コミュニケーション(プロモーション)戦略⑦(レピュテーション・マネジメント) その1
【レピュテーション・マネジメントとは】
コミュニケーション戦略の最後は、企業の評判や名声を意味する「レピュテーション」の管理について考えていきましょう。
いわゆるレピュテーション・マネジメントです。
いかに製品やサービスの質が優れていることを伝えても、企業そのものが信用できなければ、顧客はその製品やサービスを購入することはありません。
つまり、効果的なコミュニケーション戦略を構築して、マーケティング・ミックスとともに最適化しても、企業のレピュテーションが悪い方向に向いてしまえば、企業の成長はおろか、企業活動全般を行うことすら難しくなってしまうのです。
社会からの評価や評判、あるいは名声というのは、それだけの力をもっているのです。
実際に商品を買う場面を考えてみてください。
日用品でも食品でもいいのですが、テレビのニュースや新聞などで不祥事が報じられた企業の製品を、自ら率先して購入しようと思うでしょうか。
とくに、企業の瑕疵(かし)に敏感な日本の消費者の場合、そうした報道があるだけで買い控えが起こるのも実際問題として多々あります。
とくに最近では、インターネット上でレピュテーションに関してマイナスに働く情報が拡散し、企業の業績を圧迫している例もあります。
信ぴょう性の低い掲示板サイトなどの情報ならまだしも、クチコミや比較サイトなどでそうした情報が広がってしまうと、企業が大打撃を受けてしまうことも少なくありません。
また、とくにインターネット上で活躍しているインフルエンサー(影響力のある人)の発言いかんによっては、その商品が売れたり、あるいはまるで風評被害のように売れなくなるということもあります。
企業はそうした現状を加味しつつ、より適切なレピュテーション・マネジメントを実施しなければならないのです。
もちろん、企業としては予期できない不祥事や事件・事故も発生することがあるでしょう。
製品の製造工程に見過ごしていた問題点があったり、食中毒などの事件を起こしてしまったり、あるいは社内の人間がその企業のレピュテーションを下げるためにワザと事件を起こすということもあります。
ただ、そのような事態に対しても、レピュテーション・マネジメントの一環として、企業は適切な対応をとらなければなりません。
平常時から顧客と良好なコミュニケーションを築いておく「平常時のコミュニケーション」とともに、緊急事態に対処するための「危機管理コミュニケーション(クライシス・コミュニケーション)」にも力を入れなければならないのです。
もし不祥事が発生した場合に、企業が適切な対応をとらなければどうなるでしょうか。
かつては報道陣に対して怒鳴り返してしまったり、あるいは開き直るという企業経営者もいました。
しかし、そうした企業は総じてレピュテーションを大きく失墜させてしまったことは言うまでもありません。
そして、一度失ってしまったレピュテーションを取り戻すのは、時間も労力も、そして多額の費用もかかります。
反対に、不祥事や事件・事故が発生してしまっても、一貫して真摯な対応を心がけることによって、早期に信頼を回復させた事例もあります。
まさにピンチをチャンスに変えたのです。
対応いかんによっては、かつてのレピュテーションよりもより企業イメージが向上することもあるということを理解しておきましょう。
【例題】
それでは、例題を通してレピュテーション・マネジメントについてより深く学んでいきましょう。
企業活動のなかでは、ときに企業側の思惑とは大きく異なった報道がメディア等でなされる場合があります。
そうした操作できない事態に対し、いかに対応するかがその企業の懐の深さを示しています。
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