ブランド戦略④(ブランドの拡張と浸透) その1
【ブランドの拡張】
強力なブランドを育てることができれば、それだけで企業活動は大きく前進します。
製品やサービスを向上させること、あるいは広告によって広く顧客に周知させること、さらには類似する企業や製品カテゴリーにおいて激しい競争を繰り広げることなく一定の収益が得られると考えれば、それは明らかでしょう。
それだけに、ブランドを育成すること、あるいは社会から広く受け入れられるまでに成長させることは、大きな利益へとつながるのです。
また、ブランド・エクイティという観点からすると、そこからさらに「ブランドの拡張」によって、中心となるブランド効果を使い回すことが可能になります。
そもそもブランドの拡張とは、ある製品で確立されたブランドを他の製品やカテゴリーにも転用するというものです。
通常、いちからブランドを立ち上げ、社会的に周知させるのには多大な費用と労力、時間を必要としますが、すでにあるブランドを使用することで大幅な経費の削減につながるのです。
もっとも、成功しているブランドをそのまま他の製品やカテゴリーに使用するというのは考えものです。
いくら新規ブランドの立ち上げよりラクだからと言っても、当のブランドイメージを傷つけてしまったり、あるいは悪影響を及ぼすようなことがあれば本末転倒です。
また、ブランドを転用しても大した効果がないという可能性もあります。
そこで、ブランドを拡張する際のポイントについて確認しておきましょう。
押さえておくべきなのは次の3点です。
<ブランド拡張の3つのポイント>
1.ブランド拡張がプラスの効果を生むか。マイナス要素はないか。
2.ブランド拡張によって、既存のブランドを補強するか。悪影響はないか。
3.他より最適なブランド拡張機会はないか。製品カテゴリーは最適か。
既存のブランドからのその周知性・信頼性などの恩恵を得ようと、闇雲にブランドを拡張させてしまえば、思わぬ不利益を被ってしまう可能性があります。
たとえば、食品ブランドとして有名なロゴを化粧品に転用させたところで、化粧品に関しても優れた性能を発揮してくれるとは誰も思わないでしょう。
そればかりか、化粧品としては後発組として認識されてしまう場合もあります。
また、製品カテゴリーごとの相性についても考えなければなりません。
極端な話で言えば、化粧品のブランドを掃除用具のブランドに転用した場合、化粧品がもつ非日常的なイメージと掃除という日常的なイメージがマッチせず、望まれる効果は得られないでしょう。
それだけでなく、既存のブランドイメージを低下させてしまうこともあるのです。
そうした事態に陥らないために、あらかじめブランドを拡張させる方向性について理解しておきましょう。
ブランドを拡張させる場合の指針は次のとおりです。
<ブランド拡張の方向性>
・同じ製品の異形態への拡張
・独自の原料や成分を利用した拡張
・使用シーンやカテゴリーを軸とした拡張
・同一の顧客ターゲットを対象とした拡張
・スキル、ノウハウ、ナレッジを転用した拡張
・便益や特徴を生かした拡張
・イメージからの拡張
もちろん、これらのパターンはあくまでも大きな方向性でしかありません。
また、上記の指針に則って拡張させたとしても、必ずしもうまくいくとは限らないでしょう。
それでも、闇雲にブランドを拡張するよりは成功確率が高まるはずです。
いずれにしても、ブランドが希薄化しないように慎重に行うべきなのは変わりありません。
大切なのは、ブランドを拡張することによって、必ずしもメリットがもたらされるわけではないと認識しておくことです。
ブランドがもつそもそもの特徴を正しく把握することで、正しい方向性のもとにブランド拡張を行いましょう。
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