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企業におけるマーケティング その1

【企業とマーケティング】
市場環境を分析し、ターゲット顧客の需要に焦点をあてつつ、自社の経営資源や強みをフルに活用しながら、商品、あるいはサービスを開発するプロセスであるマーケティング。

 

従来型の企業や工場主体の生産ではなく、顧客が顕在的・潜在的に抱いているニーズからスタートすることによって、新しい価値を提供することができるのですね。

 

もっとも、マーケティングは単なる座学でもなければ、企業活動の理想でもありません。

 

実際に行えることであり、正しい手順を踏むことによって、どの企業や団体、あるいは個人でも実践可能なことなのです。

 

場合によっては、意識の方向性を市場や顧客に向けるだけでも、事業活動そのものに良い影響をおよぼすかもしれません。

 

こと企業においては、掲げている経営理念やビジョンも踏まえてマーケティング活動を行う必要があります。

 

経営理念とは、企業などの団体が事業活動をするうえで基礎となる考え方であり、社員にとっては行動の指針ですね。

 

たとえば、服飾大手のユニクロは「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」ですし、通信大手のソフトバンクは「情報革命で人々を幸せに」を経営理念として掲げています。

 

一方でビジョンとは、企業理念やミッションと混同されることも多いのですが、将来に向かってどのような発展・成長を遂げたいかという、構想や未来像のことです。

 

「未来はこのように変わると予想する。そのため、当社は◯◯を目指す」というものですね。

 

アップルの創業者であるスティーブ・ジョブスは「普通の人々にコンピューターを届ける」とし、現在のような一人一台が実現する未来を予見していたのですね。

 

これらの経営理念やビジョンを念頭において、マーケティングを実践するとなると、それぞれの企業ごとにやり方は異なるのが当然です。

 

また、どのような戦略を講じるのか、あるいは既存の製品やブランディングとの兼ね合いなども考慮しつつ、複合的に検討していくことによって、最良の選択ができるようになるでしょう。

 

いずれにしても、主役は提供側ではなく顧客にあります。

 

だからこそ、顧客にどのような価値を提供できるのかをつねに考え、また、時代の流れや市場の変化にも適時対応していくことによって、より効果的なマーケティング戦略が構築できるはずです。

 

時間はかかるかもしれませんが、地道に行動していくことが大切ですね。

 

 

【例題】
それでは、企業におけるマーケティング活動について、事例を交えながらより具体的に学んでいきましょう。

 

企業を固定化した組織としてみるのではなく、まるで生き物のように感情があるということを意識してみてください。

 

<例>
葬儀関連の事業を手がけるA社は、昨今の景気低迷によって、業績が悪化していました。

 

事業内容が葬儀関連ということもあり、大々的なPRを打ち出すことができず、地元住民や既存顧客からの紹介によってなんとか収益をあげていたのです。

 

ただ、それだけでは会社が成長しないばかりか、競合他社との差別化もできません。

 

このままでは、会社の存続すら危ぶまれる事態になりそうなのです。

 

もっとも、業界全体としてしては、あながち将来性が見込めないわけではありません。

 

時代は超高齢化。

 

需要は確実に増えていくはずですし、適切な戦略さえ実行すれば、大きく躍進することも夢ではないのです。

 

そのためには、現状を打破する意味も含めて、ここでイノベーティブな経営方針を打ち出す必要がある。

 

それが、社長のHが考えていたことです。

 

そこでH社長は、まず社内にマーケティング専門の部署を設立しました。

 

とは言っても、ただでさえ人員が少ないという現状があるため、スタッフは各部署から1名ずつ選び出しただけの寄せ集め。

 

また、彼らはマーケティングのみを行うのではなく、通常業務に従事してもらいながら、プラスアルファでマーケティング戦略を構築してもらうことにしたのです。

 

実際には、それが功を奏しました。

 

わざわざマーケティングの専門家をヘッドハンティングするのではなく、既存の社員、それも各部署の人員から選び出すことで、徐々に社内にマーケティングの発想が浸透していったのです。

 

会議によってマーケティング戦略について話し合い、その結果を各部署に持ち帰る。

 

その一連の流れが、全社的な意識も変えたのです。

 

その結果生まれたのが、「価格の透明化」と「積極営業」です。

 

企画開発部で生まれたパッケージ商品を、広告戦略部がインパクトのある小冊子にまとめ、営業スタッフが個別訪問によって積極的に働きかける。

 

そのような、これまでの常識を打ち破る手法は、すべてマーケティングを実践したことにより得られたのでした。

 

 

<解説>
社内でマーケティングを実践するとなると、ついつい独立したマーケティング部署の設立を模索したり、あるいは外部のマーケティング関連会社に委託すると考えてしまいがちですが、それでは問題の根本に近づくのは難しい場合もあるでしょう。

 

というのも、ビジネスの根幹はあくまでも現場であり、お客さまと直接対峙しているスタッフが、そのニーズもウォンツも敏感に察知できる可能性が高いからです。

 

A社の場合にも、マーケティングを実践するということでマーケティング専門の部署を設立することになりましたが、各部署から人員を集めることにより、会社全体にマーケティングの重要性を浸透させることにつながりました。

 

会社という組織は、それぞれの部署が独立しているように見えるものの、実際には複合的な要素が絡み合い、相乗効果を生み出すことが最大の目的です。

 

だからこそ、全社的なマーケティングを行うことによって総合的な取り組みをする必要があるのですね。

 

そういう意味では、マーケティングの担い手は、必ずしも部署として特定する必要はないように感じるかもしれません。

 

しかし、マーケティング専門の部署を設置することにより、社内に意識が生まれるということも事実。

 

大切なのは、それをいかに自分のこととして全社員に広めていくかなのです。

 

そういった意味においても、A社の取り組みは巧妙だったと言えるでしょう。

 

業績の良し悪しに関わらず、物が溢れている現代においては、競合他社との競争が終結することはありません。

 

また、たとえ寡占市場であったとしても、最終的に商品を選ぶのはあくまでも顧客ですので、たまった不満がいずれは他の企業、あるいは業種に取って代わられるということも十分にあり得るのです。

 

危機感に諭される前に、マーケティングを実践することが大切でしょう。

 

 

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