法) その3
<2.需要志向の価格設定>
需要志向の価格設定は、「知覚価値(心理的)価格設定」と「需要価格設定」に分類することができます。
消費者が価格に対してどのような認識をもっているのかを基準にするだけでなく、それぞれのセグメントに応じた需要を勘案して価格を決めるという方法もあることを意識しておきましょう。
また、顧客の需要をどのように把握するかによっても捉え方は異なり、価格に反映されます。
?知覚価値(心理的)価格設定
顧客がその製品に対して、どのような価格が適切だと認識しているのか。
そういった視点から価格を設定する手法が「知覚価値(心理的)価格設定」です。
入念なマーケティング・リサーチによって、あらかじめ「売れる価格帯」を算出した後、必要であれば原価を下げるなどの措置をとります。
顧客にとってその製品が必要だと感じられており、差別化ができており、かつ競争が少ない状況で大きな成果を得られる手法です。
?需要価格設定
市場セグメントごとに需要を把握し、それぞれ異なる価格を設定する手法が「需要価格設定」です。
顧客層、時間帯、場所などの違いによって、最適な価格を設定します。
場合によっては、ライトユーザーに対して無料で提供しつつ、ヘビーユーザーに対しては有料版を提案するなどの思い切った価格設定をすることによって、効果的に販売を促進することも可能となります。
たとえば、パソコンソフトにおける安価なお試し版と、さらに便利に使いたい方向けの高価な有料版などですね。
戦略的な価格設定によって製品の売れ行きだけでなく、企業活動全体にも影響するという一例です。
<3.競争志向の価格設定>
競争志向の価格設定は、「入札価格設定」と「実勢価格設定」に分類することができます。
どの業種・業界においても、いずれかを選択的に取り入れることができるということではなく、それぞれの性質によって使い分けているのが一般的です。
ただ、常識にとらわれるのではなく、時代や環境にあわせて価格設定も変更していくことも大切でしょう。
固定的な価格設定によって、業界全体が流動性を失っているという場合もあります。
?入札価格設定
入札によって各企業に価格を提示させ、その中からもっとも低い価格で提案した企業と契約するという方法が「入札価格設定」です。
買い手にとっては、もっとも安価な価格で購入することができる反面、技術力やサービスの質といった部分で劣っている企業を選んでしまうことも少なくありません。
交渉によって価格を決められない場合や、市場メカニズムによって決められない場合に用いられます。
?実勢価格設定
競合他社がどのような価格をつけているかということを判断基準とするのが「実勢価格設定」です。
業界によっては、最も影響力のある企業がプライスリーダーとなり、他社がプライスリーダーの設定した価格に追随するという構図があります。
もっとも、小規模の企業が乱立している場合には、お互いが牽制し合いながら価格が決まることも多く、価格競争になれば値段が下がり買い手にとってより有利な値付けがされることもあります。
【まとめ】
・価格設定の検討材料は数多くあれど、最終的に決まらなければ意味が無い
・代表的な価格設定手法は次の3つ
?「原価」志向の価格設定(「コストプラス価格設定」「マークアップ価格設定」「ターゲット(目標)価格設定」)
?「需要」志向の価格設定(「知覚価値(心理的)価格設定」「需要価格設定」)
?「競争」志向の価格設定(「入札価格設定」「実勢価格設定」)
・価格設定における判断基準があることで、意思決定が容易になる
・「原価」「需要」「競争」の3要素を、それぞれどのようにとらえるかによって、価格の決まり方にも変化が生じる
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