製品戦略①(製品とは) その2
<例>
都内でイタリアンレストランを運営しているA社は、ここ最近、売上が伸びていることを見越して、事業の多角化を計画しています。
具体的には、メイン事業であるレストランの多店舗化やお店で使っている製品の販売、あるいはお店のシェフを派遣して、各地で料理教室を開催するなどといった案が浮上しています。
お店のオーナーでもありシェフでもあるYさんは、これらの案をさらに煮詰めて近日中に実行するために、営業終了後、従業員とともにミーティングを行っています。
ただ、仕事で疲れていることもあるのか、なかなか具体的なプランが決まらず、斬新なアイデアも出てきません。
このままでは店舗運営に支障が生じてしまうと危惧したYさんは、事業の多角化をいったん棚上げすることにしました。
そんな折、お店の常連客とともに年に一回の創業パーティーがありました。
これは毎年行われているもので、運営している店舗の休日を利用して開催されているものです。
従業員が全員参加するだけでなく、創業当時から訪れてくれているファンも多数参加することもあって、例年のことながら盛り上がりました。
そのパーティーの席で、Yさんは、数人の常連客から次のような話をうかがいました。
なんでも、脱サラして飲食店を経営したいと考えている人がいるのだが、そのノウハウがまったく無いために、はじめの一歩を踏み出せずにいるとのこと。
たしかにYさんも、創業当時はなにかと苦労しました。
料理のことだけでなく、経営全般について考えなければなりません。
そこでYさんがひらめいたのは、自店舗の創業から現在までのノウハウを広く社会に公開するということでした。
これは、料理のレシピだけにとどまらず、創業時の苦労から運営のコツ、人気店になるまでに行った広告やPR、あるいはイベントなどすべてです。
これがそのまま、事業の多角化につながるのではないかと見越したアイデアでした。
具体的には、店舗運営コンサルティングやセミナーの開催、書籍の執筆、動画の配信などさまざまです。
オフィシャルグッズとして店舗オリジナルの調味料も展開することにしました。
その結果、新しい分野での収益が確保できただけでなく、広くお店のPRをすることに成功したのです。
売上が倍増したことは言うまでもありません。
<解説>
自社の製品をどのようにとらえるかによって、企業の売上は大きく変わります。
A社の場合、料理という製品だけでなく、レストランそのものの空間や店舗運営のノウハウ提供、オフィシャルグッズの販売など、無形有形の製品やサービスを幅広く提供したことが事業を推し進めることにつながりました。
「顧客に対してどんな価値を提供できるのか?」という視点で考えたからこそ、生まれた発想ですね。
【製品の分類】
マーケティング戦略を構築するにあたっては、製品がどのように分類されるのかを知らなければなりません。
そうすることで、製品ごとの戦略がより構築しやすくなるのですね。
こちらでは、とくに重要な「製品の3つの分類」についてご紹介しましょう。
<1.物理的特性による分類>
・耐久財
「耐久財」とは、何度もくり返し使用することができ、使用期間も比較的長い有形の商品のことを言います。
その特性から、販売数は少ないのが一般的です。
例えば、自動車や電化製品などです。
そのため、アフターサービスや価格転嫁による利益率の確保が重要となります。
・非耐久財
「非耐久財」とは、使用回数が短く、くり返し購入してもらえる商品です。
例えば、ティッシュやシャンプーなどです。
価格を下げてより多く購入してもらえることがポイントとなります。
・サービス
「サービス」とは、目に見えない無形の製品全般を言います。
料理は有形の製品ではありますが、おもてなしは無形のサービスと分類されます。
<2.使用目的による分類>
・消費財
「消費財」とは、不特定多数の消費者がターゲットとされている製品のことです。
例えば、食品や衣料品などです。
個人の消費が基本であるため、いかにイメージを高められるかが重要となります。
・生産財
「生産財」とは、生産者や各種機関など、組織がターゲットとされている製品のことです。
例えば、自動車の部品などです。
技術面だけでなく、コストパフォーマンスも重要視されます。
<3.顧客の購買行動による分類>
・最寄品
「最寄品」とは、消費者が頻繁に購入する製品です。
例えば、ガムやタバコなどです。
いかにその製品にアクセスしやすいかという点が売上に影響します。
・買回品
「買回品」とは、複数の製品を比較したうえで購入される製品です。
家電製品や中古車など、価格や品質がシビアに問われます。
・専門品
「専門品」とは、特別な知識が必要とされる製品や、あるいは趣味性の強い製品のことです。
例えばブランド品などです。
指名買いされることも多く、ブランドの構築がカギとなります。
【まとめ】
・マーケティングミックスのスタートは「製品」について考えること
・製品を理解するためには、次の3つの視点が大事
1.製品のコア
2.製品の形態
3.製品の付随機能
・商品開発は「顧客に対してどんな価値を提供できるか?」からはじまる
・製品は「物理的特性」「使用目的」「顧客の購買行動」で分類される
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