製品戦略⑤(プロダクトエクステンション) その2
<例>
主に乾麺の製造と販売を行っているA社は、家庭向けインスタントラーメンの販売をさらに加速させるために、既存製品のブラッシュアップを図っていました。
とくにここ最近では、新しい製品を発売してもなかなか定着せず、開発費用ばかりがムダに垂れ流されている状態です。
このままでは、将来的に経営を圧迫しかねません。
そこでA社の社長であるFさんは、思い切った行動にでました。
これまでの商品開発部を分断し、商品開発と既存製品の改良のみを行う部署とに分けたのです。
そうすることによって、必要なコストを削減し、さらには既存製品のさらなる売上アップを目指そうと画策したのです。
中小企業であるA社の体力を考えても、懸命な判断でした。
既存製品の改良を行う部署では、マーケティング担当者もチームメンバーに加え、大々的な「プロダクトエクステンション」を実施することになりました。
A社には、ロングセラーとなっているインスタントラーメンがありますので、それを改良することによって、新しいブームを巻き起こそうという思惑がありました。
たしかに、インスタントラーメンは大衆に飽きられている傾向があります。
そこで改良チームでは、まず、ターゲット市場を再定義することにしました。
これまでのターゲット市場である「家庭」は、たしかに魅力的な市場ではありますが、これ以上の伸び率は期待できません。
そこで目をつけたのが企業や法人などの「組織」という市場でした。
組織単位でインスタントラーメンを消費してもらうことによって、新しい需要を引き出そうと計画したのです。
果たして、その思惑は成功しました。
新しくA社が開発した「お湯を使わないインスタントラーメン」は災害時の備蓄用として、また手っ取り早く食事ができるということで、企業が社員に提供する朝食として受け入れられたのです。
健康的なビジネスパーソンを想起させるタレントを起用したCMや、朝食を食べることによる仕事の効率化などの啓蒙キャンペーンも行い、総合的なマーケティング活動が功を奏した格好です。
また、改良した製品が企業に受け入れられたことによって、これまでのインスタントラーメンが各家庭の朝食としても浸透するようになりました。
その結果を受けてA社では、栄養バランスなども考慮した新製品を開発する予定です。
プロダクトエクステンションの成功によって、業績だけでなく、A社そのものが元気を取り戻しました。
<解説>
プロダクトエクステンションは、既存製品の改良という手法を選択することによって、よりエコに企業業績を回復させる役割を担います。
新しい製品を開発することも大切ですが、すでにあるものを市場に適合させることによって、より経済的にイノベーションをおこすことも可能なのです。
資源を上手に活用するという観点からも、現代社会に合っているマーケティング手法と言えるでしょう。
【プロダクトエクステンションにおける3つの修正方法】
最後に、プロダクトエクステンションにおける3つの修正方法についてご説明いたします。
既存製品のどの部分を修正するのかによって、その後の売れ行きは大きく変わります。
基本的には、3種類の修正のいずれかだけを選択するというのではなく、どのようなバランスで修正するのかという点がポイントとなることでしょう。
<製品を修正する>
もっとも一般的なのが「製品の修正」です。
消費者のニーズがどのように変化しているのかを調査・分析し、それに合わせて修正を加えることによって、新しい価値を提供することができます。
<市場を修正する>
また、「市場の修正」も重要です。
かつてのターゲット市場がこれ以上広がらないと判断できた場合には、積極的に打ち出し方を変えていくべきでしょう。
新しい市場には、ライバルが少ない可能性もあります。
<マーケティング・ミックスを修正する>
最終的には、総合的な「マーケティング・ミックスの修正」を敢行することが大切です。
既存製品を改良し、新しい価格やサービスにて打ち出してプロモーションを行うことで、顧客の創出につながります。
【まとめ】
・どんな製品も、やがては衰退期を迎える
・「プロダクトエクステンション」とは、衰退期を迎えた製品をよみがえらせる手法
・プロダクトエクステンションには、次の3つの工程がある
?ターゲット市場の再定義
?再定義した市場に適合するように、製品を改良する
?新たな市場と製品に合わあせたマーケティングを展開する
・「製品」「市場」「マーケティング・ミックス」のどれを修正するかによって、顧客への訴求力は変化する
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