標的市場の選定 その3
<ターゲティング>
セグメンテーションを終え、市場を細分化したら、次はターゲティングを行います。
ターゲティングを行うには、まず最初に、それぞれのセグメントについての評価を定めましょう。
たとえば、規模、成長性、収益性などの「市場の魅力度」と、自社の目指す地位や活用できる資源などとの整合性を総合的に勘案し、最終的な判断をします。
いくら規模が大きくても、またいくら成長性があったとしても、そのセグメントをターゲットとしている競合が多数存在している場合には、あまり魅力的な市場とは言えません。
また、自社が目指す目標(シェアの拡大、売上の最大化、知名度の向上など)が叶えられそうになければ、同様にターゲットとするメリットは低いでしょう。
さらに付け加えれば、そのセグメントをターゲットとした場合に、事業が円滑に行えるかというポイントも見逃してはなりません。
場合によっては、顧客の要望に応えなければならないことや、流通経路が固定化しているなど、それぞれのセグメントごとに特徴が異なりますので、あらかじめ慎重に調査・分析することが大切です。
<ポジショニング>
セグメンテーションを終え、そのなかからターゲティングを行ったら、その後は「ポジショニング」を通じて差別化を図っていきます。
通常、適切な市場を選定して、優良な商品やサービスを提供すれば、それだけで売上があがると思ってしまいがちです。
たしかに、かつてはそういった時代もありましたが、現在では、それほど甘くありません。
というのも、現代には数多くの企業が存在し、それに比例して商品やサービスもたくさん市場に投入されているのです。
日用品や飲食業など、参入障壁の低い市場ではむしろ供給過多になっているぐらいで、まさに飽和状態といえるでしょう。
そういった市場において、他社を出し抜くためには、ポジショニングによる差別化が欠かせないのですね。
具体的には、対象商品やサービスにおいて、顧客が購買する基準として重要だと思われる指標を選出し、その指標をもとにポジショニングマップをつくります。
そうすことで、自社の置かれている状況を視覚的に俯瞰することができ、どのような点で差別化を行うべきかが分かるようになるのです。
おおまかには、「製品」「サービス」「社員」「イメージ」などの分野で差別化が可能とされています。
【注意点】
ここまで、標的市場の選定における全体的な流れをご説明しました。
「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の詳しい内容については、別の記事で取り上げますので、まずは全体像をつかみつつ、どのように標的市場を選定すれば良いのかを理解してくださいね。
最後に、注意点を2点ご紹介いたします。
<注意点1.社内の制約>
ひとつめは「社内の制約」です。
これは、たとえ最適な市場が見つかったとしても、必ずしもその市場をターゲットとすることが「社内的に」できない場合です。
たとえば、社内に軋轢がある場合や、人員がいないために実行力が不足している場合などですね。
<注意点2.社外の制約>
ふたつめは「社外の制約」です。
こちらも同様に、最適市場をターゲットとできない場合なのですが、その理由が「社外的な」要素に関わっている場合です。
たとえば、取引先企業の事情や主要銀行への配慮などですね。
これらふたつの制約は、場合によっては「大人の理由」として判断されることもあります。
しかし、いかに大企業といえども、顧客を無視した経営を行っていれば淘汰されてしまうでしょう。
だからこそ、真摯にマーケティングを行うことが大切なのです。
【まとめ】
・マーケティングの実践には「標的市場の選定」が欠かせない
・標的市場を選定する場合には、「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」が活用できる
・個々の方法論を知る前に、まず全体像を把握するとイメージがしやすくなる
・標的市場の選定は「社内・社外の制約」に注意すること
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