流通戦略③(流通チャネル構築プロセス) その1
【流通チャネル構築のプロセス】
流通チャネルの意義や種類について理解したら、次は流通チャネルの構築プロセスについて学んでいきましょう。
流通チャネルはその性質上、メーカー企業の事業活動を支える支柱となります。
いくら顧客にとって優れた製品であっても、たとえ膨大な需要があっても、流通チャネルがうまく機能しなければメーカーの商品は世の中に流通しません。
もちろん、ここで言う流通チャネルには社内の組織も社外の組織も含まれています。
それだけに、企業活動において流通チャネルは重要な存在となります。
製品を反復継続して販売していくためには、流通チャネルを適切に構築しなければなりません。
そのためのプロセスは、次の6つの段階からなります。
?ターゲット市場・自社経営資源の把握
?チャネルの長さの決定
?チャネルの幅・排他性の決定
?展開エリアの決定
?チャネルメンバーの選定
?チャネルの動機づけ政策の決定
それぞれの項目について具体的に解説していきましょう。
<?ターゲット市場・自社経営資源の把握>
流通チャネル構築の第一段階は、流通させる製品をどの市場に投入するのかを決める「ターゲット市場の選定」です。
ターゲット市場の選定は、企業のマーケティング活動における基本要素ですが、流通チャネルの構築においても必要なものとされています。
また、流通チャネルの構築には莫大な費用がかかるので、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ)を正しく把握しておかなければなりません。
優れた流通チャネルを構築できても、実際に運用できなければ意味がありませんね。
<?チャネルの長さの決定>
次に、「チャネルの長さ」について決定します。
チャネルの長さとは流通チャネルの段階数のことを指していますが、具体的には「直販にするのか」「それとも小売業者を利用するのか」「はたまた卸売業者も介在させるべきなのか」などと検討しつつ決めていきます。
チャネルの長さは大きく「直販」か「それ以外」に区分できますが、どちらを選択するのか検討する際には「総販売量」「製品特性」「製品単価」「顧客の地理的条件(集中・分散)」「顧客規模」「顧客一人あたりの取引量」などを考慮しなければなりません。
たとえば、製品単価が安く顧客が地理的に分散している場合には、直販という選択は非経済的でしょう。
私たちが普段使っている日用品や消耗品は、卸売業者や小売業者が介在している場合がほとんどです。
反対に、製品単価が高くターゲット市場が地理的に集中している場合には、直販が有効になることもあります。
ある地域の一定の工場にしか提供していない部品メーカーには、卸売業者も小売業者も必要ありません。
継続的な営業活動やアフターケアのことを考えても直販がベストと言えるでしょう。
<?チャネルの幅・排他性の決定>
チャネルの長さを決定したら、次に「チャネルの幅・排他性」について検討していきます。
チャネルの幅とは、それぞれの段階においてどのような流通業者を使うのか、種類と数の両面のことを指します。
流通チャネルの幅を決める際には、「顧客の利便性」と「流通業者への配慮」を天秤にかけることになります。
顧客の利便性を重視するのなら流通チャネルの数は多くなりますし、特定の流通業者に配慮したいのなら業者の数を制限しつつ、担当範囲を広くする必要があります。
流通チャネルの幅は、次の3つの政策を参考にしつつ決定すると良いでしょう。
・「開放的」流通政策
・「選択的」流通政策
・「排他的」流通政策
<開放的流通政策>
販売業者を限定せず、製品をより幅広く展開したい場合にとるのが「開放的流通政策」です。
広く社会に認知される可能性が高まりますので、一般大衆向けの最寄り品などで採用されることが多いのが特徴です。
一方で、流通業者間の競争が激しくなり、思わぬ価格競争が生じてしまうこともあります。
多種多様な流通業者が介在すれば、それだけ製造メーカーがコントロールすることも難しくなり、場合によっては製品イメージの低下にもつながりかねません。
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