製品戦略③(製品ライン設計、PPM、製品陳腐化政策) その3
<プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)>
企業は、限られた経営資源を有効活用するために、複数の製品や事業を最適に組み合わせなければなりません。
そのときに、製品や事業ごとの最適化を行うための指標となるのが「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」です。
横軸に「相対的マーケットシェア」をとり、縦軸に「市場の成長性」をとります。
いずれも単位は「高低」となり、4事象のマトリックスなります。
それぞれの事象の内容は次のとおりです。
?金のなる木
相対的マーケットシェアが高く、市場の成長率が低いため、資金の流出を最小限にしつつ、高収益が望めます。
?花形製品
相対的マーケットシェアも市場の成長率も高いために、資金の流出も流入も多いのが特徴です。
「金のなる木」で得た資金を積極的に投資すべき製品と言えるでしょう。
?問題児
相対的マーケットシェアが低いために高収益は望めませんが、市場の成長率が高いため、将来的に期待できる分野です。
いかに「花形製品」へと育てられるかがポイントとなります。
?負け犬
相対的マーケットシェアも市場の成長率も低いため、他の製品との兼ね合いも考慮しつつ、徐々に縮小・撤退すべき分野です。
<製品陳腐化政策>
通常、経年によって製品自体が劣化したり、あるいは時代の流れとともに陳腐化することは避けられません。
また、新しい機能を備えた新製品が発売されれば、自然と既存製品は衰退していくことになります。
そうした現状を加味して、あらかじめ計画的に製品を陳腐化させるための戦略が「製品陳腐化政策」です。
製品を意図的に陳腐化させることにより、ユーザーの買い替え需要を喚起することができるだけでなく、より計画的な販売戦略を構築することが可能となります。
とくに、そのような意図的な取替え需要を創出する政策のことを「計画的陳腐化」といいます。
計画的陳腐化には、次の3つの種類があります。
?物理的陳腐化
一定期間が経過することによって、製品が故障するなど、物理的に製品が使えなくするように設計し、計画的に陳腐化させることを「物理的陳腐化」と言います。
ただ、意図的に耐用年数を短縮させる手法は、批判のもととなる場合もあります。
?機能的陳腐化
既存の製品より機能的に優位なものを発売することにより、既存製品を陳腐化させる手法です。
新しい機能を追加するだけでも効力を発揮します。
Appleが毎年新しいiPhoneを発売するのも、この機能的陳腐化の一つですね。
成長期の製品においては、機能的陳腐化のサイクルが短い傾向にあります。
?心理的陳腐化
最後は心理的陳腐化です。
心理的陳腐化とは、機能的な改良はなくても、デザインやスタイルなどの見た目を変えることにより、既存製品の価値を低下させる方法です。
差別化が難しく、成熟した市場では心理的陳腐化が有効となります。
【まとめ】
・マーケティング戦略においては、製品だけでなく「製品ライン」についても考慮すべき
・製品ラインは、幅と深さの二つの軸によってアイデアを広げていく
・製品ライン政策に影響を与える要素は次の5つ
?顧客のニーズ
?製品ごとの収益性
?競合他社の状況
?自社製品同士のカニバライゼーション(共食い)
?リスクの分散
・製品や事業の組み合わせについては、「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」や「製品陳腐化政策」も考慮すること
関連ページ
- グローバルマーケティングにおける企業の条件 その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略③(プッシュ戦略とプル戦略) その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略③(プッシュ戦略とプル戦略) その1
- 価格戦略④(新製品の価格設定) その2
- 製品戦略⑤(プロダクトエクステンション) その2
- セグメンテーション その1
- セグメンテーション その2
- 標的市場の選定 その1
- 標的市場の選定 その2
- 標的市場の選定 その3
- ソリューションの価値と価格への転換 その1
- ソリューションの価値と価格への転換 その2
- ソリューションの価値と価格への転換 その3
- マーケティング戦略策定プロセス その1
- マーケティング戦略策定プロセス その2
- マーケティング戦略策定プロセス その3
- ターゲティング その1
- ターゲティング その2
- ターゲティング その3
- マーケティングとは その1
- マーケティングとは その2
- ブランド戦略①(ブランドとは) その1
- ブランド戦略①(ブランドとは) その2
- ブランド戦略①(ブランドとは) その3
- ブランド戦略②(ブランド・エクイティ) その1
- ブランド戦略②(ブランド・エクイティ) その2
- ブランド戦略②(ブランド・エクイティ) その3
- ブランド戦略③(ブランドの構築と展開) その1
- ブランド戦略③(ブランドの構築と展開) その2
- ブランド戦略③(ブランドの構築と展開) その3
- ブランド戦略④(ブランドの拡張と浸透) その1
- ブランド戦略④(ブランドの拡張と浸透) その2
- ブランド戦略④(ブランドの拡張と浸透) その3
- ブランド戦略⑤(コーポレート・ブランディング) その1
- ブランド戦略⑤(コーポレート・ブランディング) その2
- ブランド戦略⑤(コーポレート・ブランディング) その3
- ビジネスマーケティング(生産財マーケティング) その1
- ビジネスマーケティング(生産財マーケティング) その2
- ビジネスマーケティング(生産財マーケティング) その3
- ビジネスマーケティングと俯瞰思考 その1
- ビジネスマーケティングと俯瞰思考 その2
- ビジネスマーケティングと俯瞰思考 その3
- マーケティング課題の特定 その1
- マーケティング課題の特定 その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略①(コミュニケーションの役割) その1
- コミュニケーション(プロモーション)戦略①(コミュニケーションの役割) その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略②(コミュニケーション手法) その1
- コミュニケーション(プロモーション)戦略②(コミュニケーション手法) その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略②(コミュニケーション手法) その3
- コミュニケーション(プロモーション)戦略④(メディアの種類) その1
- コミュニケーション(プロモーション)戦略④(メディアの種類) その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑤(コミュニケーション戦略立案プロセス) その1
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑤(コミュニケーション戦略立案プロセス) その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑤(コミュニケーション戦略立案プロセス) その3
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑥(AIDMA・AISAS・AISCEAS理論) その1
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑥(AIDMA・AISAS・AISCEAS理論) その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑦(レピュテーション・マネジメント) その1
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑦(レピュテーション・マネジメント) その2
- 競争戦略①(競争戦略とは) その1
- 競争戦略①(競争戦略とは) その2
- 競争戦略②(リーダー企業の戦略) その1
- 競争戦略②(リーダー企業の戦略) その2
- 競争戦略②(リーダー企業の戦略) その3
- 競争戦略③(後続企業の戦略) その1
- 競争戦略③(後続企業の戦略) その2
- 競争戦略③(後続企業の戦略) その3
- 企業におけるマーケティング その1
- 企業におけるマーケティング その2
- カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM) その1
- カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM) その2
- カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM) その3
- カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)の実施と導入ポイント その1
- カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)の実施と導入ポイント その2
- 流通戦略①(流通チャネルとは) その1
- 流通戦略①(流通チャネルとは) その2
- 流通戦略②(流通チャネルの種類) その1
- 流通戦略②(流通チャネルの種類) その2
- 流通戦略②(流通チャネルの種類) その3
- 流通戦略③(流通チャネル構築プロセス) その1
- 流通戦略③(流通チャネル構築プロセス) その2
- 流通戦略③(流通チャネル構築プロセス) その3
- 流通戦略④(チャネル変更とハイブリッド・チャネル) その1
- 流通戦略④(チャネル変更とハイブリッド・チャネル) その2
- 環境分析のフレームワーク その1
- 環境分析のフレームワーク その2
- 環境分析のフレームワーク その3
- 環境分析 その1
- 環境分析 その2
- グローバルマーケティング その1
- グローバルマーケティング その2
- グローバルマーケティング その3
- グローバルマーケティングにおける企業の条件 その1
- グローバルマーケティングのプロセスと注意点 その1
- グローバルマーケティングのプロセスと注意点 その2
- マーケティングミックス(4P分析) その1
- マーケティングミックス(4P分析) その2
- マーケティングリサーチ①(意義と役割) その1
- マーケティングリサーチ①(意義と役割) その2
- マーケティングリサーチ②(必要な情報) その1
- マーケティングリサーチ②(必要な情報) その2
- マーケティングリサーチ②(必要な情報) その3
- マーケティングリサーチ③(手法とプロセス) その1
- マーケティングリサーチ③(手法とプロセス) その2
- マーケティングリサーチ③(手法とプロセス) その3
- マーケティングリサーチ④(注意点) その1
- マーケティングリサーチ④(注意点) その2
- ポジショニング その1
- ポジショニング その2
- ポジショニング その3
- 価格戦略①(製造コストとカスタマー・バリュー) その1
- 価格戦略①(製造コストとカスタマー・バリュー) その2
- 価格戦略②(価格設定の影響要因) その1
- 価格戦略②(価格設定の影響要因) その2
- 価格戦略③(価格設定手法) その1
- 価格戦略③(価格設定手法) その2
- 価格戦略③(価格設定手法) その3
- 価格戦略④(新製品の価格設定) その1
- 価格戦略⑤(心理的価格設定、価格調整法、値下げ) その1
- 価格戦略⑤(心理的価格設定、価格調整法、値下げ) その2
- 製品戦略①(製品とは) その1
- 製品戦略①(製品とは) その2
- 製品戦略②(新製品開発プロセス) その1
- 製品戦略②(新製品開発プロセス) その2
- 製品戦略③(製品ライン設計、PPM、製品陳腐化政策) その1
- 製品戦略③(製品ライン設計、PPM、製品陳腐化政策) その2
- 製品戦略③(製品ライン設計、PPM、製品陳腐化政策) その3
- 製品戦略④(製品ライフサイクル) その1
- 製品戦略④(製品ライフサイクル) その2
- 製品戦略⑤(プロダクトエクステンション) その1