グローバルマーケティングのプロセスと注意点 その1
【グローバル・マーケティング実現に向けて】
すでに海外展開をしている企業にとっては、既存の方針を転換させ、グローバル・マーケティングを導入するのは困難な場合が多いです。
当然のことではありますが、海外展開にはさまざまな障害があるものですし、それらを乗り越えて現在の体制を築いているという事実を鑑みる時、方針転換には抵抗もあることでしょう。
それでも、中長期的にグローバル市場で戦っていくためには、より効率的にマーケティングを展開しなければならないことは言うまでもありません。
体力的な部分もそうですし、いざという時に柔軟な対応ができなければ、いずれは衰退してしまうことは目に見えています。
市場の大小に関わらず、効率化は急務です。
これまでお話してきたとおり、グローバル・マーケティングの利点は徹底した合理化です。
進出する各国でいちからマーケティング戦略を構築するのではなく、世界をひとつの市場としてとらえることによって、本来のマーケティングにより得られるうまみを享受できるようになるのです。
一般化することがそのまま利益となるのです。
考えてもみてください。
各国でそれぞれマーケティング方針を転換させていれば、そのぶん手間もかかりますし、何より自社の強みを十分に生かせない場合があります。
進出する国ごとに、まるでいちから起業しているかのようだと考えれば分かりやすいでしょう。
経営資源を上手に活用するためには、マーケティングを一本化するべきなのですね。
そのための手順は、おおむね次のようになります。
Step1.マーケティング・コンセプトの設定
Step2.ターゲット市場の選定
Step3.内外のコミュニケーション戦略
Step4.マーケティング戦略の修正
大きな流れとしては、新しい市場に参入する際に立案するマーケティング戦略の全体像と変わりありません。
それが国をまたごうと、基本的な部分では共通しているのです。
詳しい内容は後述しますが、まずはこれらのステップを理解して、どのようにグローバル・マーケティングへと移行するべきなのかイメージしてみてください。
【例題】
それでは、例題をとおして、グローバル・マーケティングの実践について考えていきましょう。
ビジネスにおいて、ムダを削減することは非常に重要です。
たとえ距離があろうとも、たとえ言語が異なろうとも、世界中でひとつのマーケティングを実施しようとする姿勢は、必ずや大きなムダをなくすことに寄与するでしょう。
<例>
「世界の子どもたちに価値ある書籍を」がコンセプトのA社は、日本市場で大きく成長したことをうけ、いよいよ世界市場への進出を開始しました。
まずはアジア圏からスタートして、日本と親和性の高いアメリカやヨーロッパの国で出版事業を行っています。
今後は各国ごとのシェアを高めつつ、さらに多くの国に進出する算段です。
当初のコンセプトから明らかなように、A社のビジネスモデルは非営利活動に近い印象を持たれていることもあり、どの国においても学校や教育団体、ひいては政府筋からの評判が好評でした。
もちろん利益をあげることが目的ではありますが、叶えたい未来に共感されることも多く、さまざまな国においてすんなりと受け入れられたのです。
そのように、世界進出が思いのほかうまく進行してしまった背景がありつつも、代表のY社長は一抹の不安をかかえていました。
なぜなら、それぞれの支店においてマネジメントが行き届いていないと感じていたからです。
具体的には、各国の支社長がマンパワーにおいて経営を行っている部分が大きく、マーケティング戦略に一貫性がないのです。
たしかにそれでも、収益があげられているうちは問題ありません。
しかし、これからさらに多くの国でビジネスを行うとなると、グローバル・マーケティングを導入しなければ成功は見込めないでしょう。
多くのムダが存在しているのは明らかですし、各店の連携も不十分です。
Y社長は思い切って改革を断行することにしました。
最初は戸惑うことも多かったのですが、Y社長自ら各支店の支社長にグローバル・マーケティングの必要性を説いたことにより、少しずつ彼らの意識は変わっていきました。
いずれにしても、会社の繁栄とともに社会への貢献を目指したいという気持ちを持っていることは、すべての社員に共通していることです。
グローバル・マーケティングの考え方は少しずつ受け入れられました。
実際にグローバル・マーケティングを導入する際には、その手順についても考慮しました。
日本市場で行ったマーケティング戦略を少し改変し、グローバル・マーケティング用に改変した次の4つのステップを実施したのです。
Step1.マーケティング・コンセプトの設定
Step2.ターゲット市場の選定
Step3.内外のコミュニケーション戦略
Step4.マーケティング戦略の修正
その結果、大きな二つの変化がありました。
コストの面での削減と、意識の面での共通認識です。
コストについては、世界市場においても国内と同様か、延長線上のマーケティングを実施したことによって削減につながりました。
意識については、Y社長のマネジメントが行き届くようになり、方針が徹底されるようになったのです。
関連ページ
- グローバルマーケティングにおける企業の条件 その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略③(プッシュ戦略とプル戦略) その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略③(プッシュ戦略とプル戦略) その1
- 価格戦略④(新製品の価格設定) その2
- 製品戦略⑤(プロダクトエクステンション) その2
- セグメンテーション その1
- セグメンテーション その2
- 標的市場の選定 その1
- 標的市場の選定 その2
- 標的市場の選定 その3
- ソリューションの価値と価格への転換 その1
- ソリューションの価値と価格への転換 その2
- ソリューションの価値と価格への転換 その3
- マーケティング戦略策定プロセス その1
- マーケティング戦略策定プロセス その2
- マーケティング戦略策定プロセス その3
- ターゲティング その1
- ターゲティング その2
- ターゲティング その3
- マーケティングとは その1
- マーケティングとは その2
- ブランド戦略①(ブランドとは) その1
- ブランド戦略①(ブランドとは) その2
- ブランド戦略①(ブランドとは) その3
- ブランド戦略②(ブランド・エクイティ) その1
- ブランド戦略②(ブランド・エクイティ) その2
- ブランド戦略②(ブランド・エクイティ) その3
- ブランド戦略③(ブランドの構築と展開) その1
- ブランド戦略③(ブランドの構築と展開) その2
- ブランド戦略③(ブランドの構築と展開) その3
- ブランド戦略④(ブランドの拡張と浸透) その1
- ブランド戦略④(ブランドの拡張と浸透) その2
- ブランド戦略④(ブランドの拡張と浸透) その3
- ブランド戦略⑤(コーポレート・ブランディング) その1
- ブランド戦略⑤(コーポレート・ブランディング) その2
- ブランド戦略⑤(コーポレート・ブランディング) その3
- ビジネスマーケティング(生産財マーケティング) その1
- ビジネスマーケティング(生産財マーケティング) その2
- ビジネスマーケティング(生産財マーケティング) その3
- ビジネスマーケティングと俯瞰思考 その1
- ビジネスマーケティングと俯瞰思考 その2
- ビジネスマーケティングと俯瞰思考 その3
- マーケティング課題の特定 その1
- マーケティング課題の特定 その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略①(コミュニケーションの役割) その1
- コミュニケーション(プロモーション)戦略①(コミュニケーションの役割) その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略②(コミュニケーション手法) その1
- コミュニケーション(プロモーション)戦略②(コミュニケーション手法) その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略②(コミュニケーション手法) その3
- コミュニケーション(プロモーション)戦略④(メディアの種類) その1
- コミュニケーション(プロモーション)戦略④(メディアの種類) その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑤(コミュニケーション戦略立案プロセス) その1
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑤(コミュニケーション戦略立案プロセス) その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑤(コミュニケーション戦略立案プロセス) その3
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑥(AIDMA・AISAS・AISCEAS理論) その1
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑥(AIDMA・AISAS・AISCEAS理論) その2
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑦(レピュテーション・マネジメント) その1
- コミュニケーション(プロモーション)戦略⑦(レピュテーション・マネジメント) その2
- 競争戦略①(競争戦略とは) その1
- 競争戦略①(競争戦略とは) その2
- 競争戦略②(リーダー企業の戦略) その1
- 競争戦略②(リーダー企業の戦略) その2
- 競争戦略②(リーダー企業の戦略) その3
- 競争戦略③(後続企業の戦略) その1
- 競争戦略③(後続企業の戦略) その2
- 競争戦略③(後続企業の戦略) その3
- 企業におけるマーケティング その1
- 企業におけるマーケティング その2
- カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM) その1
- カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM) その2
- カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM) その3
- カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)の実施と導入ポイント その1
- カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)の実施と導入ポイント その2
- 流通戦略①(流通チャネルとは) その1
- 流通戦略①(流通チャネルとは) その2
- 流通戦略②(流通チャネルの種類) その1
- 流通戦略②(流通チャネルの種類) その2
- 流通戦略②(流通チャネルの種類) その3
- 流通戦略③(流通チャネル構築プロセス) その1
- 流通戦略③(流通チャネル構築プロセス) その2
- 流通戦略③(流通チャネル構築プロセス) その3
- 流通戦略④(チャネル変更とハイブリッド・チャネル) その1
- 流通戦略④(チャネル変更とハイブリッド・チャネル) その2
- 環境分析のフレームワーク その1
- 環境分析のフレームワーク その2
- 環境分析のフレームワーク その3
- 環境分析 その1
- 環境分析 その2
- グローバルマーケティング その1
- グローバルマーケティング その2
- グローバルマーケティング その3
- グローバルマーケティングにおける企業の条件 その1
- グローバルマーケティングのプロセスと注意点 その1
- グローバルマーケティングのプロセスと注意点 その2
- マーケティングミックス(4P分析) その1
- マーケティングミックス(4P分析) その2
- マーケティングリサーチ①(意義と役割) その1
- マーケティングリサーチ①(意義と役割) その2
- マーケティングリサーチ②(必要な情報) その1
- マーケティングリサーチ②(必要な情報) その2
- マーケティングリサーチ②(必要な情報) その3
- マーケティングリサーチ③(手法とプロセス) その1
- マーケティングリサーチ③(手法とプロセス) その2
- マーケティングリサーチ③(手法とプロセス) その3
- マーケティングリサーチ④(注意点) その1
- マーケティングリサーチ④(注意点) その2
- ポジショニング その1
- ポジショニング その2
- ポジショニング その3
- 価格戦略①(製造コストとカスタマー・バリュー) その1
- 価格戦略①(製造コストとカスタマー・バリュー) その2
- 価格戦略②(価格設定の影響要因) その1
- 価格戦略②(価格設定の影響要因) その2
- 価格戦略③(価格設定手法) その1
- 価格戦略③(価格設定手法) その2
- 価格戦略③(価格設定手法) その3
- 価格戦略④(新製品の価格設定) その1
- 価格戦略⑤(心理的価格設定、価格調整法、値下げ) その1
- 価格戦略⑤(心理的価格設定、価格調整法、値下げ) その2
- 製品戦略①(製品とは) その1
- 製品戦略①(製品とは) その2
- 製品戦略②(新製品開発プロセス) その1
- 製品戦略②(新製品開発プロセス) その2
- 製品戦略③(製品ライン設計、PPM、製品陳腐化政策) その1
- 製品戦略③(製品ライン設計、PPM、製品陳腐化政策) その2
- 製品戦略③(製品ライン設計、PPM、製品陳腐化政策) その3
- 製品戦略④(製品ライフサイクル) その1
- 製品戦略④(製品ライフサイクル) その2
- 製品戦略⑤(プロダクトエクステンション) その1