コミュニケーション(プロモーション)戦略⑦(レピュテーション・マネジメント) その2
<例>
牛乳をはじめとする乳製品の製造・加工、および販売を手がけているA社とB社は、長いあいだ競合の関係にありました。
どちらも創業から古く、世間的な評価も分かれています。
これまで両者は、オリジナルブランドの商品を開発するなどして、それぞれ顧客を獲得しつつ、切磋琢磨してきました。
そんな折、あるテレビ番組で牛乳に関する特集が組まれました。
その番組は、健康に対する新情報や海外での研究結果をキャッチーに取り上げることで有名です。
放送された翌日には、番組内で取り上げられた商品が店頭から売り切れてしまうという事態もあるほど。
つまり、かなりの影響力がある番組と言えます。
ただ、牛乳が取り上げられたときの番組構成は、どちらかと言うとその優れた点というよりは、マイナス面が目立っていました。
いわく「牛乳は太る」「背が伸びるのは迷信」「カルシウムは本当に必要か」など。
たしかに牛乳の効能についても解説されていましたが、消費者にとっては悪い面ばかりがクローズアップされた格好です。
その番組が放送された翌日から、牛乳の評判は一時的に低下してしまいました。
スーパーをはじめとする小売各社でも、数パーセントから多いところで数十パーセントもの販売減となり、A社にとってもB社にとっても大きな打撃です。
このまま牛乳の販売不振が続けば、経営を圧迫してしまうことは目に見えています。
ただ、A社とB社がとった対応は対照的でした。
A社が多額の費用と時間をかけて独自の社内調査をし、ホームページをはじめとするさまざまなメディアで丁寧に牛乳の有用性を説明したのに対し、B社は牛乳の販売量を減らし、他の乳製品に力を入れはじめたのです。
A社は牛乳業界全般を、B社は自社のみのことを考えての行動です。
その結果、小売店や株主などのステークホルダーが、A社の対応を高く評価するに至りました。
また、メディアでもA社の研究結果を新しい成果として発表されるようになり、消費者に対するレピュテーションも徐々に回復しました。
一方でB社は牛乳はもちろんのこと、他の乳製品に関しても業界各所から冷遇されることになったのです。
<解説>
レピュテーション・マネジメントは、自社だけで完結できるとは限りません。
業界全体の問題は、そこに所属する企業自らが率先して対応しなければならないのです。
利益を考慮することはもちろん重要なのですが、消費者だけでなくすべての業界関係者にも評価される対応が求められることでしょう。
【クライシス・コミュニケーションの実施】
それでは最後に、レピュテーション・マネジメントにおける「クライシス・コミュニケーション」について、簡単に解説していきましょう。
意識すべきポイントは次の3つです。
<1.平常時の対応>
緊急事態はいつ発生するかわかりません。
だからこそ、いつでも動けるように危機管理マニュアルを整備するなどの対策を万全にしておくことが大切です。
また、経営者だけでなく、そこで働く社員全員が緊急事態に対処できるように、研修などを通じて日頃から対応できる体制を整えておきましょう。
<2.緊急時の対応>
緊急時の対応については、迅速性と社内での連携が求められます。
素早く情報収集を行い、トップを中心に対応を模索しつつ、できる限り迅速に社会に対して情報を開示しなければなりません。
初動の速さは、いかに社内の人間が連携して行動できるかという点にかかっているでしょう。
<3.全社的な危機管理>
また、全社的な危機管理体制を整えておくことも忘れてはなりません。
事件が発生してから社内で危機管理体制を構築しても遅いのです。
経営陣だけでなく、末端のスタッフまで危機管理に対する理解をうながすことが大切でしょう。
それが結果的に、スムーズな対応へとつながります。
【まとめ】
・企業はそのレピュテーション(評判・名声)についてもマネジメントしなければならない
・レピュテーション・マネジメントで考慮すべき対象は、消費者、ステークホルダー、メディア、インフルエンサーなど多岐にわたる
・レピュテーション・マネジメントには「平常時のコミュニケーション」と「危機管理コミュニケーション(クライシス・コミュニケーション)」の2つがある
・クライシス・コミュニケーションは次の3つの点に注意する
1.平常時の対応
2.緊急時の対応
3.全社的な危機管理
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