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カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)の実施と導入ポイント その2

カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)の実施と導入ポイント その2

<例>
企業向けのシステムを開発しているA社は、クラウド技術がより発展してきたことにともない、事業の方向性を大きく転換させることにしました。

 

具体的には、これまでのようにシステムをパッケージとして販売するのではなく、個別に安価で提供することにしたのです。

 

また、クラウド上で使えるように内容も変更し、支援体制も強化することにしました。

 

システムを提供する方法に関しても、CD-ROMをベースとするのではなく、インターネット上で直接ダウンロードしてもらう形態に徐々に移行していきました。

 

最初のうちは操作方法やインストールの手順に関する問い合わせが殺到したものの、WEBのマニュアルを拡充するなどの施策を重ねることによって、クレームも減っていきました。

 

ただ、クラウド上で提供するとなると、どうしても価格を押さえて販売しなければなりません。

 

そうなると、数を多く稼ぐことはできても、収益力を向上させるのが難しいという壁にぶつかってしまったのです。

 

社長のSさんは、トップ営業をかけつつ対応していましたが、成果はあまり芳しいものではありませんでした。

 

そこでA社では、CRMを重視することにしました。

 

これまでにようにすべての顧客に対して平等に経営資源を投下するのではなく、より収益をもたらしてくれる可能性のある顧客層に対し、積極的にアプローチすることにしたのです。

 

幸い、顧客データは蓄積されていますので、分析するのにそれほど時間はかかりませんでした。

 

顧客のランク付けが終わると、次に行ったのは「オペーレーターの専門化」です。

 

クラウド上で商品を提供しているため、直接的にお客さまと対面することが少ないという特徴があるA社では、まさにオペーレーターこそが会社の顔となっていました。

 

そこで、顧客のランクごとにより優秀なオペレーターを配置し、再購入や他のサービスの利用をうながすことにしたのです。

 

その結果、A社の収益力は徐々に上がっていきました。

 

ロイヤルカスタマーに対する対応もマニュアル化され、オペレーター全体の質も向上しています。

 

これからはさらに、電話やメール対応を強化し、優良顧客をつなぎとめる戦略へとシフトしていく予定です。

 

 

<解説>
A社はCRMを導入することによって、より高い収益力を維持できるようになりました。

 

優良顧客をつなぎとめておくために、よりハイレベルの対応を提供することで、長期的な関係性を築くことに成功したのですね。

 

顧客をランク付けすることで、どのような部分を強化すればいいのかが見えてくることもあるのです。

 

 

【CRM導入の際の注意点】
次に、CRM導入の際の注意点について確認していきましょう。

 

CRMをただ顧客を選別するものだと考えていると、思わぬ落とし穴にハマってしまうことになります。

 

CRMとは、優良顧客との長期的な関係性を構築することですので、顧客生涯価値の理解やマーケティング段階からの取り組みが欠かせません。

 

具体的な注意点は次の4つです。

 

1.製品特性に合わせる
2.組織全体で取り組む
3.個人情報の保護
4.改めて顧客理解を深める

 

カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)の実施と導入ポイント

 

 

<注意点1.製品特性に合わせる>
その企業がどのような製品を取り扱っているかによって、CRMの持つ意味合いは変わってきます。

 

たとえば、スーパーやコンビニエンスストア、あるいはその他の小売店が販売しているひとつひとつの製品にCRMを適用しようと思っても、実際には難しいでしょう。

 

また、効果も限定的なものとなっていまします。

 

なぜなら、そうした顧客はあくまでも「安さ」「立地」「商品ラインナップ」を基準にお店選びをしているケースが多いと考えられるからです。

 

どんなに充実したサービスを提供していても、10キロ離れたコンビニエンスストアにわざわざ行く人は少ないでしょう。

 

スーパーや小売店も同様です。

 

そこでポイントとなるのは、製品に付随するサービスです。

 

このサービスに関する比重が大きい製品を取り扱っている場合には、CRMの効果がより大きく発揮される傾向にあります。

 

それは付加価値であり、社員教育やマニュアルの徹底によって高められる可能性があるからですね。

 

顧客ごとに、差別化することも可能となるのです。

 

 

<注意点2.組織全体で取り組む>
CRMは、マーケティング部門だけが率先して行っても成果をあげることはできません。

 

お客さまと直接接することになる営業部門やサービススタッフはもちろんのこと、事務や管理部門も含めたすべての社員がCRMの考え方を理解していなければ、具体的な行動に落としこむことはできません。

 

そのために必要なのは、CRMという考え方を社内に浸透させ、全社的に取り組むということです。

 

システムを構築することがゴールなのではなく、優良顧客を囲い込み、長期的な関係性を築くことで収益力を高めることが目的です。

 

その点を理解しておけば、顧客を選別して対応を変える意義についても、しっかりと認識できることでしょう。

 

 

<注意点3.個人情報の保護>
ただし、顧客情報を管理するということについて言えば、個人情報保護の観点から慎重に行わなければなりません。

 

顧客情報が流出して事件となる事例は枚挙にいとまがありませんが、CRMを実施する以上、その危険性はどの企業にもあるのです。

 

個人情報の管理を徹底しつつ、より厳格なルールのもとで運用しなければなりません。

 

 

<注意点4.改めて顧客理解を深める>
CRMを通じて学べることとして、「どんなビジネスも結局は人対人である」というものがあります。

 

とくに、直接的に顧客と接していない管理部門の人ほど、システマチックに顧客を考えてしまうことは少なくありません。

 

しかし、現場レベルで考えてみると、やはりそこには人がいて、顧客に支えられていることで事業が継続できていると気がつくでしょう。

 

自分も含め、同じ人間としての「生活者」を意識することは、マーケティングにおいて欠かせない視点です。

 

 

【まとめ】
・カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)は、単なる考え方ではなく、実際に施策として行うべきもの
・CRM実施の手順は次のとおり
 1.顧客情報を収集して、顧客のデータベースを構築する
 2.優良顧客の選別を行う
 3.ターゲット顧客に対して、重点的に製品やサービスを提供する
 4.顧客を維持するための施策を通じて、収益力アップを実現する
・顧客の選別には「RFM分析」が活用できる。要素は次の3つ
 ・最新購入日(Recency)
 ・購入頻度(Frequency)
 ・購入金額(Monetary)
・CRMを実施する際には、次の点に注意が必要
 1.製品特性に合わせる
 2.組織全体で取り組む
 3.個人情報の保護
 4.改めて顧客理解を深める

 

 

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