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ソリューションの価値と価格への転換 その2

<例>
地方で工業用のパーツ製造・販売を手がけていたA社は、創業から20年以上経っている老舗企業です。

 

社長のIさんの息子Jさんが大学を卒業し、3年前から会社の仕事を手伝っています。

 

実はこの息子のJさん、大学時代には海外に留学してMBAを取得するなど、まわりからも評判の優等生でした。

 

2代目には珍しく、会社の引き継ぎにも前向きです。

 

そんなJさんも、社会人経験を経て、いよいよ管理職に就くときがきました。

 

これまでは会社のことを覚えたり、あるいはビジネスの基本を習得するために必死で働いてきましたが、これからはマネージャーとしての手腕が試されます。

 

十分な準備を重ねてきたこともあり、さっそく、新しい取り組みに着手しようと画策しています。

 

Jさんが最初に取り組んだのは、顧客および営業先への訪問です。

 

普通、A社では、契約時など特別なことがなければ管理職が顧客のもとを訪れることは少ないのですが、Jさんは積極的に顧客や営業先に同行することにしました。

 

その理由は、現場からの声を吸い上げ、より高付加価値の製品を提供するためです。

 

たしかに、A社の製品は優れていましたし、そのおかげで20年以上も経営を続けることができました。

 

ただこれから先、生き残っていくためにはさらなる成長が必要だとJさんは感じていたのです。

 

また、時代にそくした体制へと変化することも欠かせないと、これまでの学びから強く思っていました。

 

その結果の改革です。

 

社内改革というのは、通常、なかなかうまくいきません。

 

その理由の多くは、管理職自らが行動を起こさないからです。

 

上の人間が率先して改革を主導していかなければ、現場のスタッフのモチベーションもあがらず、結局は掛け声だけで大した変化もなく終わってしまうことが往々にしてあるのです。

 

しかし、Jさんの場合は異なりました。

 

会社の業績を低下させやすいと言われる二代目。

 

その身分を自ら背負い、恐れずに前進していこうと考え、A社をもっと良くしようと強く誓っていたJさん。

 

そのような気概は、自身のおかれている立場から生じてきたものかもしれません。

 

そのためにはまず、自らが一番泥臭いことをしなければならないと、行動に移しました。

 

驚いたのは、A社の人間だけでなく、むしろ取引先です。

 

まさか、次期社長が直接訪れるとは考えておらず、はからずともA社の変化を感じずにはいられませんでした。

 

また、腹を割って話すこともでき、どのような困り事があるのか、どのような製品を求めているのかを率直に話してもらえたのです。

 

これは、どこに行っても同じでした。

 

こうしてヒアリングした内容は、A社の社内会議で毎回のように取り上げられました。

 

技術担当者からも、営業パーソンからも、目からウロコが落ちる内容だと評価されることも多く、社内の機運は自ずと高まっていきました。

 

そこで社内全体に芽生えたのは、顧客の要望を製品やサービスに反映させた「ソリューション」型の営業です。

 

これまで、技術力に頼ってきたA社は、ひとつひとつの取引先をより大切にし、価値あるソリューションを提供しようという発想に切り替えたのです。

 

もちろん、ビジネスである以上は利益をあげなければなりませんが、事業に対する姿勢が大きく変わったことは間違いありません。

 

これもひとえに、社長の息子Jさんのおかげです。

 

その結果、多くの取引先から、契約金額・量ともに大幅な増加の申し込みが殺到しました。

 

I社長は、ビジネスというものはコストばかりを気に留めておけば良いのではなく、血の通った双方向性のものだと改めて気付かされたのです。

 

Jさんの成長を喜ぶとともに、さらにA社を発展させようと強く誓いました。

 

 

<解説>
顧客との接点が大事なことは認識していても、それを自ら実行しようとする人は少ないのが実情です。

 

とくに、管理職や社長がそうした気持ちにならなければ、会社は良くなりません。

 

理念やビジョンだけでなく、具体的に実行できる戦略を立案し、そして実際に行動することが大切なのです。

 

机上の空論では意味がありませんが、行動に移せない抽象的なマーケティング施策もまた、無意味なものなのですね。

 

 

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