ブランド戦略④(ブランドの拡張と浸透) その3
【ブランドの浸透】
ここまでのお話で、ブランドをいかに拡張するかについてはご理解いただけたかと思います。
ただ、ブランドは拡張する施策だけがすべてではありません。
ブランドを構築し、拡張する以外にも、ブランドをより根強く「浸透」させる活動が必要となります。
そうすることによって、ブランドが持つ影響力をさらに高められます。
では、ブランドを浸透させるためにはどのような方法があるでしょうか。
一般的なものとしては、継続的な広告やPR活動、キャンペーン、WEBサイト、イベントなどがあります。
ただ最近の傾向としては、ソーシャルメディアなどを中心に顧客が主体の情報配信が増えているという実態があります。
これは、ブランドを浸透させる場合にも意識しなければなりません。
たとえば、広告やPRによって顧客にプラスのイメージを与えたとしても、それが必ずしも大衆の意見を反映しているとは限りません。
もしかしたら、実態はクチコミによってマイナスのイメージが蔓延しているかもしれないのです。
そのときに、過度な装飾を施した広告を配信しても、むしろ逆効果でしょう。
結局のところ、ブランドのイメージを企業側が完全に操作することはできないのです。
顧客をはじめとする一般大衆の意見が強く消費に反映される時代だからこそ、正しいブランドについての理解と、等身大のイメージを重要視しなければなりません。
それによって、企業から顧客に対しての一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションとしてのブランド浸透が可能となるのです。
そのような等身大のブランドイメージを理解するために活用できるのが「ブランド・ステートメント」です。
ブランド・ステートメントとは、ブランド創設の当初から考えられているブランドのミッション、価値観、あるいはポジショニングなどを明文化したものです。
理念やビジョンを掲げたものから、ロゴやキャッチコピーの細則までを規定したものまでさまざまです。
ブランド・ステートメントを設定することそのものに大きな意味はありません。
むしろ、社員やステークホルダーに浸透していない企業理念のようになってしまうのなら、設定する意味は無いと言えるでしょう。
大切なのは、いかにそのブランドの価値観を共有できるかということです。
まずは社員からスタートして、株主、そして顧客へと浸透させるようにしましょう。
【インターナル・ブランディングの実践】
ブランド・ステートメントを設定する意義にもつながる話ですが、最後に「インターナル・ブランディング」についても簡単に触れておきましょう。
インターナル・ブランディングとは、社員やステークホルダーに対して、自社の理念や提供する価値などを浸透させることです。
ブランドを浸透させるためにブランド・ステートメントを設定するように、インターナル・ブランディングにおいても企業理念の明文化などを行います。
インターナル・ブランディングの必要性が問われる背景には、企業の社会的な関わり方に大衆の視線がそそがれていることがあります。
個人単位での情報配信が盛んに行われている昨今では、企業の広報部や営業担当者だけでなく、全社員が広告塔となってブランドを正しく伝えなければならないのです。
それが企業活動を支える根っことなるのです。
企業活動は、必ずしも販売だけではありません。
広報やPR活動はもちろんのこと、人材育成や採用に関しても、正しいブランド理解がなされていないと、一貫性を保てなくなってしまいます。
だからこそ、社員そしてステークホルダーに対してインターナル・ブランディングを行い、ブランド・アイデンティティを保たなければならないのです。
具体的な方法としては、社内でソーシャルなツールを活用したり、ブランドブックをつくるなどがあります。
また、定期的な研修やワークショップを開催するなど、コミュニケーションを通じてブランド認識を深める方法もあるでしょう。
いずれにしても、インターナル・ブランディングは必要なものだと理解し、積極的に活動することが大切です。
そのための経費もしっかりと捻出し、実際にどのような効果があるのかを、長期的な視点で計測する必要があります。
ブランドが社内で浸透しなければ、ステークホルダーはもちろん、顧客に浸透するということは考えにくいでしょう。
構築から拡張、浸透までの一連の流れには時間がかかりますが、それだけの恩恵があると理解して持続しなければなりません。
【まとめ】
・既存のブランドを拡張することで、企業は収益力を増強できる
・ブランド拡張のポイントは次の3つ
1.ブランド拡張がプラスの効果を生むか。マイナス要素はないか。
2.ブランド拡張によって、既存のブランドを補強するか。悪影響はないか。
3.他のより最適なブランド拡張機会はないか。製品カテゴリーは最適か。
・ブランド拡張は、次のような方向性も意識するべき
・同じ製品の異形態への拡張
・独自の原料や成分を利用した拡張
・使用シーンやカテゴリーを軸とした拡張
・同一の顧客ターゲットを対象とした拡張
・スキル、ノウハウ、ナレッジを転用した拡張
・便益や特徴を生かした拡張
・イメージからの拡張
・ブランドの構築、拡張とともに、社内外での浸透が大事
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