カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)の実施と導入ポイント その1
【カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)の実施】
市場および顧客動向の変化によって、企業は、これまで行ってきた「顧客創造」から「顧客維持」へと舵を切らなければならなくなりました。
具体的には、1対多の「マス・マーケティング」ではなく、1対1による「優良顧客の囲い込み」を行う必要がある、ということです。
そうしなければ、成熟化した市場の中で成長していくことはできません。
顧客維持の発想から、顧客生涯価値(ライフタイムバリュー)の提供を目指すのが「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)」の考え方です。
優良顧客がもたらす利益は多大であり、さらに新規客を獲得するよりもより低価格でマーケティング施策を行うことが可能。
つまり企業にとって、重点的に資源を投資する先となります。
では実際に、どのような手順でCRMを行えば良いのでしょうか。
プロセスは以下のとおりです。
1.顧客情報を収集して、顧客のデータベースを構築する
2.優良顧客の選別を行う
3.ターゲット顧客に対して、重点的に製品やサービスを提供する
4.顧客を維持するための施策を通じて、収益力アップを実現する
とくに「3.ターゲット顧客に対して、重点的に製品やサービスを提供する」「4.顧客を維持するための施策を通じて、収益力アップを実現する」に関しては、製品戦略やコミュニケーション戦略の項で詳しくお話しました。
そこで今回は、「1.顧客情報を収集して、顧客のデータベースを構築する」「2.優良顧客の選別を行う」に関して詳細をご紹介しましょう。
<1.顧客情報を収集して、顧客のデータベースを構築する>
CRMを実践する場合には、まず、顧客情報を収集しなければなりません。
自社の顧客がどのような属性なのか、あるいはどのような傾向があるのかを分析し、データベースとして管理することによって、どの顧客に注力するべきかが見えてきます。
ただ、あらかじめ情報収集を仕組み化しておかなければ、効率よく集めることはできません。
たとえば、顧客と直接接することになる営業パーソンや接客担当、店舗スタッフ、あるいはPOSデータなどを、顧客情報を収集するために使用すると周知させておかなければ、情報の抜けや漏れが生じてしまう可能性があります。
CRMの目的となる「優良顧客の囲い込み」という観点から、情報収集体制を整えることが先決です。
場合によっては、経営サイドの意見ばかりではなく、現場の意見も聞かなければならないでしょう。
顧客情報の収集にばかり気を取られ、本来の接客業務がおろそかになってしまえば本末転倒です。
また、さまざまな部門にまたがる顧客情報を、マーケティング部門が一括管理できるようにしておくことも忘れてはなりません。
<2.優良顧客の選別を行う>
次に、収集した顧客情報を参考にしつつ、顧客の選別を行います。
具体的には、それぞれの顧客をランク付けして、メインターゲットを見定めるのです。
CRMが優良顧客との長期的な関係を築いていくことを目的としている以上、この作業を避けて通ることはできません。
かつては「お客さまは神様」というような考え方も支持されていましたが、一緒くたにしてしまうことは、マーケティング上とても非効率なのですね。
自社にとってのロイヤルカスタマーが判明すれば、より経営資源を効率的に配分することができます。
もちろん、他の顧客をまったく無視していいということではなく、あくまでも優先順位あるいはランク付けによって区分することで、限られた資源を適切に活用するということが目的です。
現場レベルで考えるなら、対応を大きく変える必要はない場合もあることでしょう。
顧客の選別によく用いられるのが「RFM分析」です。
RFM分析で使用する指標は次の3つです。
・最新購入日(Recency)
・購入頻度(Frequency)
・購入金額(Monetary)
「最新購入日」とは、もっとも直近で購入した日にちのこと。
「購入頻度」とは、その顧客がどのくらいの頻度で購入するか。
そして「購入金額」は、一定の期間内や1回あたりにどのくらいの購入金額となるか、という指標です。
これらをもとに、顧客のランク付けを行います。
それぞれの指標の優先順位に関しては、企業や業種ごとに異なるでしょう。
日用品を取り扱っている企業では、購入頻度が重要となりますし、購入回数がそもそも少ない贅沢品に関して言えば、どのくらいの金額のものを購入するのかということが重要になるはずです。
いずれにしても、個々の企業における優先順位を決めておくことが大切ですね。
【例題】
それでは、例題をとおして、CRMの実施についてより深く学んでいきましょう。
CRMを重要視するようになると、顧客に対するマーケティングが大きく変化することになります。
最初のうちは戸惑うことも多いかもしれませんが、優良顧客との長期的な関係を構築していくという発想が根底にあれば、方向性を見失うということはないでしょう。
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