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価格戦略②(価格設定の影響要因) その1

【価格設定の際に留意するべきポイント】
以前の記事(「価格戦略?(製造コストとカスタマー・バリュー)」)において、価格設定の上限と下限の目安となる要素として、商品ごとの「製品コスト」や「カスタマー・バリュー」などの指標があることはすでにお話ししました。

 

ただ、実際に商品を販売するにあたっては、より最適な数値を正確に打ち出さなければなりません。

 

目安だけでは最終的に判断することは難しいでしょう。

 

そこで今回は、価格設定の際に留意すべきポイントである、「価格設定の影響要因」について考えていきましょう。

 

価格は、価格設定の上限と下限のあいだなら、製品を製造した企業が独自に判断して決められるものではありません。

 

むしろ、複数の要因からより最適な数値を導き出しつつ、それぞれの要素を勘案しつつ最終的な経営判断をすることになる場合がほとんどです。

 

価格設定に影響を与える要因は、大きく次の3つです。

 

競争環境
需給関係
売り手と買い手の交渉力

 

価格戦略(価格設定の影響要因)

 

「競争環境」というのは、類似製品に対して、競合他社がどのような価格設定をしているかということです。

 

製品によっては、価格によって差をつけることが難しく、相場からなるべく乖離しないように設定しなければならないものもあります。

 

差をつけるためには、独自のメリットや利便性を付加するなどの工夫が必要になるでしょう。

 

また「需給関係」とは、その名の通り需要と供給の関係性です。

 

価格が下落すれば需要は増えていきますし、反対に価格が低下しすぎれば供給量を抑えなければなりません。

 

その両者のバランスを重要供給曲線から導き出し、求められる価格と利益が最大化するポイントを計測しつつ、最終的な価格設定を行います。

 

顧客との長期的な関係性も考慮することが大切です。

 

最後の「売り手と買い手の交渉力」とは、その製品を投入している市場において、売り手と買い手がどのような力関係になっているかということを考慮したものです。

 

たとえば、買い手がたくさんいる市場においては、売り手の力が上回ることになりますし、反対に買い手が少なく売り手となる競合がたくさんいる市場においては、買い手の力が上回ることになります。

 

それぞれの要素は、個別に独立しているわけではなく、状況に応じて複数個重なっていることがほとんどです。

 

自社の製品が置かれている状況をしっかりと把握しつつ、どのような要素が価格設定に影響を与えているのかを考慮することによって、よりマーケティング戦略に則した価格を導き出せることでしょう。

 

とくに「競争環境」「需給関係」「売り手と買い手の交渉力」の3つは、必ず確認しておきたいですね。

 

 

【例題】
それでは、例題をとおして、価格設定の影響要因についての理解を深めていきましょう。

 

ビジネスにおいては、なるべく多くの利益が確保できるような価格設定をすることが求められますが、製品が市場に受け入れられなければ開発した意味がありません。

 

価格というものは、複数の要素から総合的に判断するものだということを念頭においておきましょう。

 

<例>
全国で理容・美容の店舗をチェーン展開しているA社は、経営体質を改善するために、全国規模でのリストラクチャリングを検討していました。

 

具体的には、全国にあるチェーンの理美容店を売り上げごとに精査し、閉鎖する店舗は閉鎖して、より資源を集中して集客力を高めようとする作戦です。

 

重点地域において必要があれば、新規出店も考慮しています。

 

社長のYさんは、かつて自身が美容室の店長をしていたこともあり、最近のマンネリ化した店舗運営には嫌気がさしていました。

 

とくに、技術力が高い人をたくさん雇っている店舗ほど、経営やビジネスを意識した店舗運営ができていないことを危惧していたのです。

 

そこで、不採算の店舗にメスを入れることによって、すべての店舗の底上げを図るのが狙いです。

 

ただ、不採算の店舗を閉鎖することはできても、重点地域への新規出店に関してはなかなかスムーズに進まないのが現状でした。

 

その理由は、既存の店舗を閉鎖してまで新しい店舗をつくる以上、ある程度の成果を出せなければ、会社の経営体質改善の観点からしてもそうですが、そこで働く従業員に対して示しがつきません。

 

なかでも、新店舗での料金設定には苦慮していました。

 

そこでY社長は、改めて、市場環境について入念に調査を依頼することにしました。

 

マーケティングの専門企業に対して、調査とその分析をお願いすることで、より説得力のある最適価格を設定しようと考えたのです。

 

いずれにしても、社内でいくら検討を重ねていても、経験や感覚ベースの料金設定からは脱却できそうにはありません。

 

そうした状態を考慮しての専門家への依頼でした。

 

その結果、料金設定に際しては、これまでどおりの相場観や店舗特有の設定方法を重視するのではなく、競合他社との「競争環境」や市場から算出した「需給関係」、あるいは市場全体からみる「売り手と買い手の交渉力」という3点をベースにして決めることになりました。

 

初期の段階では、調査や分析をしなければならない苦労はありましたが、Y社長はより説得力のある価格設定ができたと自負しています。

 

店舗のリストラクチャリングと料金設定の改定によって、A社はより採算性の高い企業へと生まれ変わりました。

 

経営体質も改善され、Y社長が頻繁に各店舗を巡回することなく、経営管理が行き届くようになったのです。

 

それもひとえに、マーケティングによる改革のおかげであると言えるでしょう。

 

 

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