コミュニケーション(プロモーション)戦略②(コミュニケーション手法) その1
【コミュニケーション戦略の実践】
AIDA(AIDMAとも:Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動))やAMTUL(Awareness(認知)、Memory(記憶)、Trial(使用)、Usage(本格的使用)、Loyalty(ブランド固定))などを駆使して顧客の状況を確認したら、次はそれぞれの状況に合わせた最適なコミュニケーション手法を模索していきます。
自社の製品が顧客にどのように受け入れられているのかを把握するだけでは、コミュニケーション戦略を実行に移すことはできません。
そこから具体的にどのような手法で伝達していくのかを決めなければ、いつまで経っても認知度は高まらず、積極的にアプローチすることはできないのです。
まずは、どのような手法があるのかを学んでいきましょう。
企業が顧客とのコミュニケーションを行う際に活用できる情報伝達方法は、大きく次の5つに分類されます。
?広告
?販売促進(セールス・プロモーション)
?人的販売(セールスフォース)
?パブリシティ(広報)
?クチコミ
5つの手法についての詳しい解説は後述するとして、ここではそれぞれの方法が顧客にどのような影響を与えるのかを考えてみてください。
たとえば、製品を市場に投入した初期の段階では、広告や販売促進活動によって認知度を高めるのがもっとも無難でしょう。
しかし、製品の認知度が十分に高まっているのにも関わらず、人的販売に力を入れたりクチコミの形成をおろそかにしてしまえば、その製品に対してマイナスのイメージをもっている顧客をフォローすることはできません。
また、企業が直接的に配信する広告よりも、パブリシティ(広報)によってメディアに取り上げてもらう方が信ぴょう性が高まります。
最近ではインターネットメディアの台頭によって、一般的な広告やこれまでの広報とは違った情報伝達の方法も広がっていますので、それぞれの特性を生かして上手に使い分けることが求められます。
【例題】
それでは、事例をとおして具体的なコミュニケーション手法について学んでいきましょう。
5つの手法はどれも一般的なものばかりですが、時代の流れを経て微妙に変化し続けています。
昔ながらの方法だからと敬遠するのではなく、時代に合わあせて使い方を工夫するなど、企業努力によってその効果も大きく変わります。
<例>
ベンチャー企業の広告・宣伝を支援しているA社は、とくにインターネットを利用したPR活動に強みを発揮しており、中小企業を中心として、ここ数年のあいだにクライアントを増やしています。
社長のRさんはもともと広告業界の出身ということもあって人脈も広く、企業の広告戦略への知見も幅広く持っているという特徴があります。
ただ、今後さらにA社を飛躍させるためには、大手企業からの受注を増やすことが課題となっていました。
たしかにクライアントの数は増えているものの、いずれも少額の契約が多く、優良顧客を囲い込まなければ競合他社との競争から抜きん出ることはできません。
そのためには新しい広告戦略が必要となります。
そこでR社長は社内で新戦略について検討することにしました。
まずは、大手企業がどのような手法でPR活動を行っており、また、その中でも顧客への訴求力がある媒体はどのようなものなのかを調査することから始めます。
その結果、既存のPR方法がここ最近で大きく変わっていることに気が付きました。
たしかにインターネットを利用した広告・宣伝手法は時代とともに様変わりしています。
しかし、ここ最近の変化は特殊で、これまでの主流だった「広告」「販売促進(セールス・プロモーション)」「人的販売(セールスフォース)」などではなく、「パブリシティ(広報)」や「クチコミ」に力を入れている大手企業が増えているのです。
そもそも広報活動やクチコミの量産は、製品を提供している企業側はもちろん、広告代理店においても自ら主導して広告・宣伝の一環として行うのは難しいとされてきました。
なぜなら、広報活動によってメディアが取り上げるかどうかはメディア側が決めることですし、クチコミに関しても消費者が自主的に行うものだからです。
その点を考慮しつつ、R社長は新しい戦略を思いつきました。
大手企業が力を入れている広報活動とクチコミの量産を自ら受注することにしたのです。
A社がもつインターネット媒体の強みと、インターネット特有のシェアやリンクといった特性を利用すれば、外注でも一定の成果をあげることが可能だと見越してのことです。
広報活動とクチコミの量産を請け負う新しいサービスを打ち出したA社には、徐々に大手企業からの問い合わせが増えてきました。
初期の段階ではお試しプランなども設定して割安にすることで、実績も増加していきます。
また、大手企業に対しては営業パーソンによる定期的な巡回も強化し、フォローアップも欠かしません。
その結果、A社の業績は瞬く間に底上げされてきました。
大手企業という太く長く付き合える優良顧客を囲い込むことに成功したため、長期的な投資にも力を入れられるようになったのです。
株価も安定して伸び始め、新しい方針として海外展開も視野に入れつつ、さらなる成長を模索しています。
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