競争戦略②(リーダー企業の戦略) その3
【リーダー企業の3つの戦略】
それでは、リーダー企業がとるべき3つの戦略について、より詳しく解説していきましょう。
すでにトップ企業としての地位を盤石にしている会社はもちろんですが、これからリーダー企業を目指す会社、あるいは新しい市場に参入することでトップの地位に君臨することになる企業においても、理解しておくべき基本戦略になります。
<市場規模の拡大>
1つ目は「市場規模の拡大」です。
どの企業においても、市場規模が拡大することによって、収益増大というメリットが得られる可能性はありますが、ことリーダー企業においてはそれが顕著です。
理由は単純で、シェアを維持したまま市場が大きくなれば、必然的にそのトップに君臨している企業の収益も最大化するからですね。
シェアが大きいまま市場が拡大すれば、比例して利益が伸びるのは当然のことです。
また、規模の経済や経験効果によって、利益率も増加します。
市場が大きくなり、社会に対するインパクトが大きくなればなるほど、それだけ影響力も増すことでしょう。
そうなれば、知名度も高まり、新しいことに挑戦する際にも有利になります。
だからこそ、リーダー企業は率先して市場規模の拡大を図るべきなのですね。
市場規模を拡大するためには、製品やサービスの新しい利用方法を提案したり、これまで想定していなかった顧客にまでターゲットを広げたり、あるいは使用頻度をあげるための工夫など、さまざまな方法が考えられます。
どれかひとつを選択するのではなく、複数の手法を同時並行的に行うことによって、少しずつ市場規模の拡大を目指すのが無難でしょう。
実際、市場はそう簡単には拡大しないので、長期的な視点をもつことが大切です。
自社の利益を考えて市場の拡大を模索するとともに、リーダー企業はその立場的な役割としても、市場拡大に尽力しなければなりません。
もしリーダー企業が率先して市場の拡大を行わなければ、業界の勢いが落ち込んでしまう可能性もありますし、なにより業界全体の秩序にも影響があるかもしれないのです。
リーダーとしての役割を果たさない企業は、やがて顧客からも見放されてしまうということも十分に考えられます。
ただ、いくら市場の拡大を目指すとは言っても、とるべきでない手法も存在しています。
たとえば、若年層の取り込みを模索して低価格路線に舵をきるなどしてしまえば、やがて市場全体の収益が悪化してしまうでしょう。
競争が激化し、最終的には他の代替する業界や企業に地位を脅かされてしまうかもしれません。
他の業界をも巻き込んだ消耗戦になれば、シェアがもっとも大きいリーダー企業が一番の打撃を受けることになるでしょう。
<シェアの拡大>
2つ目の戦略は「シェアの拡大」です。
すでに業界内ではシェアがトップですが、伸ばせる可能性があるのなら、積極的に伸ばしていくべきでしょう。
収益の面でも、影響力の面でもさらに有利な立場になれる可能性があります。
ただし、注意しなければならないのは「大きくなりすぎる」ことです。
業界内でほとんどのシェアを占めることになれば、それだけで独占禁止法に抵触する可能性もありますし、他の業界や団体からもいい目で見られることはないでしょう。
消費者もまた、そうした業界には嫌悪感を抱く可能性があります。
そうした点も考慮しつつ、時間をかけてシェアを大きくするのが得策と言えるでしょう。
<シェアの維持>
3つ目の戦略は「シェアの維持」です。
市場を最大化させることで得られるうまみは、シェアが維持できているからこそのものです。
いくら市場が大きくなっても、現在のシェアを維持できなければ、利益をあげることはできません。
「市場拡大にばかり注力していたら、いつの間にかシェアを奪われていた」では困ってしまいますよね。
シェアを維持するには、「参入障壁を高める」「報復の脅威を高める」「競合他社の得意分野に攻め込む」などの施策が有効です。
特許や規模の経済をうまく利用したり、あるいは体力を存分に発揮して攻勢を強めてもいいでしょう。
いずれにしても、ただ守りを固めるのではなく、積極的に拡大しようとする姿勢が重要になります。
以上がリーダー企業の戦略ですが、これからリーダー企業を目指す会社は3つの基本戦略の他に、「製品」や「市場」についても意識するべきでしょう。
いくらトップになれるからといって、流行だけで伸びている市場に参入したり、ブームの製品を取り上げることは、長期的な成長という観点からはいただけません。
需要が底打ちしてしまえば、市場そのものが消えてしまうという可能性を、あらかじめ考慮しておきましょう。
【まとめ】
・「リーダー企業」とは、業界におけるトップ企業のことを指す
・リーダー企業は、「規模の経済」「認知度」「交渉力」などの点でメリットがある
・リーダー企業がとるべき戦略は次の3つ
・市場規模の拡大
・シェアの拡大
・シェアの維持
・リーダ企業を目指す際には、製品や市場についても考慮するべき
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