環境分析 その2
<解説>
書籍の出版というと、出版社やその担当編集者、著書、ライター、イラストレーターなどが絡むこともあって、どこかクリエイティブなものと捉えてしまいがちです。
だからこそ、採算ベースで出版するのではなく、センスや感覚といったあいまいな判断指標で意思決定をしてしまうことが少なくありません。
大手企業なら、そのような可能性にかける手法も悪くないかもしれませんが、零細企業では難しいでしょう。
だからこそA社は、マーケティングを駆使して、徹底した採算ベースの出版を確立したのです。
そこまでの過程においては、環境分析によって導き出された「総売上高の減少」がありました。
分析の結果、その理由は、「書籍と触れ合う場面の多様化」ということが分かったのです。
つまり、新刊本は、必ずしも書店で購入するとは限られないということです。
たとえば、中古書店での購入、電子書籍でのダウンロード、あるいは図書館で借りるなど、方法は多様化しています。
そのため、新刊本の総売上が下がっているからと言って、必ずしも本を読む人が減っているとはいえないのです。
そこでA社は、「電子書籍とのセット販売」「販売期間の限定」「購入者特典の充実」「ネット書店との連携」によって、採算をとれる出版のみを行うことにしました。
具体的に、A社が分析した外部環境と内部環境は以下のとおりです。
・外部環境
読者の数そのものは、大きく目減りしているわけではない。
それどころか、本を読む人は継続的に一定額の購入をしてくれることが多く、また、個人が中古本を売れるシステムも確立しているため、購入までの垣根は下がっていると言える。
大手企業は著者を囲い込むことはせず、さらに従来型の出版を行い、身動きが遅いという弱点もある。
プロモーションや体力面では勝負できそうにないが、採算ベースの出版で一定の地位を確立できる可能性はある。
・内部環境
A社の強みは、何よりもフットワークが軽いことだ。
また、若手の著者を囲い込んで積極的に執筆をお願いしているため、定期的な出版が可能となっている。
加えて、フリーランスのライターやイラストレーター、インタビュアーも積極的に活用しているので、固定費がそれほどかからない。
今後は、クラウドソーシングなどを利用することで、1冊ごとにチームを組むことも画策している。
これによって、オフィスも不要となるだろう。
【外部分析と内部分析】
最後に、外部分析と内部分析について、簡単におさらいしておきましょう。
<外部分析>
政治、経済、文化、人口統計などの「マクロ環境」と、市場の特性や顧客の嗜好、競合他社などの「ミクロ環境」が主軸となっているのが外部分析です。
めまぐるしく変化する可能性があるため、随時、情勢を注視する必要があります。
<内部分析>
経営資源、強みと弱み、企業文化など、自社の内部的な要素が分析対象となっているのが内部分析です。
自社の積極的な動き出しによって変えることができるという特徴があります。
もっとも、戦略的に変化させなければ、ただのブレとなってしまうために注意が必要です。
【まとめ】
・マーケティングのスタートは「環境分析」から
・環境分析の2つの柱は「外部分析」と「内部分析」
・環境分析はマーケティング活動のいちステップにすぎないので、極度に時間と労力を投下しないように注意するべき
・複合的な視点を持つことによって、分析から本質を導き出そう
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