競争戦略①(競争戦略とは) その2
<例>
全国でコーヒーのチェーン店を展開しているA社は、ここ数年、業績が伸び悩んでいることに危惧していました。
マーケティングを駆使した戦略を立案し、それを愚直に実践しているのですが、結果はあまり芳しくありません。
このままでは、店舗数はもちろんのこと、規模を意識した戦略についても廃止しなければなりません。
社長のSさんは、業績不振が続いている原因を調査するために、外部のマーケティング会社に調査を依頼しました。
内部からではなく、外部から客観的にA社を観察することによって、業績が悪化している原因について探ろうとしたのです。
しばらくして、マーケティング会社は次のような結果を報告してきました。
報告書には、A社のマーケティング戦略そのものではなく、その前提となるポジショニングの把握が間違っていると書かれていました。
これまでA社は、自社のことを業界のトップ企業に追随する役割を担う「チャレンジャー企業」だと理解していたのですが、実際には、独自路線でスキマを狙う「ニッチャー企業」のほうに近いということがわかったのです。
たしかに、チャレンジャー企業として行ってきたトップ企業を意識した拡大戦略は、これまでことごとく失敗してきました。
それもそのはずで、業界内にはまだまだ強力な企業があり、それらの競合との戦いに勝つことができていなかったのです。
そればかりか、海外からも日本市場に進出してくる企業があり、競争は激化していました。
いずれにしても、このまま拡大戦略を続けていれば、この先A社が大きく成長することは難しいでしょう。
マーケティング会社が分析した結果をもとに考えると、これからはニッチな分野に特化して、まずは特定分野を制覇するほうが賢明なようです。
そう判断したS社長は、拡大路線を転換し、A社が得意な分野を模索することにしました。
その結果、A社は「高齢者に好まれている」ということがわかりました。
地方都市にも多くの店舗があり、駅から離れてはいるものの、大きな駐車場を完備するなどの設備面で競合他社よりも秀でているのです。
そのため、地元の高齢者を中心に、ゆっくりとした時間を過ごせる場所として人気を博しているのです。
そこでS社長は、いたずらに店舗数を増やすのではなく、まずは客単価をあげる方向に注力することにしました。
そうすることで、安定的な収益を実現し、多くのファンを獲得することに成功したのです。
自社のポジションを改めて見なおした結果、本当にとるべき戦略が判明しました。
<解説>
市場における自社のポジションについて、正しく把握できていないという事例は枚挙にいとまがありません。
思い込みを抱えたままに戦略を構築しても、成果をあげることは難しいでしょう。
自社がどのような競争戦略を採用するべきなのか、さまざまな方向から見直してみることが大切です。
【それぞれの特徴と戦略】
それでは最後に、競争戦略を立案する際に理解しておくべき、それぞれのポジションの特徴と戦略について簡単にご紹介いたします。
<マーケット・リーダー>
リーダーは業界のトップ企業です。
たとえばコンビニエンスストアでは、セブン-イレブンが該当します。
ライバル企業を意識しつつ、市場全体をいかに大きくできるかがポイントとなります。
<マーケット・チャレンジャー>
チャレンジャーはトップ企業を追いかける2位や3位の企業です。
セブン-イレブンがリーダーなら、チャレンジャーはローソンやファミリーマートとなります。
積極的な商品開発や、キャンペーンなどの施策により、トップ企業のシェアを奪うことが目標となります。
<マーケット・ニッチャー>
ニッチャーは独自の分野においてシェアを得ている企業です。
業界のスキマにおいてシェアを維持することで、成長力を高めています。
コンビニ業界で言えばイートインのさきがけであるミニストップなどがあてはまるでしょう。
高付加価値のある商品を提供することで、収益力を高めていくことが大切です。
<マーケット・フォロワー>
最後はフォロワーです。
シェアも知名度もありませんので、まずは業界の上位にいる企業の真似をすることが大切です。
そのなかで、チャレンジャーやニッチャーになれるよう、企業努力をかさねていくことが大切でしょう。
【まとめ】
・マーケティングを行う際には、市場や顧客だけでなく、競合他社にも目を向けるべき
・市場におけるポジションは、以下の4つに分類できる
・リーダー企業
・チャレンジャー企業
・ニッチャー企業
・フォロワー企業
・自社がどのポジションにいるのか、つねに把握しておくことが大事
・それぞれのポジションに応じて、最適な戦略は異なる
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