ブランド戦略⑤(コーポレート・ブランディング) その1
【コーポレート・ブランディングとは】
これまで各企業が提供している製品やサービスに関するブランディングについて幅広く学んできました。
ブランド戦略の最後は、個別の製品やサービスではなく、企業そのものをブランディングするための「コーポレート・ブランディング」について解説していきます。
コーポレート・ブランディングの基本的な役割は、ここ数年で大きく変化しています。
かつては「コーポレート・アイデンティティ活動」などの名前で注目され、各企業がさまざまな施策を行ってきましたが、実際にはロゴのデザインを変更するなど表面的な活動にとどまっていました。
しかし本来であれば、企業そのものをブランディングしなければ期待される効果は得られません。
その中でもとくに成果をあげたのが、企業のブランド化とともに会社の方向性をも変質させた企業たちです。
たとえば、ある教育関連企業では、特定のターゲット層に絞って営業活動を行っていたものの、企業のブランディングにあわせて事業内容も変化させました。
具体的には、進学塾という立ち位置だけでなく、幅広い層に対して通信教育を提供するなどです。
また、ブランド化にあわせて会社のロゴだけでなく、社名も変更しました。
日本という市場に着目したときに、将来的な変化もあわせてイメージを醸成することにしたのです。
高度経済成長期の日本と、バブル崩壊後の日本で状況が違うことは、誰の目にも明らかでしょう。
そうした変化にあわせて社名も柔軟に変えることが、企業のブランディングにつながるのです。
2000年代に入り、IT技術が社会全体に浸透するようになると、ブランドの形成に顧客が強く関わるようになりました。
インターネット上では、シェアやリンクによって世論が形成されるようになり、現在ではマスメディアに勝るとも劣らない影響力をもつソーシャルメディアも台頭しています。
時代の変化によって、これまでのコミュニケーション戦略では、思うようなブランディングができなくなったのです。
そこで企業は、ホームページやSNSを運営し、あるいはクチコミサイトに積極的に働きかけ、コーポレート・ブランディングを醸成するための情報配信を行うようになりました。
そうした媒体においては、一方通行的な広告はなかなか読まれません。
だからこそ、ストーリーやイベント性の強いキャンペーンを打ち出し、顧客に対してリアリティや共感を与えるようシフトしたのです。
近年の企業活動を考えてみると、それは明らかでしょう。
製品やサービスを販売するということに特化せず、イメージだけを伝えるようなテレビCMやWEB広告が多くなりました。
それらのゴールにはコーポレート・ブランディングがあり、さらには社会的に受け入れられやすい企業理念を浸透させようとの狙いもあるかもしれません。
コーポレート・ブランディングが成功すれば、モノ消費からコト消費へと変化している日本の消費者の心をつかむことができるかもしれません。
世界的にみても厳しい判断を下す消費者が多数存在している日本の市場では、これからも、個別の製品やサービスだけでなく、企業そのもののブランディングが必要になることでしょう。
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