セグメンテーション その1
【セグメンテーションとは】
市場には、さまざまなニーズやウォンツが顕在的・潜在的にごちゃ混ぜの状態となっています。
そのため、そのままではマーケティング戦略を有効に実施することができません。
たしかに、企業側としては、より多くの人をターゲットとして商品やサービスを売り出したいと思うかもしれませんが、それでは焦点がズレたものしか生み出せないのです。
たとえば、台所用洗剤1つとってみても、そのニーズやウォンツはさまざまです。
通常の洗浄力でただ安いという商品では、すでにたくさんの商品があるなかで売上を伸ばすことは難しいでしょう。
しかし、「手肌をコーティングする(乾燥肌対策)」「水を使わない(アウトドア向け)」「再生紙を利用したパック(環境への意識が高い方向け)」などの付加価値をつけることで、高価格帯でも売れる可能性があります。
そのような付加価値や、あるいは自社の強みを生かして差別化するための基準となるのが、市場をさらに細分化した「市場セグメント」なのです。
市場全体をみて商品やサービスを作るのではなく、市場を細分化しつつセグメントを分析して、よりピンポイントなニーズやウォンツに対応できるように商品やサービスを開発するのですね。
セグメンテーションを行う場合には、市場を細分化するための「変数」を活用します。
変数とは、どのような基準で市場を分類するかの判断材料のことですね。
たとえば、年齢、性別、職業、年収、家族構成、あるいは価値観など多種多様です。
これらの要素の中から、いかに顧客の心に響くようにセグメンテーションを行えるかが、マーケターの腕の見せどころと言えるでしょう。
変数は、おおむね次の4つに分類されます。
1 .地理的変数
居住地区、居住エリア、気候、文化など
2.口統計的変数
年齢、性別、職業、家族構成、所得など
3.心理的変数
価値観、ライフスタイルなど
4.行動的変数
利用シーン、使用頻度など
これらの変数を上手に活用して、セグメンテーションを行います。
もちろん、既存の変数にとらわれることなく、開発する商品やサービスの特性から、独自の変数を使ってセグメンテーションを行うことも大切です。
場合によっては、最適な変数が見つかっていないこともありますので、既存の枠組みにとらわれないようにしましょう。
【例題】
それでは、例題をとおして、セグメンテーションの実践方法を学んでいきましょう。
セグメンテーションは、市場を細分化すればそれで終わりではありません。
それぞれの市場セグメントにどのような特性があるのかや、潜在的なニーズ・ウォンツを探りつつ、自社の製品をどのように売り込むべきかまで考える必要があります。
そのあたりを考えながら読み進めてみてください。
<例>
ドラッグストアを運営するA社は、B県内を中心に複数の店舗を展開していました。
しかし、最近では安売りのスーパーが乱立してきたこともあり、業績が悪化しています。
とくに、日用品や食品、ペットボトル飲料などでの集客が難しくなっており、結果として高価格帯の化粧品や薬の販売が伸び悩んでいるのです。
このままいけば、いくつかの店舗が閉店を余儀なくされる可能性もあります。
そこでA社の社長であるTさんは、初心にかえって自社、B県、そして競合スーパーの分析を行うことにしました。
とくに、主戦場であるB県の特性をいちから洗い出し、どのような商品やサービスが求められているのかを詳しく調査したのです。
そのときに活用したのが、セグメンテーションでした。
「地理」「人口」「心理」「行動」の観点から、B県を細分化していきます。
その結果、B県の市場セグメントのなかでも、とくに「住宅密集地」で勝負すべきということが分かりました。
自社の強みである「社員・アルバイト・パートへの徹底した接客研修制度」を生かし、競合他社の弱みである「アルバイト・パート社員への不満」を逆手に取った格好です。
B県の、とくに主婦層の多くは、値段が同じならより接客が良いお店で買い物をしたいと希望していたのです。
市場をセグメンテーションし直したおかげで、チラシや広告を利用した住宅密集地への再アプローチができた結果、A社の売上は持ち直しました。
また、B県のとくに住宅密集地に関する分析をさらに進め、今後は似たような特性のある他県にも進出しようと画策しています。
もちろん、地域によってニーズやウォンツは異なる可能性がありますので、今回の事例をマニュアル化することも決定しました。
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